チュニックを着た少女(仮)
@kondohmusashi
呪われたゲーム
中学の修学旅行の2日目、自由行動の時間に古本屋でゲームソフトを入手した鈴木。このゲームには、プレイした人に呪がかかるいう都市伝説があった。そしてその夜、鈴木の部屋に興味本位で集まってきた男女12人。鈴木と部屋が同じというだけで居合わせた生徒もいた。鈴木がゲーム機にディスクをセットしてしばらくすると、全員が気を失ってしまった。そして午前2時を回ったところで目を覚ました。しかし鈴木ら4人は朝食の時間になっても一向に目覚めない。救急車で運ばれていく4人。同じ部屋の高杉ら4人は救急隊員や先生たちに色々質問されたが、鈴木らが消灯後も薄暗い部屋で激しく点滅するアニメを見ていたとか何とかそれらしい説明をして乗り切った。そしてゲームしていたことがバレることを恐れた田中らにゲーム機とソフトを押し付けられてしまった高杉。幸いにもバッグの中を確認されることはなかった。夜の7時前、高杉の家のチャイムが鳴った。モニターで確認すると上野と木下の姿が。「田中くんの家に5時集合だったよね?」ドアを開けるや否や挨拶もなしに木下が一言。家の前に女子が2人。ただでさえ平常心を保つのが難しいシチュエーションの上、初耳の話までされて心拍数と手汗が尋常ではない高杉固まる。「ほらっ。だから言ったじゃん、夢だって」上野が木下をからかうが、木下はいたって真剣だ。木下の話では昨日あのゲームを始めた途端、部屋にいた全員がロールプレイングゲームの世界に入り込んでしまったらしい。ゲームの世界では木下ら女子3人は中世ヨーロッパの町並みを楽しんでいたが、鈴木ら男子6人は修学旅行中ということもありノリで武器も持たずに森の奥深くまで入り込み、鈴木を含めた4人が恐ろしいモンスターたちに襲われ命を落としたという。一刻も早くゲームの世界から逃げ出したかった8人はロールプレイングゲームを参考に教会を目指した。そして何とか辿り着いた教会には親切な神父がおり、その神父からゲームを中断した場合は24時間以内に再開しないと大変なことになるという説明を受けたという。そこで皆で話し合った結果、全員で田中の家に5時に集まることになったというのだ。そして約束どおり木下は田中の家に行ったが他に誰も来ておらず、約束した覚えなどないという田中はゲーム機を高杉に押し付けたことを告白。そこで高杉の近所に住んでいる上野に案内してもらいここまで来たという。神父の話など全く記憶にない高杉。そもそもゲームの世界に入った記憶すらない。「全然覚えてないの?」とがっかりした様子の木下。実は木下はここに来る前に、高杉を除く全員に連絡を取ってみたが全員にゲームへの参加を断られたという。「もういいじゃん。行こうよ」と上野は帰りたそうだ。「だからやらないと駄目だって。鈴木くんみたいになるよ」と木下が少し語気を強めた。「あいつらヤバい薬物とかやってたんじゃないの?うちら全然じゃん」「だから」その後も木下が上野を説得する展開が続く。何となく空気のような高杉はゲーム機とソフトを取りに行くという名目で家の中へ退散。しばらくしてゲーム機とソフトを手に2人の元に戻ると根負けした上野もゲームに参加するという話になっていた。ゲームを渡してさよならするつもりの高杉だったが、話の流れで家族が外出している高杉の家でそのままゲームをすることに。高杉は仕方なく自分の部屋に案内してゲーム機を渡そうとしたが木下も上野も受け取らない。結局ゲーム機の電源を入れてディスクをセットする羽目になる高杉。今日か明日病院に運び込まれるのは間違いないが、押し入れに隠していた大人が嗜むDVDたちも2人がいるのでもはや処分できない。本当についてない人生だったなと高杉は思いながらディスクが吸い込まれるのを見届けた。気がつくと時刻は9時を回っていた。いろいろな意味で命拾いした高杉。翌日の夕方、木下と上野が再び高杉の家を訪ねてきた。2人の話では昨日参加しなかった田中ら5人は、鈴木らと同じように意識不明で入院しているという。やはり24時間ルールは本当だったようだ。
学校が始まっても鈴木ら9人が登校してくることはなかった。相変わらず意識が戻らず入院しているのだ。学校では怪しまれないように普段通り過ごそうとする高杉らだったが、何か違法な薬物か危険ドラッグでもやったんじゃないかと早速クラスメイトから質問攻めに合う。そして放課後、先生たちによる聞き取りが行われた。やはり飲酒や大麻等の使用などを疑われているようだったが、それについては全く持って潔白なため全否定することができた。そしてあの夜は薄暗い部屋で点滅アニメを凝視した以外は何も変わったことはしていないと、3人はしっかり口裏を合わせた。その日から学校帰りに高杉の家に集まり午後4時から6時までゲームをする生活が始まった。木下と上野は部活を休んでの参加だ。それから1週間ほどプレイしてみると、いろいろなことが分かってきた。ゲームの世界の記憶を唯一持ち帰れる木下でも現実の世界の記憶はゲームに持ち込めないこと。逆にゲームの世界の記憶はすっかり忘れてしまう高杉が、現実世界の記憶をゲームに持ち込めるということ。そのためゲームの世界の情報は木下から2人へ伝わっているが、現実世界の情報は高杉から2人へ伝えられているらしい。無口でシャイな高杉は2人に上手く情報を伝えられているとは思えなかったが木下の話ではゲームの世界の高杉は意外にも多弁で、好きなアイドルの話までしているという。ゲームを始めたときにかけられた催眠術か何かの影響でゲーム中は脳の機能の一部がうまく働いていないか、逆に働きすぎているか。何れにしてもシラフではない高杉がそこにはいるようだ。
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