金と命と覚悟と組長
恥目司
To do or curse
※本作は内輪向けの二次創作小説です。
主要人物の名前やタグでピンと来なかった方は十分に楽しむことができない可能性がございますので、その旨をご理解の上でお読みください。
廃ビルの一部屋に潜む影。
埃だらけの空間の中に1人の男がスナイパーライフルのスコープで何かを覗いていた。
「あれが、金の元か」
彼は殺し屋だ。
といっても金稼ぎの為に殺しの依頼をこなすだけの一端の殺し屋。
今日もまた金だけの為に殺しを引き受けた。
スコープの先には明かりのついた部屋で何かをしている大柄の男。
こちらには全く気づいていない様子だった。
「アイツの名前なんだっけ、ト…トド……あーもうどうでもいい。アイツを殺せば一生遊んで暮らせる」
そう、今回は報酬額が桁外れに多いのだ。
手取りだけでも6億。
あの大柄の男にそれほどの金を積める何かがあるのだろうか。
しかし、殺し屋にとってはどうでもいい。
むしろ、人一人殺すだけで一生遊べるのだ。
これほど良い話は他にない。
これで、唯一の肉親である妹も楽にさせてやれる。
殺し屋はスナイパーライフルを、男の頭へと照準を合わせる。
槓桿を引いて、弾を込める。
あとは集中して引き金を引けば——6億だ。
その時、男が窓を開ける。
一瞬、バレたかと思ったが男は特に警戒してる様子はない。
彼はそう安堵していた。
男が窓にぶら下げ始めた物を見るまでは。
「っ……!?」
細くしなやかな四肢、くびれた胴体、そして女性の首。
それらをまるで洗濯物でも干すかの様に窓の外に吊るし始める。
そして、その女性の顔がさらに殺し屋を絶望に染めた。
吊るされていたのは唯一の肉親である妹だった。
殺し屋の頭の中で疑問と共に恐怖が駆け巡る。
銃を掴む手が震えて照準が定まらない。
殺し屋は、身体の震えを抑えながらスナイパーライフルを収める。
もう殺しはやめよう。
裏稼業から足を洗おう。
自首しよう。
刑務所から出れたらどこか田舎で農業でもしよう。
出れなくても良い
命があれば金なんてどうでもいい。
ああ、そうか。
殺し屋は悟る。
あの6億は、家族も何もかもを犠牲にしなければ手に入らない6億なのだと。
金と命と覚悟と組長 恥目司 @hajimetsukasa
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