日常は噛み締めるもの
会議を終えた後各々は自分の出来る限りの対策を練っていた。
そしてそれはバレットも同じく。
「いずれ来るかもしれない、ですか。」
会議の後バレットは家族が待つ家へと帰宅した。
両親は花音が魔法少女ランキングの高ランクに位置している事を喜んでもいたが、それと同時に危険な任務を任される可能性があるため何かあったら気が気でない、と言った風でもあった。
花音は食事と風呂を終え自室のベッドに潜り込むと考え事を始めた。
会議の終わり際にリヴィア、形無さんが残した爆弾。
『漠然と、確証はないけれど後1年もしないうちに、またカタストロフが現れる気がする。』
本来なら笑ってスルーする様なものだが、今まさに渦中の人である形無さんがそれを言うとどうにも信じざるを得ないのだ。
そして助けを求めた形無しさんに対して私は確かに「分かりました」と答えた。
何故あの時何も考えずに承諾してしまったのかは私にも分からない。
だって私たちはただの赤の他人の筈なのだから。
でも約束してしまったなら、カタストロフと対峙する事を決めてしまったのなら、私は強くなら無ければ行けない。
「形無さんは、強かったなぁ。」
あの人は本当に強かった。
私が最初に形無さんを射撃してしまった時、形無さんは涼しい顔でその全てを弾き落とした。
しかも自惚れている訳では無いが、ランキング18位の私でも難しいであろう周囲に一切被害もなくB級を10秒台で討伐。
確かに討伐する程度なら数発打ち込めば倒せるのだろう、なんならA級ですら今の私には安定して倒せる力があるだろう。
しかし、私と形無さんの間にはフィジカルの能力差もあった。
魔女は全員が全員あのレベルの力を持っているのだろうか?
私の脳裏にはリヴィアさんを含め今迄に見た事のある魔女達の姿を思い浮かべる。
そうしているだけで少し体が震える。
しかも終の三獣の2匹を倒したとも言っていた。あの人に届くまで、私はどれほどかかるのだろうか。
あぁ、決めた。
形無さんの目標がカタストロフの討伐なら、私の目標はそれについていけるだけ強くなることだ、なんなら魔女にだってなってやる。
両親を心配させないくらいに強くなってやるんだ。
実のない話題を頭の中で動かしていると時間はもう夕方の11時だった。
……結局そんなに休日を満喫出来なかったなぁ、お金だけはあるのに。
そう心の中で嘆きながら、明日とて続く学校に恨みを向けて寝る体勢に入る。
今日も車の中で寝てしまったとはいえ、相当に花音は疲れていた為、それから10分後花音は夢の世界へと誘われていた。
§
今頃花音さんは寝ている時間だろうか
そう考えていた形無 葵は現在進行形で浅葱さんの家の前へと連れられていた。
浅葱家は練馬支部から10分歩いた所に建てられており、曰くここの支部長になったから前の住んでいた場所を離れてここに家を建てたそうな。
なんとも仕事熱心そうな浅葱さんの印象通りだ、それとも社畜精神とも言うのだろうか?
それはまぁさておきだ
「私の家と戸籍が無いばかりに、ありがとうございます。」
「気にするな。」
会議の結果私はしばらくの間浅葱、由伸さんの家に泊めてもらうことになったのだ。
本当に、私の精神のメインが杜氏でなかったら惚れている所だ。
私の中で由伸さんの聖人像が着々と建設されつつあり、この人に妻が居ない事が不思議な程だった。
「むむ、はいストップ!
お父さんは私のだから、取っちゃダメだよ〜」
いや、どうやら先約がいたようだ。
それは電脳の魔女 ノア こと
彼女も私と同じ孤児だったようで、電さんは赤ん坊だった頃に魔獣によって家族を亡くし、それを浅葱さんに引き取られ養子に入ったと言っていた。
一応管理局では支部長呼びをしているようだが、プライベートの場ではお父さんと呼んでおりその事からもとても仲睦まじい事がわかる。
私とは孤児であっても大違いだ、などというブラックジョークはどんなタイミングであれ言えないな……
彼女は自分を拾ってくれた由伸さんを本物の親同然のように慕っているようで、それはしばしば行き過ぎたレベルにもなるらしい。
「大丈夫です、安心して頂きたい。
会議の時にも話していましたが私の今の精神状態はどちらかと言うと男に近いので。」
そう釈明すると電さんはそう言えばそうだった、と言わんばかりに随分安心した様子で
「そっか、なら問題ないじゃん!
さぁさ、入って入って!」
と言い私を家へと招いた。
それを聞いていた由伸さんは「私の家なんだがね。」とポツリ呟いて家へと入っていった。
家に入って、飾られていた時計の時刻はちょうど夜中の11時になっていた。
思えばかなりの時間会議室で話していたものだ。時間も時間だったので夕飯は由伸さんが連れて行ってくれた外食店で済ませた。
「さぁ、後は風呂に入って寝るだけと行きたいところだが、形無くん。
夜も遅いんだが少し話を、いいかね?」
「はい、勿論です。」
「私は〜?」
横から電さんが出現した。
魔法少女の姿を解いた電さんは見る限り身長も平均的で綺麗な緑色の髪は染めているのだろうか地毛なのか明るい茶色変化しており、どことなく彼女の明るげなキャラクターとマッチしていた。
そんな彼女の茶髪がゆさゆさと揺れて由伸さんに質問をなげかけている。
「電は明日学校もあるから早く風呂に入って寝なさい。」
「はーい……」
本当に、どこからどう見ても幸せそうな家族そのものだった。
私も政府に引き取られていなかったらこうなっていた世界もあるのだろうか?まぁ考えていても仕方は無いな。
そうして由伸さんと私は対面する形で椅子に座っていた。
何の話だろうか、めぼしい話題である今後どこに住むかや戸籍の話、連絡を取る携帯端末やここ100年間の魔法少女やetcの話は会議室で済ませたから、これ以上の話題はないと思っていたが。
由伸さんは少し考えたように間を空けて話し出した。
「リヴィア君が良ければなのだが、学校に行ってみないかね?」
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