第4話 馬

お馬さんて、常歩(なみあし、と読みます)っていう歩き方が一番ゆったり歩いてる時なのですが、襲歩(しゅうほ)、ともなると、時速約60キロとか、もう車ぐらい速く走れるんですよね。この時は4本の足が全て宙に浮いている状態になることもあって、さしずめ空を飛んでいる感じ。


足が全部浮いているのかいないのか、人間の目では確認出来ない位速かったので、エドワード・マイブリッジ(1830 - 1904)というイギリスの写真家が、馬が走っている様子を細かく写真に撮って、全部の足が浮いている瞬間があることを突き止めたのですが、もうそれ位、目にも止まらぬ速さということが分かります。…今なら動画を撮ってみれば分かりますけど、その頃はまだ写真だけでしたから、証明したマイブリッジは凄いです。全部の足が宙に浮いているって、やっぱり、飛んでいたのですね。


私パンダ特派員は、常歩でゆったりまったり乗るのが一番似合ってる感じの、のほほんとした人なのですが、そうなのです、そんなリラックスモードの時でもまた考えちゃうんです、色んなこと。頭を空っぽにしたいのに、次から次へと自分が失敗したこととか、次から次へと浮かんできちゃって、のんびり常歩、ってことにならなくて…


なんだかもう、この人全然パンダっぽくないって思い始めました…元々はゆったりまったりしてたのに、いつからこうなったのか…


そこで馬の話に戻ると、馬って物凄く記憶力が良くて、とりわけ、イヤな思いをしたことはずーっと覚えてる生き物なのです。


イヤなことって、要するに自分の身に危険が及ぶことだから、同じことを繰り返さないように、馬に限らず、人間もそういう傾向があるそうですが、一晩寝れば忘れちゃう、っていう人もいるから、羨ましくなっちゃいます。頭の切り替えが上手なのでしょうね、楽しいことの方を覚えていた方が、人生楽しいですもの。


で、自分はこれもうパンダじゃなくて馬だ、って思い始めましたが、ふと気付いたのが、例えとはいえ、一晩ぐっすり寝たことないからダメなんじゃなかろうかと。


中途覚醒の繰り返しじゃ、記憶の整理が上手くいかなくても仕方無いです。


はてさて、鬱々パンダは今夜は一晩ぐっすり眠れるでしょうか。





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