第10話
「お兄ちゃん? ひょっとして、あれ? 怪我人?」
「ああ……そうだ」
「うそ……」
会場から走る救急車が三台。それぞれ、今まで担架を運んでいたようで、アスファルトの地面には大きな血痕が所々にあった。
広大な会場の窓や出入り口などは、エアバッグのような膨らむ黒い布で、大掛かりなバリケード封鎖がなされていて、数人の武装をした覆面マスクの迷彩色姿の男たちが巡回している。
会場を包囲している側も、大勢の兵士が終始武器を構え。空を複数のヘリコプターが旋回しては、会場から飛んでくるロケットランチャーで、そのほとんど撃ち落とされていた。
まるで、戦争映画の中へと迷い込んだかのようだった。
「英瑠璃! 利弧利戸! 恵美!」
佐江島さんが、取り乱している。
だから、俺は息を軽く吸って言い残した。
「ここにいてくれよーん!」
アスファルトの地面を足で、少し蹴ってから俺は光速で大きく飛翔して、バリケード封鎖された窓の一つを蹴破った。
俺の異能の力は、超人的なステータス強化だった。
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