『厄災ペロミア』 前

初めて存在が確認されたのは130年前

厄災の中では本人による被害は少ないが多くのアンデッドを従えている。過去、街に現れたときには大きな被害を出した。

対峙して生き残るのは難しいが、パーティー単位での壊滅は少ない、誰かしら生き残り情報を持ち帰るが下記以上の情報はなかなか集まらない


容姿

・身体中に縫い目のある少女

・縫い目から垂れる糸の先には針がついている

・ぬいぐるみを抱いていることもある


能力

・自由自在に動く針による刺突

・助けて、という声を合図に召喚される透明な召喚体による攻撃

・おそらく魔法と思われる人の身体を操る力(今のところ解除された事例は無い)

・執着対象に恐怖心を与え行動を阻害する


防御面はかなり強固

・過去の戦闘において魔道具を用いた勇者の剣撃、賢者による最高位の魔法でも効いている様子が無かった(魔法に関しては属性が関係するため別紙参照)


特筆事項

・カワイイに執着しており、執着された者は身体の一部を持ち去られている

・召喚体の戦闘スタイルが身体の一部を持ち去られた者達に酷似していることから、なんらかの方法で彼女らを利用していると考えられる

・召喚の条件は不明、数が多い時と少ない時がある

・砦や要塞などを攻め落とすことに対して積極性は無いが、着実に追い詰め気づいた時には手遅れになっている

・魔王に可愛がられていると話すが真実かどうかは定かではない

・魔王軍に対する戦線が引かれる前に一度ペロミアが人類に対してとある要求をしたことがある、内容は──────。





「ん?」


前の作戦で遭遇した厄災に対する資料のとある一文が塗りつぶされていることに気づいた。


「勇者様、何かございましたか?」

「いや、最後の一文が塗りつぶされていて、何か理由があるのかと」

「この資料はコピーなのです、最後の一文を読むには原本を読むしかありませんが……

ここだけの話、勇者様には必要のない情報だと同盟を組んでいる王の1人が塗り潰しているという噂です」


例え使えないそうな情報だとしても、わざわざ隠す意味はあるのか?

まぁいい、無い物のことを考えても意味は無い。


「ありがとう、これは借りても?」

「構いませんよ、もうおかえりで?」

「あぁ、パーティーメンバーの元へ戻らないといけないしな」


そろそろメリッサの腕の解除をしようとしているリースを眠らせないといけないからな。


ガチャ


「おっと……」

「ん?これは勇者様、資料室で何か?」


扉を開いた先には砦の責任者、キツイ性格だが、優しい人だ。


「今回遭遇した厄災について資料を読んでいました」

「ペロミアについてか……

資料以上のことで何かわかれば直ぐに共有しよう、それでは失礼する」


なんとなくだが、厄災に対して特別な感情を持っているような気がした。




ーーペロミアとの邂逅から1週間後ーー


「メリー……」

「……あっ、ごめんね、大丈夫だよ」

「ん……」


私を助けるため言うことを聞かない腕を自ら折る判断をしたメリッサは、私に近付かなくなってしまった。

だけど仕方ないこと、操られた左腕は未だに操られたまま。紐や道具で物理的に動かないように固定されているとはいえ仲間の首を絞めたと言う事実がある以上、近づくのは怖いはずだ。


「…………」


触れたり近づくのはもちろん、特に左側に立たれるのを嫌がっており、少し気持ちが落ちてしまう。


「リース」

「……?アルス?」

「ちょっと来てくれるか?」

「わかった」


左腕が暴走したときに誰かしらが対処出来るよう大部屋の隅で過ごしているメリッサに一言声を掛けてから、アルスに着いて行く。


「む……」


アルスに着いて行った部屋にはヘレンが居た。

この部屋にはメリッサ以外のアルス勇者パーティーのメンバーが揃っていた。


「俺達でペロミアを倒す」

「「!」」


アルスから感じた異様な雰囲気を感じ取った私とヘレンは驚きながら言葉を発することは無かった。


「作戦はある、だがもし降りたいというなら部屋から出てくれ。

もし、俺だけ残ったとしてもなんとかする」


だが続いた言葉に怒りが湧いた。

私とヘレンが動いたのは同時、私は素早く近づいて脛蹴り、ヘレンは拳骨する。


「イテェ!」

「馬鹿者!私が敵から逃げるとでも?」

「ん!メリー、苦しんでる、戦う……!」

「ォォォォォ……」


そこまで痛がるほど蹴ったつもりは無かったんだけど、脛を押さえてかなり悶えてる。


「ご、ごめ……」

「大丈夫だリース、逆に気合いが……入るというもの…………」


なんか、ごめんね。


「それよりも俺の考えた策を説明するぞ」


そう言って懐から1つの紙を取り出して机に広げた。


「奴の資料だ」

「なっ?!これがか?少ないな!」

「2人ともあとで読んでくれ、策の説明の前に書かれていることについて簡単に説明する。

攻撃が効かないぐらいクソ硬い、以上」


内容薄っす。


「あれに剣は使いたくないなぁ……

あの短時間の戦闘で私の愛剣が欠けてしまっていたんだ」

「ん、魔法も効かない……」


正直あれは倒せる気がしない。

んん、もらったチートが仕事しない、今まで生きてきて手加減しながら無双できたのは最初の1年ぐらいだよ。


「おーい、どうしたー?」

「んぅ?」

「大丈夫そうだな、じゃもう一回言うぞ?

リースには囮となってもらう」


ふぇ?

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