2年目 中

あのあと異変を察知した馬鹿の部下が沢山来た。

でも馬鹿が実力を試していたらつい破壊してしまったと説明して、俺達の自由行動を認めたから自由にさせろと命令してた。


正直、自由行動はとても嬉しい。

王国軍という組織に属したら冒険者の時みたいにワイワイ楽しく過ごせないと思ってたから、ある程度自由に動けるのは本当に嬉しいんだ。


馬鹿からちょっと良い人に昇格!


そして自由のお礼を言おうと思って近寄ろうとしたら、なんか睨んできて怖かった……


「よし、じゃ俺とリースで偵察行くか」

「……?」


何故に俺。


「ほら俺達偉い人に喧嘩売ったから着いて来てくれる人はいないだろうし、流石の俺も魔法使いが居ない状態で偵察は難しい。

そこでリースだ」

「ん……」


なるほど〜。

これから危険な戦場に立つというのに、先程までとは違う自信満々な顔だ。


ー別に倒してしまってもー


から始まる、どこかで聞いたような気がするフラグでしかない言葉が脳裏に浮かんだ。


「じゃ、行ってくるな!」

「メリッサは私に任せておけ、変な輩が近づいてきたら腕を切る!」

「よし!頼んだぞ」


普段の調子が戻った2人がちょっと物騒なことを話してる。


「リースちゃん」

「ん……」


俺の方に来たメリッサは頭を撫で続けてる。


「ん、んぅ……」


何か言おうか、ずっと撫でられててちょっとしんどい。


「ぐぇぇ……」


そして手が止まったと思えば抱き締められた。


「無事に帰ってきてね。」


抱擁が強すぎて痛いです、エルフになってからだいぶ経って美少女への耐性がついちゃったからか、美少女に抱きつかれたイェーイ、あったかいなうへへ、みたいな嬉しさよりも痛みが勝っちゃうんだよ……


「おいリースが気絶するだろ、やめい!」


ごめんアルス、ちょっと……遅いかな…………


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「む……?」

「起きたか。さて問題です、今どんな状況でしょうか」


急だな、俺の状況的にはアルスに背負われて運ばれてる。

周りは、


「「「ゲヒャヒャ!」」」


はい、武装したゴブリンに囲まれてますね……


ねぇなんで?偵察って言ってたじゃん、なんで敵に囲まれてるの?


「空飛んで上から魔法を撃ったりとか出来るか?」

「むり」


このゴブリン達は装備だけじゃ無くて知恵もあるみたいで、近接用の装備を着たゴブリンが囲い、少し離れた所に弓を持ったゴブリンと魔道具を持つゴブリンが居る。

多分、飛ぼうとした瞬間に弓と魔道具で狙われる、弓は問題じゃないけど魔道具は効果次第で落とされる可能性がある。


「なら、こうしようか!」

「【シールド】」


アルスが選んだのは俺を背負いながらの正面突破。

俺が身体強化を使えば同じ速度で走れる、でも後衛職である俺との連携的な意味ではアルスに運んでもらって、俺が魔法でサポートする方が成功率が高い。


「オラァ!」


片手で剣を振りゴブリンを切り付けたが、いつものように両断出来ていない。


「跳ぶぞリース!」

「ん……」


背後から近づいてくるゴブリン達と飛んでくる矢を魔法で弾き、正面はアルスが突破しようとしているが圧倒的な物量に包囲に穴を開けることを諦め、跳び越えることにしたみたいだ。


「【グラビティ】」


普段の使い方とは真逆、下から重力を上に向けて発生させる。

すると、


「うぉわっ!?」


重力の影響を受けないアルスのジャンプはかなり高くまで跳べるようになる。


「カーーーー!」


うわぁ、めちゃめちゃ大きなカラスだぁ。

クチバシ凄く鋭いなぁ、そしてなんかコッチに向かってきてるなぁ……


「やばいやばいやばい!

リースなんとか出来るか?!」

「【魔力腕】」


カラスを倒すより攻撃を逸らさせることを優先、近づいて来るカラスに合わせて上から魔力腕で攻撃する!


「グガァ!」


いや弱っ、そのまま地上に落ちていったわ。


「サンキュー

あと着地だけは頼む、その後は俺が全力で走って砦まで戻るわ」

「ん」


魔法が残ってるみたいでゆっくり落ちてる、着地まで時間があって地上の状態を見ることができた。

大分荒れていて、色んな種類の魔物が少し離れた位置にある砦に向かっている、既に砦についている魔物達は壁を壊そうと攻撃していた。


「何、あった?」

「魔王軍による奇襲だ、俺が魔物の動きに気付いた時には既に砦が攻撃されていた。

そこで砦の外で自由に動ける俺が厄災が居ないかの確認をしていたらゴブリンに囲まれちまってな」


そう言い、この有様だ、と自分を責めるように笑った。


「アルス、あれ」

「ん?アレってどれだ?」


そんな笑いから思わず目を逸らした先、そこには明らかに指揮官ですと言った風貌の魔物が居たのだ。


そいつの姿は木の魔物で大きさはそこそこ、頭らへんにアンテナのような物がついていて、とある位置から全く動いていない。


「なるほどな、倒しに行くか!」

「ん!」


空中で体勢を整えて魔法でさらに安定させて。


「やる」

「よしこい!」

「【グラビティ】」


魔法で勢いをつけて指揮官魔物に一直線、さっきのカラス以上の速度。


「【オートシールド】【アイアンボディ】」


念の為に防御系の魔法をかけておく。

さぁ、やろう!


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