《六章 幻旅の終わり》


 目を覚ますと自分の部屋だった。


 船の到着が近いので着替え、それが終わった頃にインペルが部屋を訪ねてきた。


「唐突になんです?」


 チェーンをした状態でドアの隙間から外の様子を伺うと、初対面の雰囲気と一転した様子のインペルがそこにいた。


「昨日のこと、謝らせてほしい。俺が、いや僕があなたにしたことと、今まで行ったすべての行為を自首し、被害者に謝罪してきます」


 おお、すごい。いきなりな展開だ。その後詳しい話を聞いたところ、あの悪魔に体を奪われていた最中も意識があったらしく、自分の生命を投げ打って自分を助けようとした私の姿を見て、自分の過ちに気づいたらしい。そして猛烈な謝罪を彼から受けた。償いをしたいと何度も言ってきたが、私はそれを断った。こいつは自分の権力を好き勝手に使ったが、ルーグナーが罰を与えると言っていた。彼に任せるとしよう。


 他にこいつの被害者はいたんだろうが、私自身何も被害は受けていない。実際のところこいつがしていたのは、うん、変態趣味だった。どうやら綺麗な女性に男装をお願いしていたらしい。


 ***

 

 そんなこんなで、私はルーグナーとペルに出会った。


 このあとペル被害者全員のもとに行ったらしいが、まぁ、みんなが男装にハマっていて、むしろ感謝されたらしい。よくわからないが、そっちの方も一件落着みたいだ。


 話していると、意外とこいつとは気があった。まぁ、領主の息子というだけあって話もうまいし、人柄もそこまで悪くない。甲板で絡んできていた用心棒も、子供の頃からの幼馴染らしい。最初はやばいやつだと思った(実際にやばい)が、物事は視点によって百八十度変わるもんだな。


 そして、その後もなんやかんやいろんな事件に巻き込まれ、今のシェアハウス状態に至るというわけだ。その続きはまた別のときに語るとしよう。そろそろ朝ご飯が冷めてしまう。


「さっきから何をぼーっとしている?」


 部屋から引き出されまいと抵抗を続けていたルーグナーが私に聞いてくる。


「うるさいアンタはいいの!」

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