世間知らずの田舎令嬢は今日もお気楽に生きるみたいです 〜気楽に生きるはいったけど、お淑やかとは言ってない〜
七楽丸井
海ノ厄災
《一章 変わらない日常》
男が一人、部屋の中にある椅子に座っていた。窓際に置かれた椅子は、街の景色を一望できる最高の場所である。
「いい朝だ」
男は紅茶を楽しみながら優雅なティータイムを過ごしていた。
***
ここは龍王国ルガート。古の時代に龍と人が築き上げた国である。約十年前、この国の王は二人の息子に恵まれたが、片方は死産となった。後に王が退位し、生き残った弟が国の政治を引き継ぐことになった。長い時を経て龍の存在はもはやおとぎ話になりつつあるが、王族が龍の血を引いているのは周知の事実であり、王家は寿命が人の何倍もあるため、政権は長く保たれている。大きな混乱もなく、平和な時間が変わらず続いていたそんな国に厄災が訪れようとしていたのであった。
***
「だ〜か〜ら〜!なんで私の部屋に勝手に入るのよ!」
この部屋の主人である私、ルナは自分の部屋で勝手にくつろいでいるルーグナに文句をいう。個人の部屋があるというのに、景色がいい私の部屋にくつろぎに来るのだから邪魔くさい。女子の部屋に所構わず入ってくるこいつに常識はないのだろうか?
「お二人共〜朝ご飯できましたよ〜」
一階から、男の声が聞こえてきた。ここまで良い匂いがしてくる。さっすがペル、仕事が早い。
「すぐこいつ連れてくから待ってて」
ドアから顔を出して、一階に聞こえるように言う。その後、私はすぐさまルーグナーの手を引っ張り、無理やり部屋から追い出していく。
「もう一度部屋替えをしよう」
「前にじゃんけんしたばっかでしょうが。あんたが負けたんだから、一ヶ月は我慢しなさい」
ほんとにこいつはわがままなんだから。一体どんな生活したらこんな性格になるのよ。
私は密かにルーグナーの整った顔と生活の所作や雰囲気から、彼がある程度の権力者だろうと推察している。一度聞いたことはあるが、はぐらかされたので何かあるのだろう。また聞いたところで、何も教えてくれなさそうなため、あれ以来私は聞かないことにしている。
そんなこいつとペルの出会いは数ヶ月前のこと。私がこの王都に来るために船を使ったときまで遡る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます