第19話 元冒険者ランクS級で、巷では帝国の聖女


 そう優しく語りかけてくるお母様なのだが、その笑顔はいつものような聖母の笑みではなく、どこか戦闘狂のような笑みに見えてくるのは気のせいだろか?


「と、思ったのですが……やはり実の母に向けて攻撃したりするのは気が引けるので──」

「あぁ、その事ならば大丈夫よ。これでも未だに毎日鍛錬はプロポーション維持も兼ねてしているし、ロベルトちゃんが思っている何倍もお母様は強いのよ? それと話してなかったのだけれどもお母様はこう見えて元冒険者ランクS級で、巷では帝国の聖女なんて呼ばれていたのよ?」


 少しだけ嫌な予感がしたので、俺はこの話を無かった事にしようとしたのだが、俺が言い切る前にお母様に『問題ない』と返されてしまった。


 というか元冒険者ランクS級であるのも、その時の二つ名が帝国の聖女だという事も初耳なんだけど……?


 あと自分の母親の口から自らの事を聖女とよぶ──


「ロベルトちゃん? お母様に言いたい事があるのでしたら、ちゃんと言って良いのよ?」


──のはどうかと思ったのだけれども、確かに俺のお母様は実年齢よりも若く見え、今でも聖女と呼ばれていてもおかしくない美しさでを持っており、自慢のお母様である。


 そして俺とお母様は、未だにお爺様と喧嘩をしているお父様の事は放っておいて敷地内にある修練場まで向かう。





「流石はロベルトちゃん。私たちの息子ね。いつの間に私よりも強くなったのかしら?」


 あの後お母様との模擬戦を行ったのだが、普通に圧勝する事でお母様は納得できたみたいである。


 確かに元S級という事もあり戦闘経験でなんとかカバーしようとしていたのだが、それでも行使できる魔術の数や段位の差を埋められることは出来ず、それだけではなくゲームの知識で得た嵌め技も駆使しては流石のお母様であろうとも対処しきれなかったようである。


「それは企業秘密です」

「あら、つれないのね。でも私もロベルトちゃんくらいの年齢の時は親に隠し事をしたくなる時期でもあったものね……。そういう面でも、戦闘面でも成長している姿を見るのは嬉しいのだけれども、それとは別に別れの時期が近づいている気がして寂しいわね」

「大丈夫ですよ、お母様。例え独り立ちしたとしても俺はお母様の息子だという事は変らないので」

「ふふ、お母様としては嬉しいのだけれども、もし嫁さんが出来た時は、あまり嫁さんの前でそんな事言っちゃだめよ?」


 そして、何とか目の前にある問題、スルーズを俺の養女にする事、その事により学園を退学する事は解決しそうで一安心である。

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