13.どうやら、協力者がお迎えに来るようです
アリスとシュルツの婚約が発表された。
そんなおめでたい場を一変させたクリストン王にはもの申したいところだけど、今はそれどころではない。
王の命令に従い、私を捕らえるために学園長が目の前に出てきた。
学園長を中心に魔力が会場全体に張り巡らされる。どうやら、逃がす気はないようだ。
まあ、ここで私を見逃しても何の得にもならないからなあ。
「どうぞ、捕らえてください。抵抗なんて致しません」
私は両手を上げる。
即座に学園長の拘束魔法が発動した。
「牢に連れていけ」
「かしこまりました」
学園長に連れられ、会場をあとにする。
「……解いてはくれないのですね」
前を歩いている学園長に声をかける。
パーティーだからか、この糾弾が急だからか、周囲には誰もいない。
「その必要がない」
……冷たい。損な役回りを担っているのに。少しは優しくしてくれてもいいと思う。
お互い無言で歩いていく。
「ついたぞ」
牢は地下に配置されていて、窓はなく、続く道も一つしかない。
穴をあけられないよう壁と床には鉄板が埋め込まれている。
魔法の対策には、はめると魔法が使えなくなる機能が付与されている腕輪を用いる。実際には、腕輪の周囲にいるナノマシンの活動を停止させるという、トンデモな代物なのだが。
「手を」
学園長に促され、手を差し出す。
私の手首に腕輪がはめられる。
……?魔法が使えなくなるという感覚がなくならない?
学園長の顔を見上げると、少しだけ口角が上がっている。どうやら、腕輪のレプリカらしい。
「呼ばれるまで、大人しくしているように」
そう言うと錠をかけ出ていく。
一人になったところで、これからのことを考える。
魔法は問題なく使える。武器は手元にない。さっきの言葉から、学園長が迎えに来てくれるのだろう。
ということは────
「お迎えが来るまで、寝ておきましょう」
※
「はぁ……」
誰かのため息で目を覚ました。
床で寝ていたためか、体が硬くなっている。グッと体を伸ばしため息が聞こえた方を向く。
「もう少し緊張感あった方がいいと思うよ?クロちゃん」
てっきり学園長が来ると思っていたのに。
迎えに来たのはアリスだった。
「……え?どうしてアリスが……?」
「もちろん、クロちゃんを助けるためだよ」
いたずらが成功した表情の中に呆れを含んで、牢の錠を開ける。
「クロちゃん、ハイドで隠れて。私は面会に来たていだから、そのままついてきて」
「わ、わかった」
混乱している私は、アリスに言われるがままハイドを使用する。
「……ありがとうございました」
牢へと降りる階段の脇に佇んでいる兵士に、悲しそうな表情でアリスが挨拶をする。
兵士は無言で会釈を返すだけだった。
進んでいくアリスの後を無言でついていく。
どうしてアリスが?学園長が明かした?それともツェリン様が?
私を助けて大丈夫?シュルツは知っているの?もしかして嵌められてる?
頭の中で疑問が渦巻き、混乱が収まらない。
アリスが立ち止まり、ドアをノックする。
「入りなさい」
学園長の声だ。
アリスが「失礼します」と中に入っていく。私も続いて部屋の中へ入る。
部屋の中には、学園長とシェルリィがソファーに腰かけていた。
「クロちゃん、出てきていいよー」
アリスののんびりした声に促され、魔法を解く。
シェルリィが駆け寄ってくる。
「クロ!怪我は?」
「大丈夫よ」
シェルリィには事前に私が、何もしないように、何かあれば学園長の指示に従ってとお願いしたから、ここにいるのは納得できる。
しかし、アリスは?全く分からない。
「……これはどういうことですか?」
学園長に説明を求める。
「私が説明するより、アリスから話してもらったほうがいいだろう」
紅茶を淹れているアリスの方を向く。
「私もね、転生者なんだよー」
……ふぇ?
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