短編

片栗粉

さようなら推し

今私が全力で押しているグループ。その名も「kiss me」。その中でも一番好きなのは倉科玲君!!!!ビジュアル担当だけど、歌もダンスも出来て人気ナンバーワン!

今年は結婚したい男ナンバーワンを勝ち取って、まさに今を輝くスーパーアイドル。

「ほんとにかっこいい。」

「また玲君のアクスタ見てんの?」

「だってかっこいいんだもん。」

「はぁ、もうちょっとで握手会だよ。どうせ会えるんだからさっさと心の準備して」

そう、今日は握手会!!!!この日のためにどんなに準備したか・・・・

早く会いたいなぁ。


「ねぇ、あんたもしかして玲君のファン?」

「はぁ、だったらなんな訳?」


横では玲君のファンであろう女性陣達が何やら不穏な争いを始めていた。


「私同担拒否なの。降りてくんない?」

「はぁ?玲君は私が最初に見つけたの。ファン番号だってほら一ケタ」

「それが何?いつ見つけようが関係ないでしょ」


わー、どんどんヒートアップしてる・・・・

こういうの苦手なんだよなぁ。私も若干同担拒否だから気持ちは分からなくも無いけど・・・

「あ、あの。」

『何!?』

「私も若干同担拒否入ってるので、お二人の気持ちは分かるんですが、もう少しで玲君に会えるわけじゃないですか。今日のために頑張ってオシャレしたりとかしてきたんですから、最高に可愛い状態で会いましょうよ!」

「・・・・・」

(響いてくれたか・・)

「あんた何様!?」

「だるい、てかむかつく。自分の方が偉いとでも思ってんの?」

(あー終わった。全然響いてないっ)


「何してるんですか!ちょっと退場でお願いします。」

後からやってきた警備員さんに連れられ、3人そろって退場となる。


「うえぇぇぇぇぇん」

「はぁ、あんたが関わったのが悪い。」

握手会が終わった友人にやや厳しめの慰めを受ける。この日のために頑張ったのに・・・・・

「でも、でもぉ」

「でもじゃない。あんたお人好しっていうか、お節介っていうか・・・・まぁとにかく?お酒でもパーっと飲みに行こうよ」

「いぐぅぅぅぅぅ」

そのまま飲みに飲みまくり、家に帰る。


「ぎょうはぁ、いろいろあったなぁ。」

ピロンっ

「はっ、玲君のイン●タライブの時間!!!!見なきゃ見なきゃ。」

どんなに酔っていても、推しのライブは忘れない。それが私。

イン●タに飛ぶと、画面には国宝級イケメンが映っている。

「はぁぁぁぁ、かっっこいいい」

『あ、入れた。見えてる?』

「見えてるよっと。今日こそメッセージ拾ってもらうぞ!!!」

始まってから少ししか経っていないのに、もう5万人もの人が集まっていた。

『握手会お疲れ様』などのメッセージが並ぶ中、『今日の握手会で何かトラブルがあったんですよね?大丈夫でしたか?』というメッセージがあった。

「あのことだよね・・・・」

『トラブル・・あぁ、大丈夫だったよ。でも、正直怒ってる。』

「え・・・」

『みんな楽しみに来てくれてるんだから、喧嘩してほしくない』

その言葉にたくさんの共感のメッセージが表示される。そしてまた『同担拒否派の人がトラブル起こしたんだっけ?同担拒否って玲君はどう思ってる?』というメッセージが私の目に映った。

「玲君なんて答えるんだろう。神対応で有名だし、それすらも受け入れるようなこと言ってくれるのかな?」

『同担拒否についてか。うーんそうだな。正直にいうと、イヤ、かな。』

「あ・・・」

イヤ。それはいつも優しく、すべてを包んでくれるような玲君から出ると、かなり強い拒絶の言葉に感じられた。

若干とはいえ同担拒否の自分にとって、自分自身も拒絶された感じがして、胸の奥がジクリと痛んだ。

やばい・・・玲君同担拒否イヤなんだ。でも、自分の気持ちは制御できない。

こんな私が玲君のこと推してもきっと迷惑だよね。

推し・・・・降りよう。

我ながら真面目すぎるし単純だと思った。だけど、自分の気持ちを隠して生きられるほど、心が強い訳じゃない。だったら最初っから見ない方が良い。





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短編 片栗粉 @andoroido2123tukareta

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