第2話 1ー2 確認と検証

 なぐられたり、られたりしていても、さっきと違ってあんまり痛くない。

 Resistanceが効いているのか?


 だが、どうしたら発動するのかが全然わかんねぇ。

 そんな状態が5分近くも続いたが、そのうち例の連中が飽きたのか捨て台詞ぜりふを吐いてその場を去って行った。


「これにりたら、余計な口出しすんな。

 今度、生意気な口きいたらただじゃあ済まねぇぞ。」


 奴らが去ったので、俺は若干ぎくしゃくとしながら立ちあがった。

 どっか痛いんじゃないかと不安なのでそんな動きになったのだが、幸いにしてガクランは多少汚れたものの、身体には怪我は無いようだ。


 頭を手や腕でかばっていたから、打ち身ぐらいあるかなと思って確認したが、何も異常はなさそうだ。

 俺ってこんなに丈夫だったか?


 なんか妙な感じだよね。

 あれだけ殴られたり、蹴られたりしてたのに何ともないなんて・・・。


 俺より先にいじめられていたちょっと可愛い例の女の子が俺に声を掛けてきた。


「ごめんね。

 私をかばった所為せいで、あなたに迷惑が掛かっちゃった。

 ひどく殴られたり、蹴られたりしていたけれど、大丈夫?

 保健室に行きますか?」


「いや、大丈夫だよ。

 怪我けがもないし、痛みもないから。

 それに保健室へ行ったら事情を説明しなければならないけれど、後々面倒そうだ。

 怪我があったり、痛いところがあったりしたなら遠慮せず行くけどね。」


「そう、でも、頭なんか後で症状が出ることもあるから注意しなきゃ。」


「おう。

 注意しとくよ。

 ありがとな、気にかけてくれて。」


「いえ、お礼を言うのは私の方。

 中学の時から、あの人たち私に絡んでくるの。

 ちょっと我慢しておけば大事にはならないんだけど。

 あの人たち邪魔が入るとすぐに切れるのよ。

 中学でも何回か先生に見つかって補導されているからね。

 えっと、秦山さんだっけ。

 本当に注意してね。」


 目の前の子は、小林(こばやし)梓(あずさ)。

 同級生ではちょっと可愛い女の子。


 入学してまだ一週間も経っていないのに、ちゃんと俺の名前をおぼえていてくれたなんて、ある意味感激だね。

 もしかして、ボーイフレンドの「ボ」の字ぐらいになれそうかな?


 そんなチョットしたことで喜んでいた俺だった。

 小林さんとちょっと話ができた分、ラッキーな一日と言えるだろう。


 ◇◇◇◇


 翌日は土曜日、学校はお休みだ。

 俺は早速覚醒したユニークスキルってやつを、土・日をかけて色々試してみることにした。


 Reactionに関わる素因(?)のひとつの「燃焼」は、Reactionの言葉の意味から言って、酸化剤と可燃物の反応だろうな。

 だから俺は色々試してみた結果、可燃物ならマッチやライターが無くても、Reactionを使って何でも燃やすことができるとわかったぜ。


 油類、紙、木片はもちろんだが、普通ならば燃えそうにないようなモノも反応によって燃焼させることができた。

 例えば水だ。


 水はご存じの通り水素と酸素の化合物なんだが、水素分子が含まれているから更なる酸化は可能なんだよね。

 で、水の中の遊離水素分子を狙い撃ちして反応させると、加速度的に酸素と水素が分離し、継続的にする。


 因みにこの酸素と水素の分離反応は、本来ならばものすごく遅いんだが、俺はこの反応を促進できるんだ。

 で、クリーンエネルギー反応の完成って訳だ。


 水から水を生み出すだけで熱量が生じるんだが・・・。

 エントロピーの法則?


 エネルギー保存の法則?

 そんなモノ、俺は学者じゃないんだから、良く知らねぇよ。


 だが、まぁ、水を燃焼させて水(お湯)を作った場合、俺の感覚的には元の水の総量が少し減ったような・・・気もしないでもないな。

 湯気になって蒸発しただけかも知れないけれど、或いは質量の一部がエネルギーに変わったのかも・・・。


 E=質量×光の速度の二乗だから、仮に1グラムがエネルギーに変わったとしても、広島に落とされた原爆の千分の一程度、TNT火薬15キロ分程度になるんだが・・・。

 間違いなく爆発は無かったから、もし質量がエネルギーに変わったにしても、物凄い小さい質量だよね?ね?ね?


 細かいことはわかんねぇが、とにかく俺のユニークスキルで反応の促進や遅延を操作できることがわかったよ。

 で、極めつけは可燃材の燃焼促進だな。


 簡単に爆弾が作れちゃった。

 因みに俺が試したのはプラスチック片だ。


 空気中で加減しながら燃焼促進を使ったところ、ものすごい勢いで燃えたんだ。

 花火とは言わないが、少なくとも酸素にぶち込んだ真っ赤な鉄線ぐらいにはバチバチと燃えた。


 で、これはひょっとしてもっと燃焼促進をしてやれば爆発するかもと思って、石をおもりにして、川底に沈めて試してみた。

 ターゲットを一度決めると少々離れても俺のセンサー(かどうかわかんねぇ)で認識できるし、後で探すことができるんだ。


 その距離は今のところ10m内外だな。

 実は、もうちょっと距離が伸びないと危なくてとても使えないというのが後でわかったんだが・・・。


 まぁ、思いつきながら、実験のために最寄りの河川敷へ行った。

 小さな石に精々厚さ1ミリで、5ミリ四方ほどしか無いおもちゃのプラスチック片をタコ糸でくくりつけ、7mほど先の水ん中に投げ込んだ。


 プラスチック片を俺のセンサー(感覚)で確認し、その日は何もせずに帰宅。

 俺が投げたモノがすぐに爆発したりすれば絶対に俺が疑われるから、それだけは避けておかねばならないダロ?


 翌日、もう一度河川敷へ行って、散歩を装いながらプラスチック片を再度確認、そして燃焼の上、反応速度を急激に促進させた。

 ドコっという音とともに、7m先で二メートルを超えるぐらいの水柱が立ったよ。


 おまけに周囲に小石が跳んできた。

 幸いにして当たらなかったから良かったけれど、目の前を小石がすごい勢いで飛んで行ったから、ちょっと危なかったぜ。


 他にも周辺にはジョギング中の人がいたが、幸いにして誰も怪我した人は居なかったようだ。

 突然の爆発音と水柱に結構たくさんの人が気付いて驚いていたみたいだけれど、その後ネットでも話題にはならなかったから、これはこれで良しとすべきだろう。


 もう一つ「抵抗(?)」のほうだが、こいつもよくわからねぇ。

 但し、昼休み7人にボコされた後、ステータスの中でSTRが9から12に、VITが8から12へ変化し、Resistanceの要因(?)の一つである「空間」のレベルが1になっていた。


 これは、あるいは物理防御の抵抗力がついたと言うことではあるまいか?

 で、それを試すために色々と試してみた。


 今一わからないスキルの「闘気」なるものを意識して、俺の身体表面に満遍まんべんなく行き渡らせるように動かしてみた。

 結構面倒だったな。


 闘気か何かはわからんが、身体の中に在るのはわかって、それを動かそうとすると凄く抵抗があるんだ。

 で、いろいろやってるうちに、俺はその抵抗力をResistanceのスキルで減少させることができたんだ。


 最初はあんまり小さくなりすぎて、どこにでもホイホイと流れてしまうようになり、適度な抵抗力を見極めるのがちょっと大変だった。

 土、日だけでは足りずに、月曜以降も続けて、まぁ、それでも始めてから3日目ぐらいには、全身に闘気を薄く張り巡らせることに成功したよ。


 まぁ、感覚的なものなんで、できたのが分かったと言うだけで効果のほどは今一よくわからない。

 で、当然、実験だよな。


 また誰かに殴られるというのもどうかと思うので、小学生の頃にお祭りの屋台の景品で当たったおもちゃのピストルの出番だ。

 丸い小さなプラスチックの球をバネで打ち出すだけのオモチャなんだけれど、入手してすぐに親父に危ないからダメと言われてお蔵入り、先日物置でたまたま見つけたものだが、保存状態が良かったのか、4~5年ほど経っても新品同様だった。


 で、そいつを使って実験するために、ちょっと万力まんりきで銃把を固定し、ひもを使って少し離れた俺目がけて撃ってみる。

 大した威力では無いけれど目にでも当たれば怪我をする可能性はある。


 で、親父がDIY作業をするときに使う保護メガネを無断で借りて着用。

 2mの距離で撃ってみた。


 最初は、闘気をまとわずにやったら、当たれば結構な痛みはあったな。

 狙いはむき出しの俺の二の腕だったから・・・。


 次いで闘気を纏うと、あら不思議、当たったのがわからないほどしっかりと防護されていた。

 念のためと思い、むき出しの左頬に向かって距離50センチで撃ってみたが、腕と同様、プラスチック弾からはしっかりと防護されていたようだ。


 まぁ、流石にこれで防御は絶対大丈夫とは思わないが、相応の力は防げるんじゃないかと言う予想はできた。

 だから、あとは鍛錬のみ。


 本物の銃弾でも跳ね返して見せるとの意気込みで日々の鍛錬に精進したぜ。

 その過程で色々とResistanceの扱いを覚えたよ。


 抵抗の加減は色々な場面で使える。

 家の廊下で摩擦抵抗を少なくして、すぅーと滑ると、スケボーなしで滑走ができた。


 人目を気にしないのなら道路でも多分同じことができるはずだ。

 緩斜面に停車している車にコソっと使ってみたら、少し滑り出したので慌てて止めた。


 ゴムタイヤの接地抵抗を減少させたらやっぱりタイヤごと滑っちゃうんだよね。

 多分20センチぐらいは動いたかもしれない。


 もしもそのまま止めなければ坂の下まで滑って行ったはずだ。

 うん、事故るよね。


 それはこの車が違法駐車だったとしてもやっぱり拙い。

 そうして逆もできたね。


 抵抗を増やす方ね。

 40センチほどの長さの端切れはぎれ板に丸箸まるばしをおいてみた。


 普通ならば15度ほども板を傾ければ絶対に転がりだす。

 でも摩擦抵抗を上げると何と45度近くまで転がらなかったよ。


 粘着ではないから、抵抗値を最大にしてもアバウト45度以上の角度では無理みたい。


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 8月29日より、『仇討の娘』を投稿しています。

  https://kakuyomu.jp/works/16818093083771699040

 よろしければご一読ください。


 By @Sakura-shougen


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