第2話 どうやら転生したらしい
ーーーーーーー誰かに強く手を握られるのを感じて、意識が覚醒する。
「ーーーーうっ」
「お、おぉ!!意識が戻ったぞ!!」
「アルスちゃん?!」
最初に目に映ったのはかなり若い男女だった、20代くらいだろうか?
「......どちら様でしょうか?」
そう声を出すと明らかに若い男の子の声が聞こえた。
え?これ俺の声?
「「ーーっっ!!」」
そしてこの男女、明らかにこの世の終わりのような顔をしたぞ。
「落ち着いてください、閣下!治癒師の話によると一時的な記憶喪失があるかもしれないと言っておりました!」
「と、ということはアルスは私たちをーー?!」
「そ、そんな?!アルスちゃん!ママのこと覚えてないの?!」
ママ、と自称している女性が俺のことを揺さぶり始めた。
「お、奥様落ち着いてください!アルス様は怪我人です!」
周りを見ると明らかに高価そうな装飾が施された部屋だった。
ーーーやっぱり転生したのか、ただ見た感じ貴族に転生したみたいだ。
前世にいた時に異世界転生系のラノベが人気だと聞いたが、一冊も読んでいない....こういう状況に備えて読んでおくべきだったか?
....いや、こういう状況ってなんだ?
「....アルス、お前の名だアルス・フォン・ローグレート....何か思い出すか?」
アルス...そう聞いて記憶を探ってみると、まるで元々本人だったかのように記憶を思い出した....記憶から見るにこの二人はローグレード公爵家当主であるシラムス・フォン・ローグレードとその妻であるシラ・ローグレード。
つまりアルスの両親である。
それにしてもローグレードってどこかで聞いたことあるような....気のせいか?
「ーーーシラムス...父上」
ポツリと浮かんだ言葉を言うと、
「おぉ、記憶が戻ったのか!流石私の息子だな!」
「か、閣下....おそらくですが親しい方のお名前は覚えておられるのかと」
「む?そうなのか?アルス」
記憶は思い出した...と言っても全てではなく、断片的だ。
ーーーだからと言って治るとも限らないが、ここであると言ってもどこかでボロを出しそうだ.....それにもし、俺が別人とバレたらどうなるだろうか?
自分の子が全く知らない人になっている....うん、監禁されそうだ。
「ーーーはい、シクラ母上のことも覚えているのですが....直近で何があったのか覚えていません」
「そうか......そう言えば近頃、王都で初めてのお披露目会があったな」
「は、そうでございます」
王都のお披露目会....記憶によるとどうやら、この世界の貴族の子息息女は12歳になると王都で開催されるお披露目会に出席するらしいーーーつまり俺は今12歳?
26歳のまま転生しなくてよかった、いや転移か?
「そうか....だが状況が状況だ、一応王都に向かっているルアーナから陛下に欠席すると伝えてくれ」
「は、直ちに」
状況が状況?
そうだ、俺....というかアルス?は何が起こったんだ?
「あの父上、僕に何が起こったんでしょうか?」
「ーーーーーまだ11歳のお前にこの話は早いと思うが...アルス、お前は暗殺されかけたのだ」
なるほど、暗殺か.......え?暗殺?
「お前を殺そうとした暗殺者は逃してしまったが....公爵家の総力を上げて調べているところだ」
「......そうなんですか」
.....ということは暗殺者もおそらくその依頼主もわかってないってことじゃん。
確かにそんな状況でパーティーなんかに出席しないよな。
それにしてもアルス君....まだ11歳なのに暗殺されかけるって....
「閣下、そろそろお時間です....アルス様としてもお一人になりたいかと」
「そうだな....アルス、部屋の前に兵と”別の“侍女もつけておく何かあったら呼んでくれ」
「はい」
「アルスちゃん、心配だったらママのこと呼んでね?」
「は、はい」
一応もう11歳なのだがこの母親は過保護過ぎではないだろうか?
いや暗殺されかけたのだ、これくらい心配するのだろう
そうして、両親たちは部屋を出た。
「..........」
刺されたであろうばしょを触ってみるが....後傷もない。
おそらく最後に見えた、あの白金のマントを着ていた女性のおかげなのだろう。
「うお、服も凄く柔らかい」
起き上がるとふわふわとした生地の寝間着を着ているためか、それとも自分自身が軽いのか。
体が軽く感じた。
そうして派手な装飾がされた姿見鏡を覗き込む。
やっぱり転生したからには自分がどんな姿をしているのか気になる....
「ーー!?」
鏡を覗き込むとそこに映ったのはサラサラとした白髪に、透き通るような碧眼。
鼻筋から口まで綺麗に整った美少年が映った。
普通なら将来イケメンになりそうだなーーーと思うところなのだろうが...
ーーーーこいつ!この姿でアルス・ローグレードって...前世やっていた乙女ゲームに一文だけ記載されていたキャラじゃないか!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます