Ⅵ.痕跡

宿を尋ねている

塗りつぶされた微かな傷

湯船ではほら吹きが透き通った爪を剥がし

歌を歌う

枝の差し出す毛玉と蔓の企てるカビの生えたいこんにゃく

スープは気丈夫な頬をしている

魚の群れに 骨がラリってドーパして

電信柱の窪みに

短い尻尾は黒く尖り出す

底なしの固唾を呑み

 雲の霞む迷路にひるがえった

男の子のジャンパ


メガホンが

こわれていて

脈を測ると気管支は

ライター片手に ピースして

燃え上がる草原の里標に繋がれて

呼び声も宛先は定めず

胞子が蒸発する沼の岸辺でパピルスを作り上げる

叫び 駆け寄る

 農園の蝶のように


風邪をひいた葉っぱが

隅っこの花壇に転がった

灯火を点ける前に










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震える時 夜鷹掌 @Hokerikon

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