第9話 シュークリーム事件

あまり細かい事を気にしない女性上司が、料理が出来ない女性社員に言いました。

「あなた、料理くらい出来なきゃ一生独身よ」

言われた彼女が怒って言い返します。

「いいじゃないですか。誰にも迷惑かけていないから」

女性上司が更に厚顔無恥な顔でのたまいます。

「あなた、強すぎるのよ。だからいつまでたっても結婚出来ないんじゃない、男性が守ってやろうって気にならないから」

独身女性は切り返します。

「私は男に守って貰おうとも、料理で男に媚びようとも思いません」

周囲の方が焦り、仲裁に入ります。

「もういいじゃないですか、○○さんが独身で迷惑している人なんて、

この世にひとりもいないんだから」

女性上司が厚顔無恥な顔で言い切ります。

「だって、日本は少子高齢化じゃない、この人が結婚して子どもを産めば少しは良くなるじゃない」

「そういう問題じゃないですよ」

「いやいや、そういう問題なのよ、だからあなた早く結婚しなさいよ」

「○○さん、もうやめましょうよ、その話、楽しくないですよ」

「早くしないとマルコー押されるわよ。高齢出産のハンコ」

「ほんと、やめて下さい」

言われた彼女が、啖呵を切りました。

「あと一言たりともそういう事を言ったら、迷惑行為で訴えますけど良いですか?」

あまり細かい事を気にしない女性上司がやっと黙り、

すっと会社から出て行きました。

周囲はほっとします。

しばらくして戻ってきた女性上司は、

シュークリームを山のように買ってきてひとりずつに配りました。

済まなかった、と思っているのは分かりますが、

だったら散々失礼な事を言って申し訳なかった、とか言った方が良いのに、

と思っていると、料理が出来ない彼女にはふたつあげていました。

ふたつあげればいいってもんじゃないよ〜、と心配していると

料理が出来ない彼女は、食べもせずにそのままゴミ箱に放り込んでいました。


周囲は寒々しい空気の中、黙っているしかありませんでした。


(明日に続きます)

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