第8話
東方の賢者マハリシ・バラドヴァージャによってもたらされた航宙艦建造技術により、プルポン王国は四次元的戦術を用いた軍事作戦を実行する能力を得た。時にカナッペ朝太陽暦700年代、未だ黒色火薬の製法も知られていなかった時代である…。
その頃、ステップの広がるアルゴイド高原において最大の勢力となっていたホーライ族は、「迷宮の中に潜むもの」と渾名される謎の神・エムフェネルの加護と呪詛を受け、昼の行軍の距離は半分に、夜の行軍の距離は三倍になるという戦略的に特異な状況下にあった。故に彼等は、昼間の戦いを常に選んだ。
ホーライ族は火の蛇、ネフシュタンと呼ばれ、それはプルポン王国により征服された後、火星への侵攻軍となった時には正式な呼び名となった。
プルポン王国宇宙軍は863年に火星首都マイコニアに対し市街地付近への砲撃をもって宣戦、一週間後に大規模空爆を試み、火星警察の小型パトロール船(マイコレーゼ級警邏用宇宙船シターケンⅣ・全幅248メートル、全長1213メートル、インフラトン動力器官及びスカラー波動兵器器官内蔵、物理定数及び不可逆性管制器官内蔵、双方向量子感界、総ヨクトスケール構造子製人工生体システム・最高速度光速の1/1・空間跳躍航行距離3000000光年・制御員数巡査1・車検は原則2年に一回・マイコニアナンバー「マ92K-47-689」)一隻に対し六百の「宇宙戦列艦(砲数200門)」が0.2秒以内に全艦兵器システムのみを完全破壊されるという激闘を繰り広げた。
地上降下部隊であったネフシュタン達は戦闘能力を喪失した艦から降下作戦を強行、マイコニア近郊に着陸したスピットファイア小隊の隊員、ジョルノ・ゴンザレスがセイレム地区現地民クサビラカ・マイタークヒトと接触した時点が人類と他の知的生命体とのファーストコンタクトであったとされる(公式記録には863年6月27日14時26分に「現地偵察において初の会敵」とされている…)。
ネフシュタン隊員3000人は着地後十分以内に各地の留置所へ分散して転送収容され、司法判断の結果、即時に転送によって所属艦隊に送還され、艦隊は撤退した。
第Ⅲ期汎宇宙政府の公式記録では、第158463275825478652銀河における第12458種族と第12576種族のこの接触を以て第12576種族を非接触式保護から軽度干渉による保護対象に切り替え、注意深く観察、必要があれば文明維持及び市民の安全確保のための援助を行うとし、その後のマイコニア政府側からの忍耐に満ち満ちた粘り強い和平交渉と相互理解への取り組みによって、カナッペ朝太陽暦1137年、地球は銀河系地方行政に組み入れられ、正式に「政令指定都市地球」となる。
ネフシュタン隊員らは、マイコニア政府による非公式の様々な取り組みによって帰国後の生命が保証され、一部保護困難な元隊員達に関しては火星本土への帰化も行われた。
エムフェネルを始めとする、地球上で「旧神」を名乗っていた多くの精神寄生体に関しては、「保護対象種族の生活圏における無許可の長期滞在、及び破壊的干渉」という罪状が突き付けられ、一斉検挙後、厳しく処罰の上で収監中に更生プログラムが施された。
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