シシノヒト
「おい、ナナシ、今日はもう良いぞ……。ほら、今日の
役人は
嫌な態度はあいかわらずだ。
別に、怒りは
好きではないが、実は
そんな存在だ……。
むしろ、この男には少し
とは言っても、仲良くはないし、何かしてくれたという話ではないが……。
数年前に母を亡くし、
普段、誰とも
長い間そんな状況では、正直、言葉すら忘れてしまいそうになる。
アクロと出会うまでは、そんな日々だった……。
そんな中、この男とは仕事上の
他の者達が自分を
それが決して良い態度では無くとも、
そんな気がする……。
「ありがとうございました!」
いつものようにセレンは感謝の言葉を伝えた……。
「おう……」
役人は小さく
(よしっ……! これでまたアクロも喜ぶぞ!)
セレンは小さな袋に、黄色い、カビた何かを詰めた……。
何だかとても上機嫌だ。
今日は町で買い物できる数少ない日だ。
商人は誰も、セレンとは口を聞かない……。
指差しだけで成立する、不思議な買い物だ。
働いた日だけは、町の
とはいえ、最近はアクロが必要とする物はもう
今日は早く帰ろうと思っていたので、ひとつだけ……。
そう……買ったのは大好物のチーズだ!
以前はもう少したくさん買っていたが、今は我慢する……。
これで特別な時……一回分だ。
(それにしても何だろう……? この雰囲気……)
今日はなんだかヒソヒソと、内容は分からないが町のあちこちで
少し町全体が、
普段は見かけない
そろそろ帰ろう……と思った時、門のそばで
直後! セレンは家へと駆けだした!
(あれは……ヒトじゃないのか……? アクロと同じ姿をしていた……。
セレンの
そのスピードは自身の影を引き
夕日が
自宅から、焚き火の煙が上がっているのが見えた。
自慢の
アクロの
セレンの全身の毛がゾワゾワと逆立ち。
その
「ねぇ……やめて! 離してよ……痛いっ! イヤッ、イヤだってば!」
セレンが
「悪いが泣き
その後ろ姿はセレンの一回りは大きく、
落ちついた……とても低い声で話す男だった。
「やめろっ!! お前! その手を離せ!!」
セレンがそう叫ぶと、男がこちらを振り向いた。
男と顔を見合わせて、セレンは
(顔の周りに
セレンは全身に力を込めて
【
(はじめて見た……
セレンは大きくつばを飲み込む……。
「ここは
セレンの
「あんた! アクロに何してる!? その手を離せ! ここから立ち去れ!!」
セレンは
だが、全身がブルブルと
「お前……ここに住むナナシか……?」
男は
「そうだ……。ナナシは今、僕一人だけだ……」
セレンは決して目を
「このクロノヒトの女とどういう関係だ?」
セレンは少し、答えに迷う。
「ここで……一緒に生活をしている……」
男は
「ナナシ! ここから外に出たことはあるか?」
セレンはアクロの事が心配で視線をずらし、男の手元を確認した、アクロの腕は
「たまに仕事で近くの町には行くが、僕はナナシだ……それ以外はここで暮してる」
男はセレンの答えに
「そうか……知らないようなら教えよう……。実はな……西の大陸から来たという奴隷商人達が、東の大陸の国々に、この女の特徴と
男は淡々と話してはいるが、その立ち姿には
(なので……お前達には悪いが、この女は連れて行く……。だが、まさかこんな
セレンは動く事ができずに固まっている……。
(まさか、
「悪いが、この女は渡せない……」
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