エッセイ:塾人と主夫の狭間で ― 9月編

安乃澤 真平

001 ~手元に届くまで~

自宅には食品の定期便が届く。

毎週決まった曜日に注文して、決まった曜日に商品が届く。

これは妻の仕事だ。


時として注文を忘れて、

手数料だけ取られてしまうこともあるけれど、

店頭にはない商品があるとのことで、

カタログを見るのが毎週の楽しみとなっているらしい。


時間がある時は僕も一緒に注文をする。

と言っても眺めるばかりで僕の分は注文したことはないんだけれど、

その眺めるというのがやはり面白い。


こんな商品、あんな商品がある。


ぺらぺらめくっていく。


すると、ふと気づく。

このページ、一体何人が見ているんだろう。


心温まるストーリーのコーナー、

〇〇シェフがお勧めする〇〇レシピ、

一押し防災グッズ、などなど。


メインのカタログではない補助冊子、

ともすれば、はいはい、と右から左に流されてしまうだろう。


でもこれが手元に届くまでに、

記事ライターさんや編集者、デザイナーさんなどを通して、

色々な制限の中で苦心惨憺して作られたものなんだろう。


それならじっくり読みたいところだけれど、

それほどの時間が僕にはない。


情報が多すぎる時代、

人の汗や努力や創意工夫が、埋もれてしまっている。


それを見出す人になりたい。

まずは、自分だ。

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