第14話  王宮の栄誉⁉ 猫耳魔法大隊の誕生!

第14話  王宮の栄誉⁉ 猫耳魔法大隊の誕生! 

森の悪魔討伐を成功させたリリカとステラは、その功績を称えられ、王宮に招かれることになった。護衛のレオンと師匠のメルヴィルも共に豪勢なお出迎えを受け、リリカとステラは緊張しつつも期待に胸を膨らませながら王宮の門をくぐった。


 門を入ると、美しい花々が咲き誇る広大な庭園が広がっていた。色とりどりの花びらが風に舞い、リリカはその美しさに心を奪われてしまう。彼女は興奮気味に庭園を駆け回り、その様子にメルヴィルとステラも微笑んでいた。


「見て、ステラさん!こんなに綺麗な庭園、初めて見たよ!」


 庭園の中を歩いていると、リリカの目に珍しい白いリスが飛び込んできた。リリカはそのリスに惹かれ、思わず追いかけてしまう。夢中で追いかけるうちに、リリカは広い庭園の中で迷子になってしまった。


「ステラさん?レオンさん?あれ…ここはどこだろう…?」


 迷子になったリリカは少し不安になりながらも、さっき追いかけていたリスが再び現れて、彼女の前で遊び始めた。リリカはそのリスと戯れ、少しずつ不安を忘れていった。


 リリカがリスと戯れていると、一人の少年が現れた。少年はリリカと同じくらいの年で、リスの飼い主だという。彼はリスを撫でながらリリカに話しかけた。


「この子は僕のリスなんだ。猫耳さん。リスを追いかける姿が楽しそうだったから、声をかけに来たよ。」


 リリカは少年の優しげな言葉に安心し、会話を続けた。するとそこにもう一人、リリカと同い年くらいの美しい青年が現れた。彼は整った顔立ちと気品ある態度で、リリカに笑顔を向けた。


「初めまして、猫耳さん。お噂はかねがね伺っています。私はアレクシス、王宮の案内役を務めております。」


 アレクシスはリリカに手を差し出し、彼女を立ち上がらせた。リリカはその優雅な振る舞いに少し緊張しながらも、アレクシスに礼を言った。


「ありがとうございます、アレクシスさん。でも、迷子になっちゃって…ごめんなさい。」


 アレクシスは優しく笑い、リリカを庭園の奥へ案内した。彼は庭園の歴史や花々の意味を丁寧に説明し、リリカはその話に聞き入った。


 アレクシスの案内を受けながら、リリカは再びステラやレオン、メルヴィルの待つ広間へと戻った。ステラはリリカの姿を見つけて安堵の表情を浮かべた。


「リリカ、どこに行ってたの?心配したよ。」


「ごめんね、ステラさん。ちょっと迷子になっちゃって…でも、すごく素敵な庭園を見せてもらったの!」


 リリカはアレクシスとの出会いや庭園の話をステラに伝え、ステラもその話に興味津々だった。やがて、リリカとステラは王宮の広間に集まり、いよいよ王からの表彰を受ける時が来た。


「リリカ、ステラ。君たちの働きに感謝する。この国を守るために尽力し、見事に森の悪魔を討伐したその勇気と力を称えたい。これからも国を守るため、その力を存分に発揮してほしい。」


 王の声が広間に響き渡り、二人は深くお辞儀をした。リリカとステラは王からの勲章を受け取り、その瞬間、自分たちの努力が認められたことを実感した。


しかし、その後に続く言葉にリリカは耳を疑った。


「そして本日、この国をさらに強固にするため、猫耳魔法大隊を新設することをここに宣言する。ステラ、君を隊長に、そしてリリカ、君を副隊長に任命する。」


 広間には拍手と歓声が湧き上がったが、リリカはその場に立ち尽くしていた。目を見開き、ステラも同様に驚いた表情を浮かべている。リリカはすぐにメルヴィルに視線を向けた。


「えっ、聞いてないんだけど!?メルヴィルさん、これってどういうこと!?」


 メルヴィルはその場で少し顔を伏せ、口元を押さえて笑みを浮かべた。


「ふふ、サプライズが好きなのよ、リリカ。君たちの実力を王も高く評価しているからこそ、こうして特別に任命が決まったの。」


 リリカは唖然としながらも、徐々に理解していった。これはメルヴィルの策略だったのだ。彼女の中で急速に色々な感情が渦巻く中、ステラは一歩前に進み、王とメルヴィルに対してしっかりと頭を下げた。


「ありがとうございます。大隊の隊長として、全力で職務を全うします!」


 ステラの堂々とした姿に、リリカもまた覚悟を決めた。彼女は少し震える声で、それでもしっかりと宣誓した。


「副隊長として、ステラさんと一緒に頑張ります…!」


 式典が終わった後、リリカとステラはメルヴィルと共に控え室へと移動した。二人は新たな任務への期待と不安を抱えながら、メルヴィルの言葉に耳を傾けた。


 メルヴィルは母親のような温かい笑顔を浮かべながら、二人に向かって優しく語りかけた。


「驚いたでしょうけど、これは君たちの努力が実を結んだ結果よ。猫耳魔法大隊の任命は、君たちにとってもこの国にとっても重要な一歩。けれど、私たちはこれまで通り、共に歩んでいくのだから心配はいらないわ。」


 リリカはまだ戸惑いを隠せずにいたが、メルヴィルの言葉に少しずつ安心感を取り戻していった。


「メルヴィルさん、これからも私たちと一緒にいてくれるんだよね?」


 メルヴィルは優しく頷き、二人の目をしっかりと見据えた。


「ええ、もちろんよ。王宮では形式的に様付けで呼ぶけれど、外では今まで通りでいきましょう。私はずっと君たちを見守り続けるわ。」


 ステラもまた、少し微笑みながらメルヴィルに感謝の意を伝えた。


「ありがとうございます、メルヴィルさん。これからもよろしくお願いします。」


 メルヴィルは二人を見つめ、深く頷いた。その瞳には、師としての誇りと、彼女たちへの愛情がしっかりと宿っていた。


「リリカ、ステラ。君たちがどんな困難に直面しても、私は君たちの味方よ。自分たちを信じて、次のステップへ進んでいきましょう。」


 リリカとステラは、メルヴィルの言葉に励まされ、新たな役割に向けて前進する決意を新たにした。二人の心には、これまでの努力とこれからの希望が溢れていた――。

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