　リリカは日々の特訓とステージで少しずつ疲れを感じていた。そんなリリカの様子を見ていたメルヴィルが、ある日、休暇を取るよう提案した。

「リリカ、今日は休んでリフレッシュしてきなさい。これまでよく頑張っているんだから、一息入れることも大切よ。」

　メルヴィルの言葉にリリカは驚きながらも、心の中でほっとするのを感じた。ステージの準備や特訓に追われて、自分の時間を取る余裕などなかったからだ。そんな中、ステラがリリカを誘って一緒に出かけることを提案してきた。

「せっかくだし、一緒に出かけようよ。いい場所を知ってるんだ。」

　ステラの提案にリリカは少し戸惑いながらも、一緒に行くことに決めた。ステラに連れられて向かったのは、町の外れにある静かな丘だった。丘の上には色とりどりの花が咲き誇り、風に揺れる花々がリリカの心を和ませた。

「本当に綺麗…！」

　リリカは目を輝かせて周りの景色を見渡し、ステラは満足そうに笑った。二人は花畑の中を歩きながら、久しぶりの休暇を満喫していた。

　リリカはステラを見つめ、改めて彼女の美しさと落ち着いた雰囲気に心を奪われていた。ステラはいつも自信に満ちていて、何事にも動じない。まるでお姉さんのようにリリカを包み込むその姿に、リリカは密かに憧れていた。

「ステラさんって、いつも綺麗で、聡明で、憧れちゃう。私もステラさんみたいになりたいな。」

　リリカの素直な言葉に、ステラは驚いたように目を見開いたが、すぐに優しく微笑んだ。

「ありがとう、リリカ。でも、私だって完璧じゃないよ。実は、私も一年ほど前にリリカと同じように召喚されたの。最初は私一人で、すごく不安だったわ。」

　リリカはその言葉に驚き、じっとステラの顔を見つめた。彼女もまた異世界に召喚され、猫耳メイド魔法使いとして孤独な日々を過ごしていたのだ。

「ステラさんも…だったんですね。」

　リリカが感慨深げに呟くと、ステラは微笑みながら、少し照れくさそうに続けた。

「だから、リリカが召喚されたと聞いた時、正直なところ嬉しかったの。不謹慎かもしれないけれど、もう一人、同じ境遇の人がいるって思えたから。」

　ステラの言葉に、リリカは不思議な親近感を感じた。ライバルとして競い合う中で知り得なかったステラの孤独や不安を、少しでも理解できたような気がした。そして、自分がステラにとって少しでも安心感を与えられたのなら、それがリリカにとっても嬉しかった。

「私も最初は不安だったけど、ステラさんがいてくれて本当に良かったです。こうしてライバルとして競い合っているけど、同時に仲間なんだなって思えて。」

　リリカとステラは、共に前世の記憶が曖昧であり、いつかその記憶が戻ってくるかもしれないという期待を抱いていた。異世界に召喚された同士、同じ猫耳メイド魔法使いとしての絆が、二人の間には確かに存在していた。

「ねえ、リリカ。私たち、ライバルだけどそれ以上の関係になれたらいいなって思う。私たちには、お互いにしか分からないことがたくさんあるから。」

　ステラの提案にリリカは少し考えたが、すぐに笑顔で頷いた。ライバルでありながらも、それ以上に信頼できる友達がいることの心強さを感じたからだ。

「うん、私もそう思う。これからもライバルとして競い合いながら、唯一無二の友達でいようね。」

　夕暮れ時、丘の上から見下ろす町の風景は夕陽に染まり、辺り一面が温かなオレンジ色に包まれていた。リリカとステラはその美しい景色を見つめながら、自然と手をつないで歩き出していた。二人の手はしっかりと繋がり、互いに温かさを感じていた。その瞬間、ただのライバルから一歩踏み出した友情の証がそこにあった。

「リリカ、これからもお互いに支え合っていこう。前世のことも、いつかきっと思い出せるよ。」

「うん、そうだね。私たちならきっと大丈夫だよ。」

　新たな友情を得たリリカは、次のステージに向けて力を蓄え、新たな一歩を踏み出すことを決意した。異世界での冒険はまだまだ続くが、彼女はステラと共に新たな道を切り開いていくのだった――。

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