第3話  ライバル登場⁉ 試される猫耳アイドルの実力!

 リリカの初めてのステージが終わり、彼女は少しずつ異世界での新たな生活に馴染み始めていた。ステージの感覚はまだ夢のようで、観客の拍手や声援がリリカの耳には鮮明に残っている。前世の記憶もぼんやりしたまま、彼女は自分がこの世界で何か特別な存在であることを少しだけ実感し始めていた。しかし、異世界のアイドル 活動は想像以上に厳しく、毎日が挑戦の連続だった。




 リリカは早速、メルヴィルの厳しいレッスンを受けることになった。歌唱指導からダンスのレッスンまで、すべてが初めての体験で、リリカの体力と精神力を試すものだった。休む間もなく課題が次々と与えられ、リリカは汗を流しながらそのすべてに必死で取り組んでいた。




「リリカ、あなたの動きはまだ硬いわ。もっとリズムを感じて、自然に体を動かしてみて。」




 メルヴィルの冷静な声が部屋に響く。リリカは息を切らしながら何度もダンスの振り付けを繰り返した。彼女の頭の中では、昨日のステージでの観客の笑顔が浮かび、それが支えになっていた。もっと上手くなりたい、もっと観客に喜んでもらいたい――その思いがリリカを奮い立たせた。




 そんな中、レッスンが一段落したある日、リリカはメルヴィルから驚くべき話を聞かされる。




「リリカ、次のステージではあなたのライバルが登場するわ。」




「ライバル? 誰ですか?」




 リリカは突然の知らせに戸惑った。まだデビューしたばかりで、誰とも競う気持ちはなかった。だが、メルヴィルの表情は真剣だった。




「彼女の名前はステラ。あなたと同じ猫耳メイド魔法使い。この世界では既に人気のあるアイドルよ。彼女はとてもプロフェッショナルで、きっと良い刺激になるでしょう。」




 リリカは心の中で不安が募った。ステラという名前は、どこかで聞いたことがあるような気もしたが、思い出せない。だが、メルヴィルが続けた説明により、リリカはそのステラという人物が自分とは比べ物にならないほどの実力者であることを理解した。




 数日後、リリカは次のステージの準備のために会場へ向かった。会場に到着すると、そこには既に多くの観客が集まっていた。ステージの隅には見慣れない人物の姿があった。長い水色の髪をなびかせ、輝く猫耳、堂々とした立ち振る舞いの女性――彼女こそがステラだった。舞い降りたばかりの天使ようだった。




「あなたがリリカね。初めまして。」




 ステラは笑顔でリリカに手を差し出したが、その眼差しにはどこか挑戦的な光が宿っていた。リリカも負けじと手を握り返す。




「初めまして、リリカです。よろしくお願いします。」




 ステラの目はキラキラと輝いており、そのカリスマ性にリリカは圧倒されそうになった。だが、自分もこの異世界での役割を果たすためにここにいるのだと気持ちを奮い立たせる。




 ステージが始まると、最初に登場したのはステラだった。彼女は堂々としたパフォーマンスを披露し、観客たちはその華やかなダンスと美しい歌声に酔いしれた。リリカはその光景を舞台裏から見つめながら、自分との差を痛感した。ステラの一挙一動は完璧で、彼女の表情、動き、全てが観客を引きつける魅力に満ちていた。




「次はリリカ様の番です。」




 レオンの声にリリカはハッと我に返り、深呼吸をしてステージに向かった。リリカが登場すると、観客は再び拍手で迎えてくれたが、その中にはまだステラの余韻が残っているようだった。リリカは緊張を隠しきれないまま、唇をかみしめた。




「皆さん、こんにちは! リリカです。今日は精一杯頑張りますので、応援よろしくお願いします!」




 リリカは笑顔で声を張り上げ、音楽が流れ始めると同時にダンスを始めた。しかし、動きはまだ硬く、ステラのように流れるような美しさには程遠い。それでもリリカは自分なりに精一杯踊り、歌った。観客の中にはリリカのぎこちなさを感じる者もいたが、それでも彼女の一生懸命な姿勢に応援の声が上がった。




 ステージを終えて戻ってきたリリカは、悔しさでいっぱいだった。自分のパフォーマンスがステラのそれに及ばなかったことは明らかだったからだ。しかし、ステラはリリカに近づき、励ましの言葉をかけた。




「悪くなかったわよ。最初は誰だってこんなものよ。でも、次はもっと良くなると信じてる。」




 その言葉にリリカは少しだけ救われた気がした。彼女の中には次への挑戦への決意が静かに芽生えていた。ライバルの存在が、彼女に新たな目標と力を与えてくれる。まだまだ道は険しいけれど、リリカはこの世界でアイドルとして、そして猫耳メイド魔法使いとしての自分を磨いていくことを誓った。




 異世界での挑戦は、始まったばかり。リリカは自分の道を切り開き、次のステージに向けて新たな一歩を踏み出したのだった――。


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