ナイト・オブ・ゴーレム〜星雲戦争〜

瀬名晴敏

プロローグ

 君達は、魔獣というものを見たことがあるかい?


 それは、僕達の住まうセカイにて最大の脅威だった生物だ。魔法の研究によって文明を発展させていた先祖達は、魔獣に対抗するために偽りの巨人ジャイアントゴーレムを開発。それらに武装を施して巨人騎士ゴーレムナイトとして運用することで、平和を守ってきていた。


 それが大きく変わったのは70年も前の事。遠い空の向こう、星の海から異なる文明がやって来てからだ。惑星フェイケースは最初に星外文明と接触したフラメビス王国の下で統一が行われ、いち惑星国家『フェイケース王国』として成立。200の星系・惑星国家で構成される銀河連邦の一部となった。


 新たに科学技術がもたらされ、巨人騎士はさらなる発展を見せた。銀河連邦加盟国の多くは人型ではない兵器で楽に魔獣を駆除出来るが、巨人騎士は魔法と共にフェイケース星という『世界』の誇るべき技術だ。偽りの巨人も宇宙空間にて活動するための機材として需要が高く、フェイケースはそういった魔法で作られた機械の輸出で財を成した。


 特に注目を浴びる様になったのが、二度に渡って起きた銀河大戦の事だった。ガルメニシア帝国とスロビア連邦の軍事侵攻に対抗するべくフェイケース王国軍は総数1万機の巨人騎士を展開し、フェイケース星系の環境を利用したゲリラ戦術によりガルメニシアの機動艦隊とスロビアの大艦隊を撃破した。その功績は高く評価され、連邦内での地位向上にも役立った。


 しかし、フェイケース王国成立から40年程が経った頃、ある星系にて超新星爆発が発生。銀河連邦を構成する国の一つであるエレディア共和国は、その周辺の国々とともに甚大な被害を受けた。我が国は被害が軽微だったのもあって数十億人もの難民を受け入れたが、500億は出たとされる難民の半分はエレディアに押し付けられた。


 無論、国力があるとはいえ最大の被害者であるエレディアに負担を押し付ける事に対して批判は多かった。でもエウロパ星雲を構成する国の多くがいち惑星上に複数の国家が存在する連邦制惑星国家であり、国力はいち国家によって統一された単一惑星国家や、星系そのものを国土とする星系国家に比して低かった。


 複数の星系で構成される大国エレディアは、すでに自国内に100億人もの難民を抱えていた。難民キャンプとして整備されたスペースコロニーも数が足りない状況下、エレディアは無責任な周辺国に苛立ちを見せ始めていた。フェイケース上層部はこれを危惧し、銀河連邦中央政府にも相談した。


 そして僕達の物語が始まるのは、宇宙暦124年9月、秋の訪れが始まった頃の事だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ナイト・オブ・ゴーレム〜星雲戦争〜 瀬名晴敏 @hm80

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画