第46話 関ヶ原の戦い

**シーン:関ヶ原の戦いを前にした夜、徳川家康の陣営**


家康は、高虎との会談が終わり、再び静かに考え込んでいた。彼のそばに家臣の本多忠勝が現れる。


**本多忠勝:** 「家康公、先ほどの高虎殿とのお話、よろしゅうございましたか?」


家康は静かに頷き、忠勝に目を向ける。


**家康:** 「うむ。高虎は我々にとって、これからの戦局において重要な存在となる。彼の城普請の技術、そして戦略眼は信頼に値する」


**本多忠勝:** 「確かに、彼の働きが我々にとって大きな力となるでしょう。ですが、家康公もまた、この戦いの行方をしっかりと見定めておられるはず」


家康は深く息をつき、静かに語り始める。


**家康:** 「忠勝、私のこれまでの人生は戦いの連続であった。織田信長のもとで戦い、豊臣秀吉のもとで力を蓄えた。しかし、今度の戦いはこれまでのものとは違う。私が天下を取るための最後の戦いとなるだろう」


忠勝は家康の言葉に静かに耳を傾け、彼の決意の強さを感じ取る。


**本多忠勝:** 「家康公がこれまで築いてきた道は、誰よりも堅実で確実なものでございます。この関ヶ原での戦いも、必ずや勝利に導くことでしょう」


家康は微かに笑みを浮かべ、忠勝に目をやる。


**家康:** 「お前の言う通りだ、忠勝。この戦いに勝てば、私の道は開ける。だが、油断はできぬ。石田三成や大谷吉継が相手だ。彼らは豊臣家のために命を懸けて戦うだろう」


---



物語は、脇坂高虎の視点を通して、天下の行方を左右する緊迫した時期を描く。彼は徳川家康の腹心として活躍し、会津征伐から石田三成らの挙兵に至るまで、刻々と変わる情勢に対応しながら、その知略を巡らせていく。


6月2日、家康の命を受け、会津征伐の準備が進められた。高虎は大坂城西の丸で行われる評定に参加し、各大名の動向や戦略を注視していた。この会議では、会津討伐の準備が進められる一方で、豊臣秀頼から黄金2万両と米2万石が家康に下賜されるなど、微妙な緊張関係が感じられた。高虎は、この恩賞が家康と豊臣家の微妙な力関係を示すものとして、心に刻んだ。


家康の出陣は6月16日。大坂城を離れる際、高虎はその背中に戦局の厳しさを感じ取った。家康が畿内を離れ、関東へ進軍していく中で、戦略上の重要な役割が彼に託された。彼は家康の命を忠実に守りつつも、常に石田三成をはじめとする豊臣側の動きに目を光らせていた。


そして7月2日、家康が江戸城に入る頃、三成は大谷吉継や毛利輝元らとともに挙兵を企てていた。高虎はこの報を聞いたとき、戦いの局面が一変することを直感した。三成が動き出せば、家康の会津征伐は大きく後退し、全国規模の戦乱が再び勃発することを意味する。家康が江戸城にいた頃、高虎は内心、徳川家の勝利を信じつつも、敵の策略に対して油断ならないと自覚していた。


7月24日、下野小山にて鳥居元忠の急使により、三成らの挙兵が伝えられる。高虎は、この瞬間こそが徳川家の運命を左右する分岐点であると感じた。小山評定で家康は即座に会津征伐を中止し、徳川家の軍勢を反転させて西上を決断。高虎はその指示に従い、冷静に対応を進めていく一方で、上杉景勝の動向も気にかけていた。景勝が最上義光との戦いに方針を転換したことで、徳川軍と上杉軍の直接対決は避けられたが、依然として不安定な情勢が続く。


高虎の胸中には、戦略家としての冷静な判断と、一瞬の油断が命取りになるという緊張感が常に渦巻いていた。

**シーン:関ヶ原の戦い、徳川家康の決断**


 翌朝、霧がかかった関ヶ原の戦場。家康は馬にまたがり、全軍を見渡す。大軍の動きが鈍く、戦場は緊張に包まれていた。


**家康(心の声):** 「この戦いが私の命運を決める。すべてはこの一瞬にかかっている」


家康は手を挙げ、全軍に進軍を命じる。戦闘の音が響き渡り、家康は先陣を切って進む兵たちを見守る。戦況は予測通り進んでいるように見えたが、油断は禁物だった。


その時、家康の元に井伊直政が駆け寄ってきた。


**井伊直政:** 「家康公、大谷吉継の軍勢が我々の側面を突こうとしています!ご指示を!」


家康は冷静に考え、指示を出す。


**家康:** 「高虎に伝えよ。大谷吉継の軍を抑え、私の元へ報告を寄越せ。ここが勝負どころだ」


井伊はすぐさま命令を実行に移し、家康は再び戦場を見渡す。豊臣軍の旗が次々と倒れる中、藤堂高虎の軍が猛攻を仕掛けている様子が見える。


**家康(心の声):** 「これまでの全ての戦いが、この瞬間のためにあったのだ。私が天下を握るのは今、この時しかない」


---

 **木曽川・合渡川の戦い**


 8月21日。東軍は、福島正則を大将にした軍勢が木曽川の下流にある尾越から、池田輝政を大将にした軍勢が上流の河田から渡河を開始した。その目標は、美濃岐阜城主であり西軍に属している織田秀信の領地を奪取することだった。


---


**福島正則の陣中**


 福島正則は兵たちが木曽川を渡る様子を見つめていた。副将の一人、加藤嘉明が近づいてきた。


「正則様、渡河は順調です。敵の動きも今のところ大きな抵抗は見られません」

「うむ。秀信がどこまで抵抗するかだが、岐阜城は早急に落とさねばならぬ。我らの後ろには大垣城も控えておる。油断せず進め」


 加藤が一礼して去ると、福島は厳しい目で川向こうの岐阜城を見据えた。


---


**岐阜城内**


 岐阜城の大広間では、織田秀信が緊迫した顔で城の重臣たちと対峙していた。


「福島軍と池田軍がすでに渡河を開始したという報せが届いた。どうする?」

秀信の問いに、家老のひとりが進み出て言った。

「殿、ここで降伏すれば、我らの命は保たれましょう。しかし、抵抗すれば徳川勢の前に殲滅される恐れがあります」


 秀信は唇をかみしめた。若い城主としてのプライドと、戦局を冷静に見極める判断力が葛藤していた。


「私は…岐阜城を守る。この城を祖父・信長公の遺産として失うわけにはいかぬ。全軍を動員し、徹底抗戦だ!」


---


**合渡川の戦い**


 同じ日、合渡川にて、黒田長政、藤堂高虎、田中吉政らが軍を進めていた。黒田長政が軍旗を掲げ、馬上から指示を飛ばす。


「藤堂殿、ここで舞兵庫を抑えなければ、大垣城への進軍は不可能です。前線を固めよ!」


「任せておけ、黒田殿。舞兵庫の部隊は我が手勢で押しつぶす!」


 その声に応じ、藤堂高虎は前方へと駆け出した。彼の兵たちが西軍の布陣を突き崩し、合渡川を越えようとする。


---


**舞兵庫の陣**


 舞兵庫は険しい表情を浮かべ、目の前の戦況を見つめていた。


「黒田軍、強いな…だが、ここで奴らを食い止めねば大垣は危うい。全軍、突撃!」


 彼の指示で西軍の兵たちが黒田軍に向かって猛進するが、すでに黒田軍の勢いは止まらず、次々と西軍の陣地を突破していく。ついには合渡川を渡り、赤坂を占領するに至った。


---


**岐阜城の陥落**


 8月23日、岐阜城内。福島正則と池田輝政の軍勢が城門を叩きつけ、攻勢を強める中、ついに織田秀信は降伏を決意した。


「もはやここまでか…。城を明け渡すしかない」


 秀信は城門を開け、福島正則に降伏を告げた。


「秀信殿、見事な抗戦であった。しかし、今後は徳川方の命に従い、その身を委ねられることを望む」


 福島正則は冷静に言葉をかけ、岐阜城の占領が完了した。その後、岐阜城を落とした軍勢は、さらに合渡川から大垣城方面に進軍し、東軍の勝利へとつながっていく。


 この一連の戦いにより、西軍は大きな打撃を受け、東軍が天下を制する道筋が明確に開かれたのであった。


**キャスト案(続き)**


- **本多忠勝:** 阿部寛

- **井伊直政:** 窪塚洋介

- **石田三成:** 松山ケンイチ

- **大谷吉継:** ケンドーコバヤシ


この続編では、家康が藤堂高虎や本多忠勝との会話を通じて、関ヶ原の戦いに向けた決断を深めていく様子が描かれています。家康の冷静な判断と、その裏にある過去の戦いの経験が彼の行動に反映されています。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る