第32話 四国平定

 📜天正13年(1585年)の紀州征伐に従軍し、10月に湯川直晴を降伏させ、山本主膳を斬った。戦後は紀伊国粉河に1万石の領地を与えられた。猿岡山城、和歌山城の築城に当たって普請奉行に任命される。これが高虎の最初の築城である。同年の四国攻めにも功績が有り、秀吉から5,400石をさらに加増され、1万石の大名となった。方広寺大仏殿(京の大仏)建設の際には、材木を熊野から調達するよう秀吉から命じられている。


 紀州征伐が終息に向かう中、秀吉は戦後の処理と次の戦略に頭を巡らせていた。特に、紀州勢を撤退させた高虎の功績は大きく、秀吉はその戦略的洞察を高く評価していた。


 戦いの後、秀吉の陣営においても戦勝の宴が開かれていたが、秀吉は高虎を呼び寄せ、今後の戦略について語り始めた。


**秀吉**: 「高虎、君の功績は計り知れん。紀州の者どもを追い払ったその知恵と勇気、感服した。だが、これで終わりではないぞ。紀州を完全に制圧した今、次なる手を打たねばならん。君の助力をまた頼りにしたい」


**藤堂高虎**: 「ありがたきお言葉、秀吉様。この勝利も秀吉様の大戦略あってのこと。私ごときの力では到底成し得ぬものでございます。だが、もしお役に立てるのであれば、いかなる難局でもお任せください」


高虎は戦いの中で鋭い戦術を展開し、敵の虚を突くことに長けていた。紀州の撤退を促したのも、高虎が兵糧不足と敵内部の不和を巧みに利用した作戦によるものだった。秀吉はその洞察力に目を見張り、次なる戦でのさらなる働きを期待していた。


しばらく沈黙が続いた後、秀吉は微笑みながら再び口を開いた。


**秀吉**: 「次は四国じゃ。あの地を平定するのが我らの次なる課題だ。高虎、君の才覚を四国平定でも見せてくれぬか?」


**藤堂高虎**: 「四国ですか…。確かに、あの地の守りは堅固ですが、弱点もあります。小舟での奇襲を仕掛け、敵の海上補給路を断つことで崩すことができましょう」


 高虎の提案に、秀吉は満足げに頷いた。戦いの先を見据え、ただ勝つだけではなく、その先の国の安定をも考えた高虎の言葉は、秀吉にとって頼もしいものだった。


**秀吉**: 「うむ、さすがじゃ。四国も手中に収めた暁には、君にさらなる領地を授けよう。高虎、我が夢の天下統一のため、共に歩んでくれるか?」


高虎は深く頭を下げ、静かに応じた。


**藤堂高虎**: 「秀吉様のためならば、いかなる道でもお供いたします」


 こうして、秀吉と高虎は四国平定へ向けての新たな戦略を練り上げ、次の戦いへの準備を整えていった。高虎の知略と勇気は、再び戦局を大きく動かす鍵となることが確実であった。


 紀州征伐が終息し、次なる標的として四国平定が具体化していく中、秀吉は高虎を中心にさらなる作戦を練り上げていった。戦略会議が進むにつれ、秀吉の信頼は深まり、周囲の将たちもまた高虎の鋭い洞察力に敬意を抱いていた。


ある夜、秀吉の本陣で、戦の進捗を見守る大名たちが集う中、秀吉は再び高虎を呼び寄せた。彼は四国征伐に向けた具体的な戦略の展開について話し合うつもりだったが、その場で高虎から驚くべき提案がなされた。


**藤堂高虎**: 「秀吉様、四国の平定にあたり、もう一つ考慮すべき点がございます。それは、四国の内外にある盟友との連携です。特に、瀬戸内海を制圧することで、敵を海から孤立させることができましょう」


この提案に、秀吉は一瞬驚いたが、すぐにその狙いの深さに感銘を受けた。


**秀吉**: 「瀬戸内海を制すれば、海上輸送を完全に支配できる。敵の背後を突くにも理想的じゃ。高虎、さすがじゃのう」


高虎はその提案を続け、特に海戦での準備が重要であることを強調した。小舟による奇襲や港町への偵察、さらには海賊をうまく味方に引き入れることで、四国勢の弱点を突く戦術を考えていた。


**藤堂高虎**: 「また、四国勢は陸の守りに集中しておりますが、海からの攻撃には脆弱でございます。海上から圧力をかけ、敵を混乱させた後、陸路で本陣を攻めれば、効率的に四国全土を制圧できましょう」


その詳細な説明に、他の武将たちも静かに耳を傾けていた。高虎の提案は、彼らの多くが見逃していた点を的確に指摘していた。秀吉は再び満足げに頷き、さらに言葉を続けた。


**秀吉**: 「海を制すれば天下が見える。四国はその第一歩じゃ。高虎、お前の考えは的確じゃ。すぐに準備に取り掛かるとしよう。四国征伐はお前に大いに期待しておるぞ」


その夜、高虎は秀吉の本陣を出た後、部下たちと共に作戦の詳細をさらに詰めていた。彼の頭の中では、すでに次の戦いが始まっていた。敵の動きを予測し、兵站の整備や偵察活動に向けた準備が急ピッチで進められていく。


翌朝、秀吉の陣営では早くも四国平定に向けた動きが始まっていた。高虎は軍の編成を行い、精鋭部隊を率いて瀬戸内海へと向かう準備を進めていた。一方で、四国の大名たちもまた、秀吉軍の動きに警戒を強めつつあった。


そして数日後、四国の沖合での最初の戦闘が始まった。高虎の指揮のもと、小舟による奇襲作戦が見事に成功し、敵の補給路を断ち切ることに成功する。これにより、四国の守りは次第に脆弱化し、陸戦での決着が近づいていた。


**秀吉**: 「高虎、よくやった! この勢いで一気に押し切るぞ!」


四国の大名たちは次々と降伏し、秀吉の勢力はついに瀬戸内海を完全に支配するに至った。高虎の功績は、再び戦局を決定づける重要な要素となり、秀吉の夢である天下統一に向けて大きな一歩を踏み出すこととなった。


秀吉は改めて高虎を讃え、その功績に応じた領地の増加を約束した。高虎は感謝の意を述べつつも、さらなる戦いに備え、次の挑戦へと心を燃やしていた。


四国平定が成ったその日、高虎は静かに天を見上げ、次なる戦局を見据えていた。

 

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