最強の僕が主人公だと思っていたのに
くまたに
西野秋人編
第一話 僕の存在意義 1
「
「もう起きてるよ〜」
嘘だ。本当は爆睡していた。そしてこのまま寝ていたら中学校の入学式を遅刻していたのである。けれど中学生にもなってお母さんに起こされていると周りの人に知られたらどうなるか。なんて恥ずかしいことだ。とにかくお母さんに起こされるまで爆睡していたことがバレないように急いで制服に身を包んだ。大きくて体に合わない。動きづらいなこれ。
キッチンから朝食のいい香りがした。
「急がないとっ」
朝食の香りで僕は急がないといけないことを思い出した。
「いただきます」
「はーい。よく食べるのよ」
「それにしても秋人にはその制服は大きすぎるわね〜可愛いわよ」
「、、、」
お母さんはいつもこんな調子だ。ほんと恥ずかしいからやめてくれよ。
「ごちそうさまでした」
「はーい。洗い物は私がやっておくわ。入学式から遅刻したら恥ずかしいでしょ?」
「ありがとう」
ラッキー!入学式が始まるまで1時間を切った。なんか胸がゾワゾワする。友達できるかな?
「行ってきます」
「行ってらっしゃいお母さん秋人の晴れ姿しっかりとカメラに抑えるわよ〜!」
「、、、」
本当に恥ずかしい。
家から10分ほど歩いたところに僕がこれから通う中学校がある。
「おはよう諸君!」
校門の前では生徒会らしき人達が堂々と挨拶をしている。先輩達は挨拶を返している人が多いけれど初めての中学校に緊張している1年生の中には俯いたままの人もいる。
生徒玄関で、先生が1年生の名簿と教室、そして校内の地図が書かれた紙を手渡してくれた。
「あ、ありがとうございます」
僕は先程先生に手渡された地図を見ながら教室に向かう。
「うわっ」
地図を見るために俯いていたから、廊下で先輩とぶつかってしまった。
「おい1年!ちゃんと前見て歩け!」
「す、すいません」
僕は慌ててその場を立ち去った。
5分後
「ふぅ。やっと見つけた」
この学校大きすぎて地図を見ても全くわからなかった。
教室の中は小学生の頃に仲良かった人たちで固まっていた。小学生の頃僕と仲の良かった親友は少し離れた中学校に行ってしまった。だから僕はこの学校で友達作りを誰よりも頑張らないといけない。大事なのは第一印象。教室に入るときにみんなに聞こえるような声で挨拶をやりゃいい。
ガラララララ
「お!お、おはよ、う、、」
うまく言えなかった。その上なに言ってんだこいつというかおで見られてしまった。最悪だ。もう無理かもしれない。
「はぁ、」
入学式の日からやらかした僕は当然友達もできず気がつけば三ヶ月の月日が過ぎていた。友達もいなければ外に出てすることもなく僕は学校に行く以外には外に出なくなり引きこもりとなった。
「秋人~!そろそろ髪を切ったらどう?」
「え~、」
「え~じゃないの。髪が長すぎると相手に悪印象を与えちゃうよ」
「わかったよ。でも僕お金ないよ?」
「ならお金をあげるわ。これからも時々外に出るなら毎月お小遣いをあげるわ」
「え?まじ?」
「まじまじ」
お母さん距離感友達かよ。
そうか。僕に友達がいないから気を使ってくれているんだ。お母さんを心配させないためにも早く友達を作らないとだな。でも、怖い。入学式でのトラウマが蘇る。どうしたらいいの?
だめだ。悪い方向に考えてしまった。頭が痛い。外の、空気を吸うのも兼ねて髪を切りに行くか。
「ここ、だよな?」
お母さんに教えてもらった美容室に来た。そういえばどんな髪型にしてもらおうかな?緊張で中に入れずに店の前をぐるぐるしていたその時
「あの〜どうかされましたか?」
定員さんに心配そうな顔で見られていた。
「あ!あの、髪を切ってもらいに来ました」
「名前を聞いてもいいかしら?」
「秋人です。
「あ〜はいはい予約してくださった!」
「え?」
よく分からないけどお母さんが予約しておいてくれたのだろう。
「とりあえず中に入ってちょうだい」
そう言って僕を店の中に入れてくれた。
「ここに座って〜」
「あ、はい」
今まではお母さんと一緒に髪を切りに来ていたからドキドキする。
「どんな髪型にしよっか?」
「え、え〜っと、おまかせにしてもらっていいですか?」
「分かったわ。任せてね。おばさん本気出しちゃうよ!」
そこから沈黙が続き約1時間後
「よし完璧!秋人くんどうかしら?もう少し切りたいところとかある?」
「いえ大丈夫です。ありがとうございます」
「そう。なら最後に髪を洗うわよ」
「はい」
「椅子倒すからね〜」
人に頭を洗ってもらったのは久しぶりだな。なにか落ち着く。今日外に出てきて良かったかもしれないな。
「椅子起こすよ〜」
どうやら終わったようだ。定員さんは椅子を起こしてそのままドライヤーで頭を乾かしてくれた。
「はい終了。お疲れ様」
「ありがとうございます。お代はいくらですか?」
「中学生は、4000円ね。払える?」
「はい払えます」
そう言ってお金を支払った。
「また来てちょうだいね」
「はい。また来ます」
本当にまた来たいと思った。
1人で行くにはハードルが高かかった美容室をコンプリートした僕はもう無敵かもしれない。僕はこのまま本屋さんに向かった。
引きこもり生活はすることがなくて暇なので暇つぶしとしてなにか買いたかった。
「会計は8500円となります」
ついつい買いすぎてしまった。けれど僕にお金の使い道など暇つぶしになるものを買うだけだからこれでいい。
そんなことを考えながらお金を支払い店を出た。
今日は日曜日だし、明日からまた学校か。嫌だな。いつもならもっと憂鬱だけど今日は少しだけマシな気がした。
「楽しかったな」
つい本音が零れた。このまま学校生活も楽しくならないかな?
そこまで世界は甘くない。けれど、もう少し頑張るか。少しだけ勇気が出てきた。
ーーーーーー
1話です!ここまで見てくださった方ありがとうございます。これからも頑張って書いていこうと思います。良かったらこれからも読んでくれると光栄です!
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