第一話 世界の終焉、そして新たなる旅立ち
世界大陸 ジブ王国 最果て村
――
俺、フィルド家の長男アストロン・フィルドは今日も幼馴染のエルメス・カイレンとチェスをする。
「ううぅ…ロンは強すぎるよぉ」
情けない声だ。すこし、ハンデをしてやったのに。
「おいおい、ハンデはくれてやっただろ。」
エルメスはハンデがあるのに負けたことに、しょんぼりしてる。エルメスの強さは弱いとは言わないが、手ごたえがない。
そして隣から、観戦していた妹ラナ・フィルドがニコニコし、
「お兄ちゃんが、強すぎるだけだよ。それに、お兄ちゃんにハンデなんか意味ない
っての!」
と自慢げに話す。
俺がやっていたハンデとは、ずばり目隠しチェスだ。実際の戦場は普通のチェスのように、すべての駒が見えるわけではない。駒はいつどこに動くか予想しながら、戦う。俺は兵士というより、軍師向きだ。俺の体力から考えて、前線で戦うなんて、ありえない。
「お兄ちゃん、鑑定、まだかな?準備遅いね。」
「人生を決める鑑定だぞ。そりゃ、準備もかかるだろう。まぁ、気長に待て。」
鑑定。それはこの世界において自身の人生そのものを確定させるものだと言われる。鑑定は人間の生まれ持つアビリティを水晶で調べることができる。生まれてから、5歳まで、アビリティの使用は禁止されている。厳密に言うと、儀式の水晶玉で何のアビリティか判明してから使えるようになる。これは多分、アビリティの暴走を防ぐためだろう。
「ロン、次はスピードチェスだぁ!」
うん?正気か?どう考えても、目隠しでやれば、駒まともに動かせないだろうが!
と心の中で叫ぶ。そうだ。ここは少しエルメスを脅してみるか。
「本当にいいのか?手加減できんぞ?フルボッコになるぞ。」
「なら容赦なく行くぜぇ!」
まじか。まじでやるのか。これは流石に負けかと思ったとき、
「お兄ちゃん!エルメス!儀式の準備が出来たって。早く!」
お。来た。いいタイミングだ。
「よし!チェスはここらで終わり。ほらさっさと、儀式場に行くぞ。」
「ロン、待って~」
足がすこし震えてる。緊張してる証拠だ。これでどんなアビリティなのかはっきりわかる。それに、アビリティによっては、みんなの役に立てるかもしれない。できれば、軍師向きのアビリティがいいなぁと思いながら、歩き出す。まさに、人生に一番大切な日だ。だから、どんな結果であっても甘んじて受け入れよう。駆け足で、儀式場に向かった。
――――――村の儀式場にて――――――
「では、ラナ・フィルドよ。水晶玉の前に来なさい。」
「はい。」
儀式場は村の重鎮ばかりだった。まぁ、人の人生を決める大事なことだもんなと思い、一人で納得する。水晶の前にいるのはやさしげな牧師、というか今回の儀式場は教会で行われている。最初はラナからか。歳の若いものから行われるらしい。ってことは俺が一番最後か。
「手で水晶玉に触れなさい。」
「はい。」
ラナのまわりの大人たちも慣れた行事であるが、緊張している。顔を見ると、丸わかりだ。ラナ、お前ならきっと大丈夫。と心の中で祈って、水晶の結果を待つ。気のせいか、この結果の待ち時間が長く感じる。
ラナの結果が出た。
~アビリティ~
ラナ・フィルド 5歳 女 アビリティ
スキルを目で見るだけで、限りなくスキルを覚えられる。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「おおぉ!」
大人たちの歓喜の声が教会で響く。無限の技巧か…
聞いたことがないな。通常タイプのアビリティじゃなく、特殊タイプか。流石、俺の妹。
「やったぁ…」
ラナの安堵の声がした。俺も安心した。
「やったな!ラナ。」
「うん!」
なんて、純粋な返事だ…
目がウルっと来てしまったが、まだ儀式は続いている。次はエルメスか。
「エルメス・カイレンよ。水晶玉の前に来なさい。」
「はい。」
エルメスは冷静で、仲間想いなやつだ。お前ならきっと大丈夫。
「手で水晶玉に触れなさい。」
「はい。」
~アビリティ~
エルメス・カイレン 7歳 男 アビリティ 召喚士
魔物、魔獣を召喚できる。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
パチパチパチパチと大きな拍手が教会で響いた。召喚士はそれなりに強い。意外とレアっぽいから、国営の事業やら、国に重宝されることが多い。うん、すごいな。見直した。ちょっとハズレを引いたら、冷やかしてやろうかなと一瞬思ったが、もし俺がハズレを引いたらと思うと…
「最後、アストロン・フィルドよ。水晶玉の前に来なさい。」
ビクッとした。少し、安堵で自分の鑑定を忘れそうだった。やっぱり、村のお偉いさん方が多い、シャキッとしないと。
「はい。」
心臓がバクバクしてきた。こんな緊張したのは久しぶりだ。足の震えは大人たちにバレないようになんとか押さえつけてある。一歩一歩を噛みしめて水晶玉に近づく。大丈夫。俺もなんとかなる。そう信じ切って、手で水晶玉に触れる。
すると、これが多分、世界初の事件が起こることになる。結果は、
~アビリティ~
アストロン・フィルド 7歳 男 アビリティ ????
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~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
は?おい、おいおいおい。
どゆこと? 「???」って何なんだよ!
お偉いさん方がざわざわと騒ぎ立てる。
「これはどういうことなんじゃ?」
「アストロン君、これはアビリティなのか?」
それ、俺が知りてぇ。それにアビリティの詳細が知らない言語?みたいになってよめないし。まわりの反応はまさに鳩が豆鉄砲を食ったようだった。
「牧師さん、これってどいうことなんでしょうか?」
牧師さん、完全に放心状態。おーいと声をかけてやっと、正気に戻った。
「アストロンさん、水晶玉の不具合かもしれません。もう一度、水晶に触れてみてください。」
もう一度、触れてみる。結果は、変わらずそのままだった。おいおいおいと周りの騒ぎがうるさくなってきた。
「牧師さん、この水晶玉って壊れてたりします?変えたら、ちゃんとした結果が変えると思うんですが。」
「そ、そうですね。もう一度水晶玉を変えてやってみましょう。」
こんなことは牧師にとってはじめてなのか、牧師は冷や汗をかいていた。教会の奥にある備品の水晶玉を取るため牧師は汗をハンカチで拭きながら、走っていった。
すると、牧師が行ったところをすかさず、エルメスが俺に話しかける。
「これって、どういうことなんだ?なんか小細工でもした?」
「そんな大事なことで小細工出来ねぇよ、俺にも分からない。」
誰か。本当に今の状況を教えてくれ。このままだと、母さんや村の人になんて言われるか…
「備品の水晶玉、持ってきました!」
ドンドンと小走りに牧師がやってくる。すると村長が、
「早くするのじゃ!!!遅いわ!」
鼓膜が破れそうな声量で年老いた枯れ切った声が教会に響く。はぁ、教会は構造上、音が響きやすいのか…
「では水晶玉に触れてください。これは新品なので大丈夫です!」
牧師は言い切った。本当にわけのわからない結果になるのではないかと俺は心配、でもここで逃げてしまってもダメ。そして俺は一呼吸置いてから、触れた――
――儀式終了後――
はぁ。これでため息を何回ついたのか。人生、終わった。結果は、圧倒的謎のハズレ。
いや、望んでいたものでもなく、分からなかったのだ。
~アビリティの儀、結果~
アストロン・フィルド 7歳 男 アビリティ ???
ラナ・フィルド 5歳 女 アビリティ
エルメス・カイレン 6歳 男 アビリティ 召喚士
どうして、「???」なんだよ!おかしい。何かが間違えている。おかいしのは俺か?水晶か?それともこの世界か?
エルメスは召喚士、ラナは無限の技巧。俺と比べてちょっと、強すぎませんか?
「なぁ、俺のアビリティが無いってことは無いよな?」
でも、実際は無いようなものだ。鑑定でアビリティが分かるまで、使ってはいけないのが、この国の法だから。
「お兄ちゃん、まだ分からないって。それに、アビリティなしって決まったわけじゃないし。」
「ラナの言うとおりだな。ロン、気にすんなって、冷静に。」
ふん。いつも冷静ぶってるエルメスが落ち着いて言われても、その日は全然落ち着けかった。結局、俺のアビリティは分からずじまいまま、日が暮れた。
■■■■■■■お礼・お願い ■■■■■■■
読んでいただきありがとうございました。
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