食欲のディストピア

栗頭羆の海豹さん

味だけは最高の食の街

転生体

「つまり、ワシ・・・僕に町づくりと戦争ゲームをしてもらうということか?」


「そのとおーり!!肥満ひまふとし君、君には僕、暴食の邪神グラの駒として頑張ってもらいたいんだよね。」


 此処は天界。

 暗く黒い空間からは異質な神聖さが充満していました。

 耐性のない魂はこの空間に入った時点で発狂、魂が崩壊してしまう程の危険な空間であり、耐性を持っていても長居はするべきではない場所だった。

 そんな空間の主に呼ばれた魂が一つあった。


 彼の名は肥満太。

 この異質な天界に完全耐性を持って産まれた稀有な魂の持ち主でした。

 老衰して悔いなく死んだ彼を待っていたのは綺麗な女神でも、何処か狂ってしまいそうな危険な香りを漂わせる可笑しな女神でした。

 そこで告げられたのが、神々のゲームの話でした。

 神々の駒としてある世界に転生する代わりに来世は望む世界に望む立場という色々と好待遇の転生が出来るというものだった。

 だから、誰もが大抵は二つ返事で了承する。

 肥満太も皆と同じで了承したが、理由は違っていた。

 面白そうだから。

 たったそれだけが了承理由だった。


「じゃあ、早速、転生後の肉体制作といこうか。」


「ゲームみたいだ・・・」


「君たちが作りやすいように世界にあった作り方にしているからね。・・・好きでしょう、ゲーム。」


 太の目の前には透明なディスプレイが出た。

 まるでVRゲームの様な感じだ。

 そこには生前とは違うまるでマネキンの様な大量生産品な顔と身体が映っていた。


「それがデフォルトね。そこから自分好みにカスタマイズしてね。あぁ、性別も変えれるからね。」


「男性で。」


 100年足らずの人生だったが、ずっと男性体で生きてきたのだ。飽きたから女性体で生きたいとなるには自分として早い気がする。


「そこで色々と肉体のメリット、デメリットを決めてね。」


「メリット、デメリットね・・・」


 ステータスみたいな分かりやすいものはないが、動きや肉体強度など様々な表示されていない数字あるようで、それを仄めかす説明がなされていた。

 例えば、体重。

 適正体重。何もない。鍛えれば強くなり、衰えれば弱くなる。

 痩せ型。俊敏性に補正が上がり、体力減少、肉体強度が脆くなる。これはその後、体重が増えたとしても変わらないが、上昇補正が無くなる。つまり、身体が脆い身体だけが残るのである。

 肥満体型だと痩せ型の逆、肉体強度があるが、俊敏性、体力が減少する。これも痩せたら、遅く動けない体が残るのである。

 グラが言うには筋力に補正があり、デメリットの少ない筋肉質か、俊敏性と体力に補正があるアスリートを選ぶ人が多いようだ。


「じゃあ、僕はこれにしよう。生前も100キロ以上のデブだった人しか選べないって言うのも面白い。」


「え?!・・・本当にこれで良いの?今まで選んだ子いないよ。僕たちもネタで入れているだけのものだけど良いの?本当に?」


「別に体型を昔から気にした事ないんですよ。成人病は怖かったけど。」


 太が選んだのは醜い肉塊。

 要するに言えば肥満体型の完全版である。

 肉体強度、パワーに最大補正が掛かる代わりに俊敏性が最低値になるものである。

 何故か、体力に減少も、上昇もついていないが、最もデメリットなのが、その見た目である。

 ただのデブではない。

 その身体を見たものは本能的に醜いと感じるようになるのである。

 このデメリットで誰も選びたくないと思うのである。

 それにこの体型は痩せる事は出来ない。

 こんなデメリットの代わりに他にも色々とメリットが付いているが、目立ったメリットはこれだった。

 再生能力。

 この後、選ぶ能力付与前に付ける事が出来る特殊能力である。


「それで顔はこれね。」


「オイオイオイ!君ね!ゲテモノ人を目指しているの?!それも誰も選んだ事はないよ!」


「へぇ、こんな良さそうな顔なのに、皆見る目がないね。」


 太が選んだ顔は地獄悪の顔

 これは極悪の完全版の顔である。

 誰も君を見ただけで恐怖して畏怖する顔である。

 これを選んだ者がいないのは当たり前である。醜い肉体のような極端な肉体を選んだ者しかこの顔等は選べないのである。

 睨んだ者に怯みを与えて必ず隙を生まれさせる事が出来る。

 臆病者なら蛇に睨まれたカエルの様に死を待つだけでの者になる。

 そして、これは地獄悪の顔だけの効果である。

 ここに醜い肉塊が合わさると更なる効果を発揮する。

 それはSAN値減少である。

 この顔と身体を見続けるとSAN値が減り続けて発狂して、最後には死ぬ。

 それがこの掛け合わせの能力だ。どんなに強靭なダイアモンドの心をしていても、少し少し削っていくのだ。


「良いね・・・他者を気にせず、我が道を行く。他者から勝手に嫌悪されても恐怖されても死んでいっても良いなんて僕の駒に相応しいよ。最高だね。肥満太!さあ!次は能力だ!どうなるかな?!」

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