引きこもりは世界の頂点を目指す。
@wata098765
第1話 引きこもりヒーローになる
コンビニの冷気が、長年の引きこもり生活に慣れきった僕の体を震わせた。深夜のコンビニは、人影もまばら。陳列された商品を無目的に眺めながら、冷蔵庫から缶コーヒーを掴む。
「…こんな時間にコンビニなんて、俺も変わっちまったな」
自嘲の笑みがこぼれる。10年前、中学時代にひどいイジメに遭い、それからずっと部屋に閉じこもっていた。外の世界との繋がりを断ち、ただただゲームとネットに没頭していた。
そんな僕が、なぜ今、コンビニに立っているのか。それは、少し前の出来事が原因だった。
コンビニを出ると、小雨が降っていた。傘も持たずに外に出てきたことを後悔しながら、コンビニ前の駐車場を横切ろうとした時だった。
「おい、コイツ金持ってねぇだろ!」
男の声が響く。振り返ると、数人の高校生が別の高校生を囲んでいた。その様子は、まるで10年前の自分を見ているようだった。
咄嗟に、僕は駆け寄った。
「ちょっと待てよ!」
高校生たちは、こちらを不審そうに見てくる。
「何だよ、お前」
「ケンカはダメだろ」
反射的にそう言ってしまう自分が情けなかった。しかし、このまま見過ごすわけにはいかなかった。
「…俺、昔いじめられてたんだ。だから、お前らの気持ちはわかる」
そう言うと、高校生たちは一瞬、言葉を失った。
「でもさ、暴力で解決することなんてないだろ」
僕は、そう告げると、囲まれていた高校生の方へと歩み寄る。
「大丈夫か?」
僕は、そう尋ねると、その高校生はうつむいたまま何も言わなかった。
「…もし、俺でよければ、話を聞いてやるよ」
そう言うと、高校生はゆっくりと顔を上げた。
「…ありがとうございます」
彼の瞳には、複雑な感情が渦巻いていた。
その夜、僕はその高校生と近くの公園で話し込んだ。彼は、自分と同じように、学校でいじめられているという。話を聞くうちに、過去の自分と重なる部分が多く、胸が締めつけられる思いがした。
「…俺にも、何か力になれることがあれば…」
そう呟くと、高校生は僕の方を見て、少し笑った。
「…ありがとうございます。でも、もう大丈夫です」
彼は、そう言うと、僕に深々と頭を下げた。
公園を後にする時、彼は僕にこう言った。
「…あなたは、僕のヒーローです」
その言葉に、僕は衝撃を受けた。
「…ヒーローなんて、そんな…。」
僕は、そう呟きながら、公園を後にした。
夜空を見上げながら、僕は思った。
「…もしかしたら、俺にも、何かできることがあるのかもしれない」
10年間、部屋に閉じこもっていた自分。しかし、今日、僕は一歩踏み出した。
そして、その夜、僕は決意した。
「…もう一度、世界に飛び込んでみよう」
そう思った時、目の前に一人の男が現れた。
「…面白い子だな」
男は、そう言うと、不気味に笑った。
その男こそ、後に僕の師匠となる人物だった。
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