偽令嬢の訳ありオークションカタログ　エメラルドは出会いを導く

白瀬あお／富士見L文庫

　ガス灯のやわらかな明かりが、石畳の街路をぽつぽつと照らす夜。

　王都の一角に、きらびやかに着飾った者からそうでない者まで、誰もが期待を胸にこぞって訪れる邸宅（タウンハウス）がある。

　出迎えるのは威風堂々としたテイルコート姿のオークショニアと、仲間たちだ。

「ようこそ〈ハウス〉へ。今宵（こよい）もあなたにぴったりの品が、あなたの元へ導かれることでしょう」

　仮面をつけ、番号の書かれたパドルを手にして席につけば、小気味よいハンマー音とともに絢爛（けんらん）たるオークションの始まり。

　彼らの手にかかればどんな逸品にも最大限の価値が与えられ、作品にふさわしい持ち主へ引き継がれていく。

　その、高揚に満ちた華やかな舞台の裏には。

　彼らの片腕ともいうべき、ある特別な目を持つ少女の存在があるという――

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