第3話 決断

「愛って何なんだろう?なぜ人は愛を求めるのか…。愛がなければ生きていけないのかもしれない。いや、愛がなくても生きていけるかも…たぶん。」

「ちづる!あたし決めた!今の彼氏と続ける。先輩とは今まで通り先輩と後輩で…」

「んー…リナが納得してるならいいけど…。でも愛人だよ!あ、どっちも愛人だね(笑)。彼氏が離婚してくれるとは限らないし、あんたの彼氏、めちゃくちゃ束縛強いじゃん。それで本当にいいの?」

「束縛ねぇ…やっぱり強いよね?」

「女友達とも遊びに行けないなんて強すぎだよ!行けても彼氏付きなんて普通じゃないと思うよ。」

「歳が離れてるから心配なんだと思う。それに彼の元カノが不慮の事故で突然亡くなったの。それで、大切な人がいなくなるのが怖いんだって…」

「それだけかな?でもそれって、元カノ引きずってない?」

「え?」

「彼氏、リナのこと本当に好きなの?リナの中にいる元カノのことが好きなんじゃないの?」

「ん?ちづる…あたしの中にいる?あたしはあたしだよ!」

「あっ!ごめん!言っちゃった…」

「あたし、ちづるのことで知らないことなんてないはずだけど…。全く理解できないんだけど、どういうことなの?」

「ん?」

「あたしはリナじゃないの?」

「リナはリナだよ。ただ…リナさぁ、彼氏から元カノのことで何か言われたことない?」

「何かって?」

「元カノに似てる、的な…」

「写真見せてもらったけど、顔は似てなかったよ。あっ!でも、字がそっくりでビックリしたかな。」

「あるじゃん!」

「え?字が似てるから何なの?」

新しい事実が発覚!!


「ねぇ、ちづる!! 何なの!! ちゃんと教えて!!」


リナはちづるに迫る。その瞳は焦燥感と不安で揺れていた。


「リナ…。あんまりこういう話、好きじゃないと思ってたから言わなかったんだけど…。実は、私、ちょっとだけ視えるんだよね…。幽霊とか…。アハハハ。」

ちづるは無理やり軽く振る舞おうと笑ったが、瞳には少し影が見えている。


「聞いてないよ…。」

リナは目を見開いた。



「だって、言わなかったもん。」

ちづるは肩をすくめた。



「ちづるとは高校生からの付き合いなのに…なんで言ってくれなかったの?」



「だって、リナはそういうの苦手でしょ? 言っても怖がって信じないと思ったからさ。」



「ごめん…。確かに信じないかも。でも…今なら信じるかも…。」

リナの表情は曇っていた。何かが彼女の中で動き始めていた。



「まぁ、私のことは置いといて…。問題は、リナに元カノがいるって話よ。」



「え? あたしに元カノが…とり憑いてるってこと?」



「そんな感じじゃないけど…。元カノはちゃんと成仏してるから心配はいらないよ。ただ…彼女の思いがリナにシンクロしてるんだよね。だから、リナは彼女と一緒に恋をしてる感じ。」



リナは少し驚いた表情を浮かべたが、すぐにそれは納得したような表情に変わった。

「それって、あたしなの? でも…なんとなく分かる気がする。」



「何か心当たりがあるの?」

ちづるが問いかけた。



「うん…実は、彼と元カノのお墓参りに行ったことが何度かあって…。その度に、訳も分からず涙が出てくるんだ。怖いとか悲しいとかじゃなくて…。最初は自分でも驚いたけど、何度も繰り返すうちに慣れちゃって…。彼も特に何も言わないから、あんまり深く考えなかったの。」



「彼、本当に何も言わないの?」ちづるの眉が寄った。



「うん…実は彼も霊感が強いみたい。だから、あたしも気付いてた。あたしは…とり憑かれやすい体質らしいの。」



「なんだ、そういうことなら話が早い!」

ちづるは肩の力を抜いたように笑う。



「ちづる!! それ、どういう意味? てか、話がどんどんズレてない?」



「いやいや、だからさ、もうちょっと普通の人と付き合った方が良いんじゃない?」

ちづるは悪戯っぽく笑みを浮かべた。



「ちづる!! まとめすぎじゃない!?」

リナは呆れたように叫んだが、心の中では不思議と安堵感が広がっていた。

彼女は、これから自分の人生が何かしら変わることを予感していた。


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運命の揺らぎ 星谷りな @1492abc1492

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