第3話 私の中の"誰か"と恋をしていた


(まじか?どーする、あたし。彼と先輩…。)


愛って何なんだろう?なぜ人は愛を求めるのか…。

愛がなければ生きていけないのかもしれない。

いや、愛がなくても生きていけるかも…たぶん。


「ちづる!あたし決めた!今の彼氏と続ける。先輩とは今まで通り、先輩と後輩で…」


「んー…リナが納得してるならいいけど…。でもさ、どっちも愛人じゃん!彼氏も先輩も、、既婚者ってどーなの!?

彼氏が離婚してくれるとも限らないし、あんたの彼氏、めちゃくちゃ束縛強いじゃん。それで本当にいいの?」


「束縛…やっぱり強いよね?」


「女友達とも遊べないとか普通じゃないよ。しかも遊ぶのに彼氏付きって!」


「歳が離れてるから心配なんだと思う。それにね、彼の元カノが不慮の事故で亡くなってて…大切な人がいなくなるのが怖いんだって。」


「それだけかな?…てか、それ、元カノをまだ引きずってるんじゃない?」


「え?」


「リナさ、彼氏…本当にリナのことが好きなのかな?もしかして、リナの中にいる“元カノ”が好きなんじゃない?」


「ちづる…あたしの中に…いる?あたしはあたしだよ!」


「…あっ、ごめん!言っちゃった…」


「ちづるとは高校からの付き合いなのに…なんで黙ってたの?」


「リナ、そういう話苦手そうだったし…信じないと思って。オカルト的な見えない世界」


「……でも、今なら信じるかも。」


リナの瞳は、揺れていた。

何かが、自分の中で確かに動いているのを感じていた。


「問題はね、リナが“彼の元カノ”と一緒に恋をしてるってこと。」


「え…まさか、とり憑いてるってこと?」


「いや、とり憑いてはないよ。彼女の思いが、リナにシンクロしてるだけ。

だからリナは、自分でも気づかないうちに“二人分”の恋をしてる。」


「でも…分かる気がする。

彼と元カノの墓参りに何度か行ったけど…訳も分からず涙が出てきて…。悲しいとか怖いじゃなくて、勝手に溢れてくるの。何度も繰り返すうちに慣れちゃった。」


「彼、何も言わないの?」


「うん…でも、彼も霊感があるって言ってた。私、とり憑かれやすい体質らしい…」


「なーんだ、それなら話が早い!」


「ちづる!?まとめすぎ!」


ちづるは悪戯っぽく笑った。


「だからさ、もうちょっと普通の人と付き合ったら?」


「ちづるーっ!それ言ったら終わりでしょ!って普通の人ってなんなん??」


二人の笑い声が、静かな部屋に広がっていった。

リナの心の中にあった重たい霧は、少しずつ晴れ始めていた。

そう。きっと、これから何かが変わる。

彼女はそれを、もうちゃんとわかっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る