第17話 オーバーキル!?
「アレって魔王の一撃も無効化出来るんだ?」
「何のこと? ナルコなんとかって言ってたヤツ?」
「そう、それ!
ナルコなんとかとか、アインなんちゃらとか! 意味不明な単語の正体は羊の魔王の能力であるらしい。アレも魔王の一撃だったとは。虎や猿は最強奥義みたいなノリで使ってきたが、魔王ごとに色んなこだわりとかがあるのかもしれない。でもなんで、羊の兵隊が魔王の技を使えるんだろう?
「アレを食らうと問答無用で体が動かなくなる。それを一回食らっただけで、見切って防ぐなんてね。」
「なんとなくイヤな予感がしたから備えただけさ。」
最初はパンチに仕込まれた爆裂魔法を防いだつもりが金縛りを食らってしまった。あれがなければ二回目は防げなかっただろう。対処出来たのは、一回目の時に犬の魔王が助けてくれたおかげでもある。
「それよりもアレも魔王の一撃?」
二カ所出現した黒い染み。アレも間違いなく魔王の一撃による物だと思う。超常的な力で一気に押しつぶした様に見える。
「一応企業秘密だけど、再生が追いつかないようにオーバーキルした、とでも言っておくよ。」
「オーバーキル!? なにそれ、恐い。」
ヤツらは羊の魔王の眷属。致命傷を負っても、体の部位が欠損しても
「とんだ邪魔が入ってしまった。いや、逆かな。羊の悪巧みを利用して、勇者と戦おうとしたんだし。」
「はは、そういえば戦ってる途中だった。もしかして、続きをするつもりなんか?」
「いや、やめとく。なんか、冷めちゃったし。それにアンタの仲間もやってきたから再開は無理そうだ。」
魔王が言うので見てみると、ファルがやってくるのが遠目に見えた。このまま喧嘩の再開かと思いきや……冷めたからやめるとか言ってきた。俺としてはホッとした。あんなワケワカラン染みを見せられたら戦意が喪失する。オーバーキルさせられたらイヤだ。
「さすがに二人がかりは厳しいのか、アンタでも?」
「別に~。二人くらいなんとかなると思うけど、俺、タイマンの方が好きなんだよね。」
「ああ、そう……。」
不良とかチンピラ的な考えだな。根っからの喧嘩好きのようだ。性根としてはウネグとか同じだな。アイツとは気が合いそうな感じだ。犬と狐だしな。
「じゃあ、今回はこれでお開きにしようか。またいつか、この続きはまた今度って事で。」
犬の魔王はこの場から去ろうとスタスタと歩き始めた。その先を見てみれば、例の怪しい三人組も来ている。ヤッパリ、魔王の仲間だったのか。でも魔族ではなさそうだ。アイツらは何者なんだろう? 魔王との関係性が気になる。
「あ、そういえば、この偽物君にもよろしく言っといて。今度また会おうって。」
帰り際に振り返りタニシを指差す。やっぱり同じ姿をしたコボルトだから気になるのだろうか? だが、タニシからしたらたまったものじゃないだろう。だって魔王に目を付けられたんだから。
「じゃあ、今度こそ行くよ。また近いうちに合うことになるはずさ。」
魔王は仲間と合流すると転移魔法で消え去った。これで消え去った方法も判明したわけだ。まあ、犯人ではなかったけどな。
「おい、随分と仲が良くなったみたいだな? 相手は魔王だってのに。」
「魔王ってのも、色んなヤツがいるんだよ。今回もそうだ。羊や虎みたいにあくどいヤツもいるし、犬や猿みたいに話のわかる奴もいるってことさ。」
「やれやれ。お人好しな勇者なこった。世間のヤツらが知ったら、えらい騒ぎになるぜ。特にこれから行く聖都なら、確実に問題行動だぜ。」
魔族を倒すことなく、無条件で立ち去らせた。クルセイダーズの人間なら文句の一つくらいは出てくるだろう。しかも教団の本拠地である聖都なら、一般人でも魔族に対しての風当たりは強いだろう。それを見越してファルは警告してくれているのだ。感謝しておきたいところだが、俺は相方の期待に応えられるかどうかわからない。
「何はともあれ、事件は一件落着、被害者は手遅れで助けられなかったが、これ以上被害は出ないはずだ。」
「そうだな。羊の魔王も同じ場所で繰り返すほど、馬鹿じゃないだろうし。」
念のためにクルセイダーズへ警備隊派遣を要請する、とファルは付け足した。確かに警備の目があれば防止策にはなるだろう。ここには独自に募った自警団くらいしかなさそうだったし。
「ワハッ!? ココはどこでヤンス?」
「目覚めたか? もう事件は解決したぞ。囮役ご苦労、お疲れさん!」
「終わった? ……ワハッ!? あっし自身の状態も終わってるでヤンスぅ!? くちゃーーい!」
ウ○コまみれだもんな。コレは速攻で洗浄祭りだな。臭いまま寝るわけにもいかんし、変装の染め物も落とさないといけない。とにかくジャブジャブ洗濯をする必要がありそうだ。徹夜で。とほほ……。
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