異世界の《英雄》はもういない

天山竜

第1話 『最強』の引き籠もり

 

 ※※※※※※※※※※※※



 「ぐはっっっ!!!」



 背中に受けた衝撃が、男の口から鮮血と苦悶の声を吐き出した。

 男を吹き飛ばしたのは身の丈5Mはあろうかと思わしき巨躯の。振るった腕を天井に向かって雄叫びを上げている。


 「……ってーな」


 受けた攻撃の痛みが腹から脳に伝達。

 脳は痛みを「怒り」に変換し男の視界を紅く染めた。

 腰の|帯袋(ポーチ)から試験管を乱暴に取り出し、中の青い液体を流し込む。


 「テメェら!そこをどいてろ!」


 前線で戦いを続けている仲間に指示とも言えない怒鳴り声を張り上げる男の腹に先程までのダメージはなく、男は立ち上りと同時に駆け出した。



 「【王命を聞け】」



 走りながら両手を構え、その中心が赤い輝きを灯す。



 「【火をくべ煽り、炎に変えろ】」



 立ちはだかる敵に向かい、速度と集中を上げて行く。輝きは瞬く間に燃え盛る炎へと変貌を遂げ、みるみるその大きさを変えていく。



 「【真空の牢獄に敵を捕え━━】」



 仲間が離れるのを気配で感じ、敵が……《魔王》が繰り出す拳の一撃を紙一重で躱しながら距離を詰めた。



 「【骨も残さぬ灰へと還せ】!!」



 足元の石畳が陥没する力で飛び上がり、《魔王》の顔面に向けて溜めた赤い、猛り狂った炎を解き放つ。



 「【炎灼牢獄フレア・プリズン】んんん!!!!」



 解き放たれた力は《魔王》の顔を覆う風の珠となり、その中を焼き尽くす炎が荒れ狂う。

 一つの魔法に二つの属性を付ける事は、通常だと有り得ない。だが、そんな規格外の事をやってのけた男にはそんな認識はない。 



 「ゴアアアァァァアア!!!」



 背後に着地し、顔と酸素を焼かれ悶絶する《魔王》の悶絶した声を聴きながら、新たな力……魔力を生成し始め次の魔法を準備。同時に、矢継ぎ早に臨戦態勢を崩さず待機していた仲間に指示を飛ばす。


 「ユグ!今の内に全員に回復と強化バフをかけろ!!」

 「仕方ないのぉ」

 「エル!ニッグ!奴の足にデカイのをぶちかましせ!!」

 「人使いと言葉使いが荒すぎよ~?」

 「ふははは!間違えて貴様にも当ててしまいそうだ!!」

 「やめろ?!……他の奴はサポート━━タコ殴れ!!」

 「「「はい!!」」」

 「持てる力を振り絞れ!コイツを倒せば…世界は…」


 興奮し、目が血走り、口元が凶悪に釣り上がるその様は、



 「俺達のもんだあああああああああーーーーーーぁぁぁあ!!!!!!」



 新たな《魔王》の誕生を予感させた。



 これは……異世界から来た《英雄》の物語。

 その始まりの一部に過ぎない。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 次の更新は1週間後。




 ※※※※※※※※※※※※




 「……あれ、じいちゃんってこの世界の英雄なんじゃなかったけ?」

 

 本を一旦閉じて表題を確認する。



 『五百神イオガミ灰慈ハイジ英雄譚』


 ………間違ってないよな?

 魔王を倒して人の世界を守ったのがじいちゃんだったよな?

 この後はじいちゃんが魔王になるの?

 ………ウソでしょ?


 五百神灰慈。

 剣を握れば負けなしの剣聖で、

 数多の魔法を使いこなし大魔導師と称えられ、

 この世界の支配を企んでいた《魔王》を倒した……《英雄》と呼ばれる伝説の冒険者。


 ……だった。


 その《英雄》はもういない。

 魔物にやられたとか、

 元の世界に帰ったとかでなく、……老衰。


 1年前、その76年に渡る生涯の幕を閉じた。

 看取ったのは、俺。



 『俺は好きに生きた。お前も好きに生きろ』



 そんな言葉を遺して、逝った。

 好きに生きろと言われてもなあ。

 魔法が「普通」に「誰でも使える」この世界で、何故か魔法が使俺には、ひっそりと暮らしていくしか道はない気がするんだよな……。


 魔法の知識はある。

 そこは大魔導師に育てられただけあって知識だけは。

 が、それを生かす事が出来ない。

 この世界で人の中で生きていくなら、魔法が使えないのは致命的。

 そう判断したである五百神灰慈、じいちゃんの方針転換は早かった。


 曰く、

 『魔法を使う奴と闘うかもしれねーんだから身体は鍛えとけ』

 『魔法が使えなくとも知識があれば対処出来ることは格段に増える』

 『どうせなら誰にも負けないくらい、【最強】にしてやる』


 通常、魔法を使う「魔法使い」は直接戦闘は弱いらしい。

 だからこそそれを補う者とチームを組み、自分の弱点を補う。

 が、五百神灰慈には当てはまらない。


 「魔法使い」の癖に最前線で剣を振るい、

 敵が離れれば魔法を打つ。

 傷付けば自分で回復、

 補助や付与も掛けて強化する。

 付いた二つ名は━━【最強】。

 とにかく、めちゃくちゃ強いのだ。


 そんな【最強】の訓練は……正に地獄だった。



 『この魔法を防ぐにはどの道具を使えばいいか、体験すりゃ分かる』

 ――「魔法」の知識を頭に詰め込まれ、実技と称して浴びせられ、


 『こんなジジイに負けてちゃ話にならんぞ!!』

 ――「肉体」訓練は体力作りから実戦までみっちりしごかれ、


 『知識と身体を活かすのは心だ!!!』

 ――「精神」を鍛えるために、何故か森に滝を作ってそこに突っ込まれた。



 あ、思い出しただけで涙が出そうだ。

 お陰で知識は付いて、身体は作られ、滅多な事では諦めない強い心は出来たんだけど。

 それとは……別に。


 俺はあの特訓の日々を忘れない。

 ぜっっっっったい忘れてたまるか!!


 ……死にかけた特訓も、

 楽しい日々も、

 何一つ忘れないからな。

 ……まぁ、ここを出て旅が出来ない理由は魔法が使えないってだけではないけれど。


 俺は、……。

 じいちゃんの様に魔法が使えるわけじゃないし、強くない。

 じいちゃんみたいに広い世界に出て、様々なものを見れない、見たいとも思えない。

 じいちゃんがしたように世界を救えない。

 きっと、……この場所で生き、この場所で死ぬ。

 いや、俺が生きたこの場所でいつかじいちゃんの様に静かに眠りたい。

 例え、変わらない日々だろうと。

 例え、誰から「つまらない」と言われても。

 今いるこの場所が大事で、大好きだから━━



 「くろ」



 「……ん?うぉい!?」


 近ぇ!?

 呼ばれて振り替えればいつの間に背後まで来ていたのか、一人の少女の顔が間近まで迫っていた。


 「ごはん……じかん」

 「あ、あぁ。もうそんな時間か」

 「ごはん……だいじ……はやく」

 「離れてくれないと立てないよ、シロ」


 俺にしがみ付き、飯の催促をする女の子━━《五百神シロ》。

 かがやく様な白銀色の髪に、青い瞳。

 髪に隠れて耳に、腰からひょろりと生える

 人狼族ワー・ウルフと言う獣人の子供だ。

 俺はじいちゃんに拾われ。

 シロは俺が拾った。

 俺が黒髪だからクロ、シロが白髪だからシロ。

 命名はどちらもじいちゃん。

 名前に何のセンスも感じないが、今ではこの名前も気に入ってる。

 しかし、シロの接近にも気付かないほど没頭してたのか?

 自分の世界に?

 な、何か……そう考えると……妙に恥ずかしいんですけど!!


 「じじぃの……ほんより……しろの……ごはん」


 ……いや、最初は「じぃじ」とか可愛く呼ばれていたんだよ?

 が、この見た目の可愛さにやられたじいちゃんは何をとち狂ったのか、昔シロにこう言った。



 『なぁ、シロ。』

 『じぃじ……なに?』

 『一回、一回だけで良いんだ。俺のことを「お兄ちゃん」って呼んで見てくれない?』

 『……じじぃ……きもい』

 『どこでそんな言葉を!!……あ、いやうん今のなし。だからせめて元に戻し……』

 『くそじじぃ』

 『クローーー!!助けてくれーーーーー!!!』



 宥めすかして何とか「くそ」は取れたけど、それ以来「じじぃ」としか呼ばれなくなった哀れなじいちゃん。

 あの嫌悪感に塗れたシロの顔、今でも目に焼き付いてるわ。


 「さて、何を作るかなぁ」

 「かれー」

 「……昨日も食ったろ」

 「かれー……が……いい」

 「いや、材料がもう少な」

 「かれー……に……しろ」

 「命令!?」


 ったく。

 肉はあるけど入れる野菜がそろそろなかった気がするが……


 「にくだけでいい」

 「味気ないだろ!?」

 たまに心を読んでくるのは何なんだシロ!!

 まぁ、ある物で作れば――


 ――ヴゥン――


 「!?」


 なんだ?この感覚━━この森に、何かが入り込んだ?


 「……なに?」

 「何かが森に入った」


 大きな気配と小さな気配。

 その二つが移動し、その先にある『ヘルバ』と言う村に向かってる。

 距離はまだ離れてるけど……。


 「飯は少し待ってくれ、少し様子を見てくる」

 「しかた……ない」


 俺は傍らに置いてある『仮面』と『帯袋』を装備。

 シロはどこから出したのか、干し肉を一枚齧る。


 「何だ、一緒に行ってくれるのか?」

 「うんどう……して……おなか……すかせる」

 「……どれだけ食う気なんだ」


 壁に掛けてある『大剣』を背負い、準備は完了。


 「急ごう、嫌な感じがする」

 


 やばい。

 大小2つの気配が『ヘルバ』に付くか、俺達が追い付くか。

 かなり微妙なところだな。

 突然現れた気配のスピードは遅く、俺達の移動スピードは速い。

 だが、俺達の家と村の中間、やや村よりだった為か後少しのところで追い付けていない。

 更に━━


 「……くろ……きゃく」

 「こんな時に」


 俺達を追尾する黒い影。

 あれは━━


 「『軍隊狼』か」


 見える所で数頭……見えないところまで含めれば恐らく数十頭が俺達の後に続いてる。

 森の異変に気付いた『魔物』が俺達を見付けて、その原因と決め付け排除しようとしてるのか?

 縄張りを荒らされて怒ってるってとこだろうけど、この森はお前達の縄張りじゃないんだけどな!

 普段なら狩り対象だけど今はそれどころじゃ━━


 「……さき……いく」

 「良いのか?」

 「……ここは……まかせて……さきに……いけ」

 「……おい」


 …これ、じいちゃんが言ってた「死亡フラグ」と言うやつではないのか?

 これ大丈夫?

 いや、実力的には余裕なんだがこれは。

 妙に心配になるな。


 「……はやく……おわらせて……かれー……たべる」

 「……お、おぅ」


 これ以上はフラグを重ねるな!

 分かったから!?……それだけ腹が減ってるって事だろうから、帰ったら超速で支度をしてやるか。

 シロが立ち止まり、後方から追い上げて来る狼達に向けて━━



 「【がああああああああああああああ!!!】」



 大音響で咆哮する。

 シロの技能スキル『プレッシャー・ハウリング』。

 亜人と呼ばれる人種の中で、獣人だけは外界の精霊に魔力を渡すのではなく、自分の身体に魔力を纏わせる。

 そうする事によって生み出す結果。それが━━技能スキル


 シロの『プレッシャー・ハウリング』はその吠え声を聞いた対象を威圧、その後相手の敵意を一身に集める効果を持つ。

 敵意を集めて持ち前の速度で翻弄し、狩り尽くす。

 これがシロの必勝パターンだ。


 「油断するなよ」


 俺の小さな呟きに、こちらを振り返らずビッと親指を立てて返答を返す背中が、……おぉ、ふ、不吉。

 まぁフラグだなんだの前にカレーが食いたいから早目に片付けたいのだろう。

 その場をシロに任せ、俺は走る速度を上げ、気配がする方向へ急いだ。



 《賢者の森ワイズマンフォレスト



 専ら『森』とだけ呼ばれるこの場所には、元は緑も水も、生物や魔物すら居ない荒野だったらしい。

 それがいつの間にか広大な森になり、此処で取れる物には他では見れない様な効果があるが、遭遇する魔物がベラボーに強いとのことで立ち入りされる事がない。

 知ってる人は知ってるが、《最強》五百神灰慈が《神霊》の力を借りて、僅か一晩で作り出した奇跡の森が此処だ。

 それ故にここら辺一帯には生命力が満ち溢れ、生えてる木も、それを支える大地も滅多な事では荒らせない。

 ……筈なんだけど。



 「ここが始まり、か?」



 当たりが暗くなり始めた頃、俺はその場にたどり着いた。

 目の前の光景。

 木は消し飛び、大地は抉られ、その一角だけ「森」ではなく「荒野」に戻っている。

 魔法……?此処に現れた2つの気配がやったのか?

 しかし……村へと伸びる痕跡は確かに荒れているが、この一角程ではないな。

 この破壊痕、こんな事出来るのはこの森にはしかいない。

 あー、くそ。

 分からない事だらけになってきた。

 追い付いて様子を見ないと━━

 ……いや、待って?

 『ヘルバ』に向かっていた筈の気配が、この場所に戻ってきてる?

  何が目的なのか検討がつかんわ。



 『迷った時は、自分の目と勘を信じろ』



 ……気になるなら確かめる。

 これもじいちゃんの教えだな。

 戻ってくるなら好都合、正体を見て、必要なら闘おう。

 ……勝てるかは分からないけど。

 考察をしてる間に、気配が2つ近付いてきた。

 何の気配か、何が起こってるのか、少しは分かると良いんだけど━━



 「きゃあ!」



 突然聞こえて来た悲鳴。

 女の子?しかもかなり切羽詰まった状況なのか?

 目を向けた先では華奢な女の子が何かに躓きうつ伏せに倒れていた。見た目は俺と同じ歳位、肩を少し越す桃色の髪が特徴的だ。装備はくだけた軽鎧ライトアーマーに左腰の鞘、剣はなし。外傷は右肩から出血。呼吸が乱れ、ハッと後ろを振り返り━━


 「!」


 冷静に分析して状況を把握しようとしていた俺の目に、少女の背後から大きな刃がその顎を開いていた。


 「まずい」


 そう思った時には身体が動いていた。

 背中から抜剣、速度を落とさず少女に向かって駆ける。

 状況が全く分からないけど!

 少女に向かって振り下ろされる大剣に一歩強く踏み出し、分厚い剣腹に向けて軌道をズラす一閃。


 「しっ!」


 俺の剣と巨大な剣が火花を散らし、その軌道が少女の左側へと大きく外れる。

 巨大な剣を振るった相手を確認しようとした俺の目の前に、魔物が、姿を見せた……んだけど。


 ……は?


 この世界には『魔物図鑑』と言う物がある。

 俺のお気に入りで外の世界を知らない俺に、じいちゃんが前に作ったと言っていたそれを、俺は勉強とは別に何度も、何年も、それこそ穴が開くほど読み込んだ。

 書かれた魔物は体長、特殊技能から装備まで、ありとあらゆる事柄を記録され、それを読み込んだ今では魔物博士と呼ばれても良いのではないかと言う自信にまでなっていたんだけど……。



 こいつは、なんだ?



 姿形は『オーガ』と言う種に属する魔物だろう。

 そいつ等は大きい奴で2メートル強が関の山で、身体は緑か、稀に居て赤い奴だけらしい。

 こいつの体は赤い。

 そこまではただ希少レアな魔物だと納得は出来る……んだけど。

 通常のオーガより倍はデカくない?

 その体躯は少なくとも四Mはありそうで、紅く輝く瞳は虚ろで正気かどうか分からない。

 端的に言えば……怖いんですけども!


 まぁでも、━━怖いだけか。


 剣を弾いた勢いそのままに繰り出した三閃。

 首、胴、足に叩き込み、オーガを切り刻む。


 「GGA!?」

 「━━え?!」


 少女の声を聞いてを振り向き、


 「大丈夫?」


 驚く少女に声を掛けながら背中の鞘に剣をしまう。

 同時に、オーガが大地へと倒れ込む地響きが届いた。



 ……気まずい。

 なぜこの子はポーションを飲まないんだろう。

 突然現れた二つの気配。

 大きな奴はあのオーガで、小さなものが目の前の女の子だったんだろう。

 いや、最初は様子見ようって思ってはいたんだよ?

 あのオーガと女の子が一緒になって何かをしてたら、目的はこの森の何かって事になると思うんだけど……。

 どうもあのオーガの目的は女の子で、女の子の方は必死に抵抗している様子だったし。

 何より勝手に身体が動いてさ?

 所々怪我して、魔力切れで疲労困憊な様だったからオーガを倒した後で二種類のポーションを渡したんだけどさ……。


 え、何でジッと俺を見てるの?


 ハッ!まさか。

 俺って怪しい!?そりゃこんな仮面着けてる奴から「ポーション飲んで」なんて言われても警戒しますな!!

 けとポーションだよ!?怪我治るし魔力回復するよ!?

 自分で作った物だけどちゃんと使えることは確認してるから大丈夫だよ!!

 半分は優しさで出来てる訳じゃないからちゃんと回復しますから!!?

 それとも!!

 あのオーガって倒したらダメな奴だった!?

 何かの呪いで姿を変えられたお父さんだったとか?!

 だとしたら思いっきり斬っちゃった俺はこの子からしたら仇になるの?!

 たたた助けたつもりがまさかのお節介どころか大失敗!?


 ……いや、久々に知らない人に会って混乱しているのは分かるが、落ち着かないと。

 ま、先ずは話を聞かないと。

 ああ謝って許されない事だとしても疑問はまだ何も解決はしてない━━



 ━━ゾク。



 「しっかり掴まって」

 「え?きゃあ!」

 

 胸元に瓶を抱え込んだ少女を抱え上げ、その場を飛び去った━━その直後。

 ズガッ!と地面に巨大な音が鳴り響くのを、着地した木の上から聞いた。


 ウソだろ?

 確かに斬ったぞ?

 見下ろした先でさっきのオーガが剣を地面に突き刺していた。

 瞬時に頭が弾き出した予測は……二つ。

 ・俺は何も斬っては居なかった。

 ━━ない。

 確かに手応えはあった。

 あのオーガも幻とかの類いではないのでこの答えは違う。

 ・瞬間再生。

 ━━ある。

 良く見れば、俺が斬った跡がその身に刻まれ、

 その部分から黒い血の様なものが流れている。

 恐らくこれが正解……なんだと思うが、オーガにそんな能力はない。

 考えられるのは?

 ……後天的に与えられた。そう、人の手によっ━━


 「GAAAAAAAAAAAAA!!!」

 「ちっ」


 あぁくそ!考える時間をよこせ!?

 舌打ちと共に『腰袋』から取り出した玉をオーガに投げ付ける。

 『光煙玉』と呼ばれる相手の目をくらまし、姿を隠す煙をばら撒く俺の手製道具だ!


 「GOA?!」


 眩い光が、両眼を見開いて俺達を探すオーガの眼球を焼き、苦しげに自分の目を押さえる。

 光と共に周囲に散った煙が魔物の周囲に立ち込められ奴の視界を完全に遮断した。

 よし!

 その隙を衝いて、少女を両手に抱えて走り出す。


 「……え……あ!?」


 俺に抱えられた少女が戸惑った声を上げる。

 すいません後でちゃんと抱えてる事は謝りますから先ずは情報を下さい!?


 「あの魔物は何?何で襲われてたの?」

 「ご、ごめん……なさい。私にも、分からなく……て」


 この女の子も訳が分からないまま森まで飛ばされた……って事か?情報を貰おうにも立ち止まってゆっくり話してる暇はなさそうだ。

 まだ煙は残り、あのオーガから充分距離も取れてる。

 少女が大事そうに抱えてる二種類の試験管型の瓶に目をやり、俺は次のお願いを口にした。


 「両方飲んで」

 「え」

 「青い方が傷を治す物で、赤い方が━━」

 「GUGAAAAAAA!!!」


 俺の説明と、後ろから怪物が上げた砲声が重なった。

 同時に、ヒュンヒュンと風を切り裂いて何かが俺達に迫って……?!


 ズガン!!


 直前まで俺が居た場所に、見覚えがある大剣が飛んできた。

 あの魔物……自分の剣、投げやがった。

 いやそれよりも!

 俺の投げた光煙玉の効果である煙はまだ晴れてないぞ!?

 何で俺たちの居た場所が分かった?

 ただの当てずっぽうか?

 ……いや、違う。

 奴の視線を感じる。

 オーガが居た方向、まだ煙が上がり続けている場所を見ると真っ直ぐ……こっちに向かって駆け出しくてる!

 何だ、この気配?

 煙の中から飛び出したオーガ。

 俺が付けた傷口からは血ではない、何か黒い靄の様なものが流れ出して身体にまとわりついている。

 いや……マジでアレ何?!

 あんな変化、オーガにない……はず。実物は見た事ないけどあんな能力があればじいちゃんが見逃すはずが無い!?

 奴の体内から噴き出した黒い靄が身体にまとわりついて……鎧と化す。

 赤い身体に黒い鎧。

 そこに居るのはもう本で見たオーガではない。

 赤黒い、別の魔物。

 地面に刺さっていた大剣を勢い良く掴み抜き放つと、目に鋭さ……殺意が漲った━━瞬間。


 「GAAAAAAAAAAAAA!!!」


 爆発的な速度で開いていた距離を一気に潰し、追い付いた!?


 「きゃ!?」


 ズン!!!

 俺達が枝に登っていた居た木に向かって、両手で持った大剣を有り得ない力で叩き付けてきた?!

 轟音と共に木が倒れるのを抱えた少女と共に別の木の上に逃げながら見遣る。

 ……全く状況が整理出来ない。

 そんなにこの子に恨みがあるのか?それとも何か別の目的が?


 「GURAAAAAAAAAA!!!」


 それなりに速い速度で走り回っているにも関わらず、俺が着地した木を正確に狙って大剣で薙ぎ払って来る。

 此方の気配を感知してる?


 「あ、あの……私を置いて逃げて下さい!」

 「舌噛むから黙ってて」


 あと、大事に握り締めてるポーションを早く飲んでね?!

 さて、……逃げるか戦うか……だが。


 選択肢は一つしかない。


 ここでオーガを放置しても森の中で暴れ回るだけ。

 仮に……オーガがこっちの居場所、可能性が高いのはこの少女の位置を感知出来るのだとしたら……

 逃げることは根本的な解決にはならない。

 けど、戦うにしても少女を抱えたままじゃ手を出せない。

 例え、この子がポーション飲んで、体力・魔力が全快になってもあの黒オーガ(仮)が相手だと直ぐに追い付かれる可能性もあるし。

 どうするかな。

 次の行動を決めあぐねているその時━━声が放たれた。



 「【ぐるああああああああああああああ!!!】」



 これは!?

 立ち止まって後ろを振り返り黒オーガを見れば、此方に駆け寄る形で硬直し、そのまま地面に倒れ込んだ。

 『スタン・ボイス』。

 獣人が使う技能スキル……この森であの技を使うのは1人しかいない。


 「あれ……なに?」

 「俺にも分からん。が、助かったシロ」


 自分で立てたフラグをへし折って良く追い付いた!!


 「……?……これ……だれ?」

 「まだ分からん」

 「あ、あ、その」

 「けど、あれは倒しておく」


 俺の視線の先。

 シロが放った硬直スタンから今にも抜け出しそうなオーガがこちらを、正確にはこの少女を地面に這い蹲りながら睨んでいた。

 あれだけ傷を付けた俺ではなく、少女を。

 抱えていた少女を地面に下ろし、意識を逃走から……闘争へと切り替える。


 「シロ、この子を頼む」

 「え?で、でも」

 「……くろ……は?」

 「意地でもアイツを振り向かせる」

 「……ごかい……を……まねく……いいかた」

 「うるさい、捕まらない程度に距離を取れよ」

 「……りょう……かい」

 「あ、あのひゃあああ!」


 俺からの指示で少女を受け取り、背中に負ぶさって後方へ爆速で走り出したシロ。

 き、気を付けて走れよ?


 「GOAAAAAAAAA!!」


 シロと少女が逃げた方角、つまり俺に向かって硬直スタンが解けたオーガが駆け出した。

 背負った剣……名を『月詠』。

 その柄を握り締め、一息で抜き放ち勢いそのままで斬撃を煌めかせた。


 「ふっ!」


 狙いはその右腕。

 まだ黒化をしてない部分を斬り飛ばす。

 が、まるで何もなかったかの様に俺の横を走り抜けた?

 先程は痛がったのに、今は苦しむ素振りすら見せない。

 走るオーガに追い付き、並走しながら状況を見極める。

 斬り飛ばした右腕の傷から、血の代わりに黒い靄が出て新たな右腕を造る。

 目を凝らせば、傷から黒い模様が伸び始めているな。

 あれは……何かに寄生されている?

 最終的には真っ黒なオーガになるのか?

 模様の侵食は遅いが、いずれは身体の赤い部分は無くなり全身が黒く染まるだろう。


 その前に!!


 走るスピードを上げ、再びオーガの前に出た。

 どんな魔物にも『核』と呼ばれる物が存在する。

 オーガの核の位置は、身体の中心。

 手に持つ剣を正眼に構え、照準をオーガの『核』へ。

 この一撃、無視出来るなら……して━━みやがれ!!!



 「せっぁぁぁあああ!!!」



 気合いを腹から絞り出し、構えた切っ先をオーガの胸へ!

 ガキィィィッ!!!

 オーガが止まり、左手に持っていた大剣で自分の核を守り、その敵意を初めて、



 「GURUUU……!!」



 俺に向けた。


 「やっと俺を見たな」

 

 俺を見下ろし、睨むオーガの視線……殺意を一身に浴びせられるが、付けた仮面越しに睨み返す。

 さぁ━━ここからが、本番だ。



 そういえばじいちゃんが、



 『男なら、女を守る為に強くなくてはダメだ』



 なんて事も言いながら笑ってた。

 じいちゃんから貰った仮面に触れる。

 『月詠』の柄を掴む手に力を籠める。

 じいちゃんは俺を誰より、何より強くしてやると言っていた。

 なら、俺はコイツを倒せる…………はず!

 多分速度は俺の方が上な気がする。

 逃走出来ていた事実からこの推測は大きく外れてはいないだろう。

 ここからは全力で闘う!!

 脚に力を入れ、正面しか見ていないオーガの左側に一気に跳躍。

 俺の姿を見失った魔物の大剣を持ったに方に躍り出た。

 先ずは武器を奪う!!


 「ふっ!!!」


 短く静かな気合と共に攻撃を仕掛ける。

 さっきより堅い手応え!

 けど!

 俺が斬り飛ばした左腕が、剣の重さもあって地面にボトリと音を立てて落ちる。

 よし、このまま畳み掛ける!


「GOAAAAAAAAAAAAA!!!!!!」


 その咆哮と共に。

 魔物の身体が怒気に呼応したのか一気に、……真っ黒に染まった。

 さらに黒皮に赤い斑模様が加わり、俺が切り落とした筈の左腕は禍々しく形を変え、瞬時に再生。

 ……これで決まりだ。

 コイツ、何かに乗っ取られてる。

 もうオーガと呼ばれる特徴はパッと見しかない。

 自然に強く生まれる『魔物』にはそんな変化をする必要がない。

 となれば、この変化は人の手が加えられた確かな証拠。

 謂わば━━『化物』だ。

 変化には苦痛が伴うのか身体を暴れさせて気を紛らわそうと身を捩る。

 変化が終わるのを待つ義理は……俺にはない!

 剣を腰だめに構え、魔物の身体を貫く為、走り出す。

 これで終わらせる!

 引き絞り、加速に寄って後押しされた力と言う力を、突きに変え魔物の身体に埋め込む……刹那。

 魔物の姿が霞んだ!?

 消えた、んじゃない!

 左腕に痺れる感覚がする。大きなものではなく、把握する事すら難しいと思わせる極小さな、疼き?



 『戦いの最中に感じたものは絶対無視すんな!』



 これは……予感!

 自分の本能が告げた警鐘に従い、咄嗟に剣で庇う様に防御する。

 次に知覚出来たのは、吹き飛ばされた衝撃だった。


 「ぐっ!」


 見れば、赤黒く変化した鬼が左腕を薙ぎ払った態勢で此方を見下ろし、嗤ってる……。

 この野郎!

 まだ宙に浮き、樹に激突しかけた身体を反転させ、再度突撃!



 『バカ野郎!死にてーのか!!』



 ……しかけた所で頭を冷やし、吹き飛ばされた反動は利用せず膝を使って勢いを殺し大地にふわりと降り立った。

 そうだ、こんな時こそ冷静にならなきゃ。

 じいちゃんと戦った時も、頭に血が上って突撃して返り討ちにあった事があったんだ。

 整理しよう。

 アイツ……黒オーガ。

 ・知能がある。

 俺がやった事を真似して俺に仕返しを慣行して来た。それはそれで、標的が俺に変更されたと言う事だからそれは良い。

 ・再生能力がある。

 しかも新たに作られた腕はさっきまでとは性能が段違いに上がってる。

 ・黒化して力も上がってるが、何より上がってるのはスピード。

 回り込まれたのが何よりの証拠だな。でも……付いていけない速さじゃない。

 さっき見失ったのは……一気に勝負を決めると勇んだ俺の慢心。

 ちゃんと!しっかり!

 観て、視て、診て、見ろ!

 相手の力の見誤りは自分の死に繋がると教えられただろ!?

 今、この場で俺が死ねば……今度は。

 チラと視線を後ろの方にやる。

 其処にいる2人の少女。このオーガと共に現れた謎の女の子は青ざめた顔色で俺に心配そうな視線を送り、シロは……真剣な表情で此方を見ているかと思えば、右手は腹を抑えている。

 こんな時に空腹を訴えて来るな!俺が殺されたら飯どころの話じゃないんだぞ!?

 ……ったく。



 『てめぇで守ると決めたもんは、何がなんでも守り抜け!』



 魔物も怖いし、命懸けの戦闘と言うのも大いに怖い。

 が、何より怖いのは……人が、大事な家族が死ぬ事だ。

 なら、出し惜しみは……しない!

 右手で剣を構え、左手は帯袋へ。

 一つの種を取り出し、口に放り込む。

 更に一つの石と、一枚の札を取り出し、『月詠』に装着セット

 ……準備が出来た。

 いっくぞ!



 「GAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」



 俺が駆け出すのと同時、黒オーガも弓から放たれた矢のように駆け出す。

 奴の剣の間合いに入る直前で、俺は口に放った『種』を噛み砕いた。


 途端、流れる景色が変わる。


 爆発的な速度で大地を蹴った俺は、黒オーガの頭上へと運んだ。

 俺の姿を見失い、奴に一瞬の隙が生まれる。

 『速度の種スピード・シード

 俺の加速を脅威的なものへと引き上げる不思議な種子。

 副作用は……全身の関節が軋みをあげる事。これを使った次の日は、動きに支障が出るぐらいの痛みが出るが……今この瞬間、明日の事は考えない!

 ここだ!!!


 「はぁぁぁ!!!」


 頭から魔物の中心、『核』に向かって

 俺はその頭上から一直線に斬り付けた。

 が……。


 「GYA!!!」


 接触の寸前で黒化した右腕に阻まれる。

 硬化した腕は金属音を響かせ、剣の進行を許さない。

 けど、甘い!!


 「【鋭利護符(シャープ・シール)】」


 剣に張り付けた『護符』に起動の命令を出す。

 瞬時に護符の効力が発動し、攻めぎ合っていた硬直をすんなりと推し進めた。

 鋭さを増した剣が堅い右腕を切り裂き、突破!

 かと思えば次は、いつの間に拾ったのか左に持っていた大剣で防いで来やがった!黒オーガの大剣が真っ二つになるも軌道がずらされ奴の『核』に掠りもしない。

 狙いが外された?!

 知性があるのかすれ違い様に見た黒オーガの口元は三日月型に歪んでた……ヤロウ?!

 地面に着地、切り返して再度━━


 「GO……!!!」


 見上げる俺を照準している……?

 目に映るのは、黒オーガの口に溜まる紅い炎の塊。

 それが放たれて━━

 ……あ、やば━━━



 ズドォォォン!



 「あぁ!」

 「……!」

 「GAGAGAGAGAGAGA!!!!!!!」



 ━━━━━━━━




 マジで死ぬかと思った。

 あれがアイツの隠し玉か……『速度の種スピード・シード』を使っていなきゃ躱せなかったな。

 眼下では鬼が笑い、少女が膝から崩れ落ち……シロが此方をジッと凝視してる。

 俺を捉えられたのはシロだけだ。

 これで決める、だから……そんなに俺を責める様な目で見るなよ。

 ってか心配なんてしてないだろ。

 その腹をさすって腹ペコアピールをやめろ。

 此奴をここで倒さないと、次に狙われるのはあの少女でその傍に居る━━シロだ。

 そんなの……やらせるものか。

 自然と手に力が籠められるのを感じる。

 俺の家族を傷付ける奴は許さない……!

 今度は俺の隠し玉を見せてやる!!



 「【炎の石フレイム・ストーン】」



 俺の声を柄尻に填めた『石』が聞き、剣が赤い光を発する。

 石の力が解放され、剣に流れ炎を生み出した。

 普通なら、『護符』や『石』の力を武器に流せば使った鋼や鉄の性質が変化したり、耐え切れなくなったりで例外なく壊れるらしい。

 けど、コイツは━━俺の愛剣『月詠ツクヨミ』は、腕の良い鍛冶師がじいちゃんに頼まれ、素材に拘り、様々な要素を取り入れ、『護符』『石』の性質・属性変化にも耐える。じいちゃんが戦利品として持っていた(盗品ではない事を祈る)『ルナタイト』と言う鉱物をベースに作られどんな付与をしてもその形を保つ。

 空に浮かぶ月が何をしても壊されない様に。


 そして……!!



 「【月輪ガチリン】」



 俺の意思を声で伝えればその形状を変化させるその様は満ち欠けによって姿を変える正に月。

 その一つが遠距離武器『月輪ガチリン』。

 ベースとなった武器はチャクラムと呼ばれる投擲する円剣。大きさは通常、指だけでも操れるけど……『月輪』に変化した形は、俺の身体がすっぽり通り抜けられる程の穴がある円剣。……そう、馬鹿でかいのだ。

 魔法が使えない、俺の唯一の投擲型の遠距離攻撃武器。

 力を籠め、身体を引き絞り、狙いを定め、


 「ふっ!!!」


 身体の捻りを加えて、持てる筋力を全開にして解き放った。

 真っ直ぐ黒オーガへと風を切って突き進む『月輪』は音も無く、静かに、一筋の月光となって獲物を照らす。

 勝利の余韻から覚め、再び少女に向おうとした黒オーガに……到達。


 「……え」


 少女の惚けた声が辺りに木霊する。

 黒オーガが切り裂かれた自らの胸を、自身の『核』を見る。

 何が起こったのか?

 今感じてる違和感は何なのか?

 理解する間がなかっただろうから教えてやる。

 飛び上がった空中から大地に降り立ち、右手を掲げ声を出す。


 「終わりだ」


 俺の右手に『月輪』が戻り、『月詠』の姿に戻る。

 黒オーガの身体が上下に別れ、炎に包まれた。



 「GOOOOOOOOOOOO!!!」



 断末魔の叫びを上げ、灰となって消えていく。

 『核』が壊され、身体がなければ黒オーガの再生も意味がない。

 戦い終わった俺の耳に少女の声が微かに聞こえた。


 「凄い……魔法……」


 いや、俺はそれが使えな━━

 訂正しようと振り返ると、気を失い静かに倒れる少女に、それを軽く引っ張って地面すれすれで支えるシロの姿が目に入って来た。

 後に残ったのは、黒オーガの灰の中に埋もれる二つに分かれた魔物の『核』。

 煌々と月に照らされその静寂を取り戻した静かな森。

 シロじゃないけど、……うん、腹減ったな。

 こんな感想が出て来るのも無事なお蔭か。

 ……で、この子は何なんだろう?

 結局、飲んでくれなかったな……ポーション。



 とりあえず、帰るか。

 少女の手を引っ張り、「手伝え」と目で訴えて来るシロの元へと歩み寄り、気絶した少女の軽い身体を抱え、帰路に着く。


 

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