【短編】湖に夕陽沈む中 ーー あなたを想う
月杜円香
第1話 麗華、奥浜名湖へ行く
新幹線で、約三時間、新豊橋駅で、遠州浜名湖鉄道に乗り換えてあたしは、初めての一人旅を満喫していた。
特に新幹線から見た浜名湖は、海とつながった大海のイメージがあったが、この一両編成の各駅停車から見えるそれは、山の方にあり趣がまるで違う。
そして、あたしは、電車の停車中に見つけてしまった。
駅が少し高台だったので、見えたのだ。変な形の建物だった。
白い外装に、緑の色の屋根。「船」に見えた外観だったのだ。
*
「エリー、来たよ~~ 麗華だよ~~」
高台の駅の次の駅で降りて、山をずんずん登っていくと、別荘地でもないのに、素敵な洋館が建っていた。
築年数は、まだ新しい。
都会の喧騒に、姉の絵里香の身体は向かなかった。静かな場所を求めて、お
「あら、あら、帽子もかぶらずにこの炎天下を歩いてくるなんて……
麗華は強いわね」
「大丈夫だよ~ それより湖が綺麗ね~ 湖面がキラキラしてるよ」
「そうね、晴れた日には、ここからよく浜名湖が見えるわ」
「あのね、あのね、面白い建物があったの。明日、行ってみようよ」
「相変わらず、ジッとしてない子ね。良いわよ。この頃とっても調子が良いの。朝にでも行く?」
半年ぶりの姉の絵里香、エリーとの再会だったが、そこに反対する中年の女性の声が。
「ダメですよ。絵里香さん。どうしてもと言うなら、夕方になってからにしてください。お身体にさわります」
「大袈裟ね、朝江さん。でも、分かったわ。行くのは夕方になってからにしましょう」
「え~!! 何時までやってるか分からないお店なのに~」
あたしは、口を尖らせて言う。朝一番で行きたかったのに!!
「でも、朝江さんの言うことを聞いとかないと、麗華は直ぐに東京に戻されるわよ」
エリーが、あたしの耳元でささやいた。
それで、渋々承知したのであった。
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