ーーー警察が来る前に……

―--ブーブー。


その時、婦長の内線に連絡が入った。

『婦長、すみません。松原さん、急変です』

「わかった、すぐ行く」

婦長は電話を切る。

「あ、そうそう、もうすぐ警察の人が来るらしいわ」

「え」

「なんでも事故か自殺か、あるいは他殺か…事情聴取を取りたいんだとか。

もうすぐ先生も見えるから、ちょっと待っててくださいね」


警察?


警察沙汰になるのはごめんだ。武人や汐里さんにも迷惑がかかる。


俺はもう殆ど残っていない左腕の点滴の針を抜くと、

医師や警察が来る前に病院を抜け出した。


夢を見たおかげで俺の心はもうすでに決まっていた。


今まで何をためらっていたのだろうか。


足を怪我しなくてよかったと思った。


もしも、足を怪我していたら俺は病院を抜け出すこともできなかった。

今もまだ病院のベットの上だ。


俺はまだ汐里さんと同じ舞台にも立ってはいない。


叶うはずがないだろう……。


でも、動き出した足はもう止めることなどできなかったーーー。



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