武人の部屋

 その後、俺は武人の部屋へ行った。武人の部屋に女はいなかった。

武人はその日限りの女は決して部屋には入れない。いつもラブホで

休憩をとり、事を済ませると、あと腐れなく自宅へと戻る。

女も割り切った相手としかヤらない。それとも俺が来るだろう……

と、予測しているのか? ーーーだったら、嬉しいけど……。

まあ、それは考えすぎか……。


ラブホであった事を武人に言うと、武人は大口を開けて笑っていた。


『まあ、しゃーねーな。そのうち、お前に合った女が現れるからよ。

でもさ、もったいね、その女、巨乳だったんだろ』

『ああ… 』

『遊びでも、一回くらいヤッとけばよかったじゃん。そしたらお前も

晴れて童貞、卒業だったのによ』


カチンと、武人は自分のグラスを俺のグラスに当てた。


『俺は嫌なんだよ。やっぱり、エッチは一番好きな人としたいし……』

『お前は少女漫画に出てくる主人公かよ』

そう言って、武人は俺の頭を突っついた。

『だいたい武人が悪いんだぞ 』

『はあ? 何で俺?』

『あんな…ディープキスを目の前でやるから…』

『まさか、お前、それ見て立ったの?』

『ったく、変な女に勘違いされるし、最悪だあ、俺…』

と、俺は頭を抱え込んだ。

急に恥ずかしくなり、俺の顔は勿論のこと、耳まで赤くなってきた。

『はははっ』

武人はまた面白がって笑う。武人は俺の事を見て完全に楽しんでいる。

それでも俺は武人が笑ってくれるなら、俺のバカな行動も、恥ずかしいことも、

満更でもないかな、とか思ったりする。こうやって、普通に何でもしゃべって、

笑い合って、いい大人になっても武人とはずっと繋がっていたいと思っていた。

武人の笑った顔を見ていられるなら、俺の恥ずかしい体験談なんか安いものだ。

『じゃあさ、お前はどんなタイプの女がいいんだよ』

『俺は…』

武人だよ。って言ったら、怒るかな……。

『別に。誰でもいいだろ。お前には関係ねーよ』

『なんだよ、それ。お前、何、怒ってるんだよ』

『別に。お前こそ、あの後、あの女とヤッたんだろ?』

『勿論、秒殺で』

この歩く生殖器が! ヤキモチは日常茶飯事。

だけど武人の体験談を聞けるのも一番の親友まで上り詰めた俺の特権だ。

当たり前のようにお互いの家を行き来して、ご飯を食べながら酒を飲んで、

俺達は大人の話をしている。あの女とヤれる度胸が俺にあったら、武人も

少しは俺の事を見直してくれるだろうか……。

それでも、俺が抱かれたいのは武人だったーーー。

『やっぱ、女の身体は柔らかくていいな』

ズキッ。武人の言葉が心にズキズキ痛みが走った。

ったく、人の気も知らないでさ。俺は全ての女にヤキモチを妬いている。

女ってだけで武人の性的対象に当てはまるからだ。


女ってっだけで………。


何故、俺は女じゃないんだろ?

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