僕、親友を好きになってしまいました。

 親友を好きになってしまった男の子の恋はここから始まった―――。



『きゃ―――ーーー』


いじめっ子等から逃げる僕は土手から少し下りた空地へと追いつめられた。


『はっはっはっ』

『お前、ホントに男なのか。女みたいな声しやがって』

『きっもちわりー』

『女みたいな顔しやがって』

『こいつがホントに男か確かめてみようぜ』

『ほら、お前らコイツ、離すじゃねーよ』

『コイツ、内股だぜ。はっはっはっ…気持ちわりぃやつだな』

 

いじめっ子の一人が僕のズボンのベルトに手を掛け外した。


『さあ、どうかな』

『やめてよ、ヤだって言ってるでしょ』


と、そいつが僕のズボンを下そうとした時だった―――ーーー


そいつは僕の目の前から消え、空を舞った。


(え?)


そいつは勢いよく地面へ叩きつけられた。


『てめぇ、誰だよ。その制服、よその中学だな』


『俺は勝乃中の篠宮武人しのみやたけとだ』


篠宮…武人…。


『男3人が弱い者いじめか? お前ら、サイテーだな。

一人じゃ何もできねーのによ』


『っだと』


『先にコイツからやっちまおうぜ』


殴りにかかってきた男の子達相手に武人は一人で

立ち向かって行った。


とても、勇敢だった。


す、すごい…強い…。


あっという間にいじめっ子達をやっつけてしまった。


『ゲホッ』


『くっそ…、覚えてろよ』


いじめっ子達は慌てて逃げていった。


『バーカ』


喧嘩は嫌いだった。


あんなのは野蛮な男がするものだって思っていたから……。


でも、武人がいじめっ子達を殴る姿が、僕はなぜか綺麗だと

思ったんだ。


武人は身体を張って僕を守ってくれた。


誰も僕を相手になんかしてくれなかった。


先生も、同級生も…面白がって笑うだけだった……。


僕の目から涙がこぼれ落ちたーーーー。


『あ、ありがとう……』


武人はベルトを拾って僕の前に突き出した。


『ほれよ』

『ありがとう…』

『お前、名前は?』

谷口雅也たにぐちまさや

『雅也か…。これからは気をつけろよ』

『ああ…うん』


僕は武人の背中をずっと見つめていた。


あまりにも君の背中が眩しかったから……。



そして、この時、僕は君に恋をしたんだ――――――ーーー。

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