ダイ・ミー!隙間時間で異世界防衛! ~よく見たら違うアプリやんけ!~

みかんねこ

第1話 暇があって金がない男の話。

「契約、今月までだから」



 その言葉で、俺はあっさりと無職になった。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ずっと契約してもらえるとは思ってはいなかったが、それでも思ったより早いというのが俺の正直なところだ。

 まぁ、俺達のような業務委託契約で働いている人間は、企業側にとってはいわば「傭兵」であり、不要になった場合には切り離すのが当然だ。

 派遣社員と大して変わらんと言えば変わらんが、多少なりとも持っている技術が評価されていたので給料は割と高めだったのが災いしたのかもしれん。


 最近会社として経営が上手く行っておらず、上層部は大変と訊いてはいたが、まさかこんなにあっさり切られるとはなあ……。

 正社員じゃない人間なんて、切られるところまでが仕事まであるし、仕方がないきもするが。


 こういうよくある追放系のお話では、地味な主人公が首になった事により会社が倒産……みたいな展開にはなっているのがお約束ではある。


 が、しかし現実は非情である。


 残った人間は大変なのは間違いないだろうが、いないならいないなりに回っていくものだ。

 残った側にもなった事もあるからね。

 会社側に文句は言うが、黙々と働くだけである。


 だけどまぁ、同僚のみなさんには特に恨みはないので頑張って欲しいものだ。

 会社にもそれなりに世話になったし、別に思う所はない。

 いや、嘘。

 ちょっと腹立つ。


 でも俺もいい歳の大人であるし、そこはぐっと飲みこんで我慢するさ。



 んで。


 俺はいわゆる独身貴族と言う奴で、家族もいない。

 家は実家であるが、もう係累もほとんどいない。

 嫁に行った妹がいるくらいだな。

 もう久しく顔を合せていないが元気だろうか?

 つまりはそれくらいの距離感である。


 だから自分の食い扶持を稼ぐだけでいいし、そんなに無駄遣いする方でもないので貯蓄は少々してある。

 遺産も丸々残っているし、上手く運用すればそれだけで食っていけるかもしれないが……そういうのちょっと怖いんだよね。

 できれば本当に必要になるときまで手は付けたくない。

 そんな日が来るかどうかは分からないが、せいぜい孤独死しないように気を付けるくらいだ。



 そんな俺にとって仕事ってのは、ある種の暇つぶしであり日々の糧を得る物ってわけだから、次の仕事を見つけねばならないのは間違いない。


 が。


 なんと、全く使っていなかった有給休暇が丸々一か月分存在しているという事実が判明した。

 そんなにあるのか。

 

 確かに無駄に健康体で病欠はしたこと無かったし、精々盆と正月に少し使うくらいだったからなー。

 ……待てよ? 使ってない有給って消える物だから、どれくらいドブに捨てたんだろ?

 勿体ない気もするが、一昔前は有給なんて存在はしても取れないものだったんだよ……。


 そう言う意味では世界はいい方向に向かっているのだろう。


 もう15時間労働で残業代を出さないような企業は無い筈。

 ないよね?


 それはそうと有給消化中に求職はできるが、働けるのは翌月以降になる。

 ダブルワーク扱いで出る事も出来るらしいが、まぁ折角だし少し休むのもありかもしれない、そう思っていたのだが。



 3日で飽きた。



 と言うか、世間が動いているのに自分は何もしていないのが思っていたより辛い!

 心なしか近所の目も厳しい気がする!

 多分、気のせいなんだろうけどさ。


 旅行とか遊びに行くのも有りなんだろうけど、収入が近いうちに止まっちまうことを考えるとねえ。

 それに、俺は元々浪費しない……というか、金の使い道を知らないつまらないおっさんなのだ。

 ちょっと本を買ったりゲームを買ったりはするが、それに全てを突っ込むほどでもない。

 パチンコなどのギャンブルもたまにする程度で、そんなに大勝負はやらない。


 ううむ、我ながらつまらん男である。

 だからこんな歳になっても独り身なんだよな、ははは……。


 いや、それはまあいいのだ。


 若い頃こそ嫁さんは欲しかったが、今はもういいかなーと思っている。

 最近は独身が増えているとかで、世間から奇異の目で見られないようになってきたのは俺としては大変ありがたい。

 国民としてはダメダメのダメなんだろうけど、ちゃんと税金も年金も納めてるから許してほしい。

 結婚したかったけど出来なかっただけの話だからな、うん。


 話が逸れた。


 家族も趣味も仕事も金も無い男が、暇だけある。

 しかもややワーカーホリック気味。


 正直、気が狂いそう。


 近所のコンビニでバイトでもしようかと思ったが、いずれ再就職するつもりであるからね。

 さすがに残りの人生をコンビニバイトに捧げる気は無い。


 どうするか俺は悩んだ。


 しょうもない男にふさわしい、しょうもない悩みである。




 そして、とうとう思い出したのだ。

 先日読んだニュースにあった、「隙間時間でできる短時間アルバイト斡旋アプリ」のことを!


 そう、〇イミーだね!



 思い立ったが吉日とばかりにぱぱっと登録し、小銭稼ぎのアルバイトに応募したのだ。





 当日。









『追加の援軍が来たぞッ! ヒューマンタイプだ! 南門に回す!』

『ゴブリンどもを一匹でも多く殺せッ!』

『はい、これ槍。頑張ってね!』

『東門もやべえ! 次の援軍は東に送れッ!』

『突撃ーッ!』


 なんか、思ってた仕事と違う。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ◇思い付きで始めてみた。

 続きは不定期に書きます。

 ……まぁ、暇なんでなるべく早く書きます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る