生きていても.....

「さすが、優香ね。偉いわ〜。」

昔から、そうだった。物心が付いたときには、すでに姉は父からも母からも褒められていて、私はそれを姉の横で聞いていた。

家族で出かけるときもそうだった。近所の人や地域の人に姉は声をかけられ、必ず

「聞いたわよ。すごいわね。優香ちゃん!」

と言われる。こうなると私は、空気になる。私も家族の一員のはずなのに、そこにいるのは父と母と姉と声をかけた人の4人だけになっている気がしていた。

でも、それでも幼少期はそんな姉のことが好きだったし、誇らしかった。自慢の姉だった。でもそんな思いが小学校高学年ぐらいから嫉妬、嫌悪に変わっていった。

多分それは、姉と私に対する父と母の育て方に対する違いが原因だったのかもしれない。

姉が中学生になったときくらいから、両親はお姉ちゃんにばかり構うようになった。毎日、お姉ちゃんに「なにがしたい?」、「これ食べる?」、「あれ、欲しいでしょ」と機嫌を取っている家来のように姉に言ってくるようになった。

そして、いつしか姉は家の中で一番偉い人になっていた。

そして、私は両親に「これしなさい。」、「あれもやっておくように」とまるで家政婦なのかというように家の中の作業をあれこれと言いつけられるようになった。

私が料理をしているとき、姉は優雅にお菓子を食べている。

私が掃除をしているとき、姉は両親と出かけている。

姉妹でこんなにも差が出るのだったら、私は









姉の妹なんかになりたくなかった。

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I want to die 天野 つむぎ @tumugi0919

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