終末世界の運び屋さん ~壊れた世界で、僕は強かに生きて行く~
ゆーき@書籍発売中
第一話 終末世界の命は儚い
「……よし。これでいいかな?」
廃ビルの一室で、僕は地面に散乱した物の中から、使えそうな金属類の破片を引っ張り出すと、革袋の中にそっと放り込んだ。
革袋はまだまだ入るが、これ以上入れると動きが遅くなる。
僕はまだ12歳だから、これから大きくなるといいな。
そう思いながら、僕は革袋の口を締めると、背中に背負った。
「おーい! こっちは終わったぜ~!」
すると、足元に広がるゴミをガシャガシャと音を立てて蹴り払いながら、1人の青年が入って来た。
「和也、静かに。見つかったら死ぬよ?」
そんな青年――和也を一瞥しながら、僕は短く忠告をする。
それに対し、和也は「ああ、そうだな。つい、うっかり……」と言って、それ以降は小声で言葉を紡ぐ。
「それで、奏太。成果はどうだ?」
「いい感じだよ。それで、奴らは――寄生獣はどう?」
「ああ、問題はねぇ。犬型寄生獣が数体来てたが、対処済みだ。見ての通り、寄生もされてねぇ」
僕の問いに和也はそう言って、太もものホルダーに入れられたダガーナイフに、軽く手を掛ける。
和也は探索の腕は余り無いが、近接戦はコミュニティ内でも上の方。
閉所探索時の護衛としては、かなり頼りになる。
「ありがとう、和也。じゃあ、コミュニティに帰ろう」
「りょーかい」
こうして戦利品を回収した僕たちは、早急に帰路に着くこととなった。
「……そこ、踏まないで。もうすぐ崩れる」
「おおっと……。このビルが完全に崩れ去るのも、時間の問題かなぁ……?」
壊れかけのコンクリートの階段を、警戒しながら降る僕の忠告に、和也はそう言って上げた足を引っ込めると、ぼそりとそんなぼやきを漏らす。
「そうだね。とは言っても、それなりの寄生獣に暴れられない限りは、ある程度持ちそうだけどね」
そんな和也のぼやきに、僕はそう答えながら、足元が崩れそうな場所を回避し、下へと降りていく。
今の所は、順調そうだ。
だけど、油断は出来ない。
「「「バウバウバウ!!!」」」
すると、西方向から犬の鳴き声が聞こえてきた。
犬型――嗅覚が鋭く、潜伏が出来ない厄介な相手だ。
ただ、今は臭い袋で人間の匂いを誤魔化しているから、距離さえあれば問題はない。
「和也、迂回しよう」
他の寄生獣を呼び寄せそうな場所で、戦闘はしたくない。
その一心から、僕は即座にその提案をする。
だが、戦いを好む和也は違う様で――
「えー……あれぐらい、戦っても大丈夫じゃね? 迂回した方に、手が付けられない寄生獣が居たら、話にならんぞ?」
「そしたらまた、迂回か潜伏をするだ――」
次の瞬間、僕の耳に嫌な風切り音が聞こえてきた。
刹那。
ガラガラガラ――!!!!!!!
今居る建物――丁度前方部分が、大きく抉れた。
土煙が舞う中、飛びずさった僕は即座にゴーグルを着用すると、前方に目を凝らす。
「キシャアアァァァ――」
そこに居たのは、体長7メートルはある巨大な怪鳥。
赤黒い羽毛に、赤い瞳。白い頭部に、黄色くて鋭い嘴を持つこいつは――
「鷲型寄生獣っ!」
そう判断した僕は、即座に瓦礫の隙間を見つけると、気配と音を消しながら、そこに滑り込むようにして入り込んだ。
「ごほっ ごほっ なん――」
だが、土煙で咽てしまった和也は、僕よりも僅かに反応が遅れてしまう。
――次の瞬間。
「キシャア!!!」
「うわあああっ!!!」
鷲型寄生獣が、一瞬で和也をその嘴で摘み上げたのだ。
摘み上げられ、絶叫を上げながらバタバタと身体を暴れさせる和也。
「やめろ!!! 死にたくない!!!! 助けて!!! 奏、だ、ァ――」
バキバキ――
ぶしゃあ、びしゃあ――
だけど、そんな抵抗を嘲笑うが如く、鷲型寄生獣は和也の骨をバキバキに砕いて、血を飛び散らせながら丸呑みにした。
「カアッ!」
そして装備品のみを、魚の骨を吐き出すようにペッと地面に打ち捨てると、また別の場所へと飛び立っていった。
「……和也」
やがて、危険が無い事を確認してから、僕は瓦礫の隙間から抜け出すと、和也の遺留品の前でぼそりと言葉を零した。
……悪いけど、死を悼む時間なんて無い。ましては、これは彼のミスが原因。
それにこんなの、いつもの事だ。
「……行こう。奴のせいで、ビルが完全に崩壊しちゃう」
そう言って、僕は慣れた手つきで和也の装備品の中から、持ち帰られる物を回収すると、直ぐにその場を後にした。
――ガラガラガラ――
あれから程なくして、ついさっきまで居た廃ビルが、轟音を上げながら崩れ去った。
その光景を離れた場所から眺めながら、僕はぼそりと言葉を紡ぐ。
「人は嘗て、ここに住んで居たんだなぁ……」
そう言って、また別の方向を見やった。
そこに広がるのは、ボロボロとなり、植物が絡み合い、崩壊した数多の建物。
「……行かないと」
1か月ぶりに同行者が死んで、少し感傷的になっていたのかな?
そう思いながら、僕はコミュニティがある旧大手町駅へと向かって、今度こそ歩き始めた。
――ここは、終末世界と呼ばれるようになった地球。
異世界からやってきたとされる、未知の寄生虫”アンノウン”によって寄生された野生動物――通称寄生獣によって、完全に壊されてしまった世界。
そんな世界で僕――
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てことで、新連載です!!
中々に容赦の無い作品となってはいますが、ほのぼのも多分、恐らく、きっとあると思いますので、どきどきわくわくしながら読んでいただけたら幸いです!!
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