第50話 約束

「じゃあこの領地は貰う」

「はい。王からの許可もこれに」

 王印のつかれた巻物が、おずおずと差し出される。


 封蝋を割って、中身を確認。

 領地は、俺達の自治領となっていた。


「よし、これで良い」


 そこから、基本的な教育をマルタとゲルデに施す。

 マルタは貪欲だが、ゲルデは逃げようとするので、なぜ教育が必要かそこから教え、俺は馬鹿は嫌いだと言い聞かせて、最後手段、抱っこをして突き上げながら九九を言わせる。

 覚えていなくて、つっかえると、容赦なく行為をやめる。


 そのおかげか、勉強を始めた。


 次は、経済の基本。

「いいか、税金というのは毒と同じ。重くすれば、一瞬の儲けにはなるがこの世界なら皆逃げる、逆に少なければ活性化するが、何かの時に困る」


 この辺りは、実体験があるから理解しやすいようだ。

 貧困にあえぐ農民達。

 肥え太る貴族。

 嫌と言うほど見ただろう。


 文字通り飴と鞭を使い、彼女達の教育。

 その間に、皆と話し合いながら、領地運営の基本骨子を作っていく。


 魔導具の開発と販売。

 一歩進んだ、鋳物による武具の大量生産。

 その販売と他領への輸出。


 安定をさせ、二人だけで困らないように……

 だが、彼女達は子どもが欲しいという。

 それに釣られて、クラスの奴らまで。


「基本こちらの世界を管理をしている神の決まりにより、俺達は子どもが作れない様だ。だが…… 俺なら、それは何とかなる。それを踏まえて、マルタとゲルデには、残すことはできても、お前達…… 向こうへ帰る時に、悲しくないか?」

 そんな感じで説明をすると、彼女達は固まる。


 こちら側では、重婚が許可されるが、日本では無理。

 だけどこちらに子ども達を残して、向こうに帰ると二度と会えない。彼女達は、盛大に悩む事になる。


 俺と八重は多分来られるが、それは内緒だ。


「うーん。こっちでは良い。向こうでは頑張ってね」

「皆の意見か?」

「うん」

 代表で委員長が伝えてくる。

 すぐ後ろで、皆は真っ赤な顔をして俯いている。


 まあ暮らすのは何とかなる。

 金は、何とかなるだろう。

 多少ずるはするが、神の特権だ。


 そうして、二人に子どもを授けて……

 そう通常ではない。

 言ってしまえば、処女懐胎しょじょかいたい有名な事を行う。


 能力は少しだけ、残す。


 そうして領の治世に頑張っていたら、お近くの領主が攻め込んできた。


 当然だが、こちらは理想的な領経営。

 あちらは、私欲全開の治世。

 噂が噂を呼び、切れたようだ。


「お前の所が、非合法に住民を連れて行った。なので懲罰を含めて、そちらの領地も頂いてやる」


 隣の領主は、伯爵。

 俺は侯爵。

 俺の方が偉いのだが、王からの通知は聞こえていないようだ。


 王国内に、俺達に手を出すなと触れが出て、もう誰も逆らうものは居なかったはずだが……


 ムチーノ=エゴイスティン伯爵は、懲罰の旨を王に出すと同時に、五千もの兵をなんとか工面をした様だ。


 そのバックにいたのが、アサハカーノ=ギョーフ侯爵と、オコボレーノ=スキーダ男爵。


「ふっふっふ。自分たちが販売した武器で、攻撃をされるとは思わなかっただろう」


 魔導銃を装備。

 他にも、ハニカム型の複合樹脂プロテクター。

 盾付き歩兵運搬車。

 魔導運搬車等々、市販品を装備していた。


 当然、戦術通信システムとかそんなものはない。

 魔導陸上用探査システム連動、ファイヤーボール攻撃システムなど敵殲滅装置は市販をしていない。


 ファイヤーボール攻撃システムは、土魔法の銃弾型もある。

 そう敵の、歩兵運搬車のシールドは貫ける。


 領境に、敵兵が並ぶ。

 そこで、さっきの「お前の所が、非合法に住民を連れて行った。なので懲罰を含めて、そちらの領地も頂いてやる」と言う文言が宣言される。


 マルタの息子は、治世を意味するレギンと名付け、ゲルデの息子は、寿命の関係もあるが、管理者を意味するアドミナと名付けた。レギンを領主に、アドミナは貴族院を作り管理させる。

 何かの決定は、両組織により協議後決める。



「よく見ろ、あれが愚か者だ。他人がうまく行っていれば、その手法とかを取り入れるのではなく、ただうらやんで妬む。戦争などせずにただ頭を下げて、教えを請えば良かったのにだ。二人とも愚か者の末路を見ていろ」

「「はい父上」」


 地球組の女の子は、自分の子どもを諦めたため、この二人をバカみたいに甘やかせる。

 適度に厳しさを教えなきゃならん。

 まあ霧霞流の術は、すでに教えている。


 無意識に体術の型を実行するには、小さければ小さいだけ良い。反復のみが力となる。


 向こうの軍が、盾部隊を前に出し、その後ろから弓隊と魔法銃の市販品が撃ち出される。


 ただ、うちは販売国であり開発国。

 威力は倍以上ある。


「敵の攻撃だ、防衛戦闘開始」

 そう侵略を受けたので反撃。


 こちらの領に非は無いのですと、王に説明をせねばならん。

 たとえ相手が、全滅だとしても。


 その為、教会とギルド関係者を呼んである。

 第三者機関の立ち会いは重要だ。


「総員配置、エネルギー込め。放てぇ」

 その瞬間、市販品には出せない音。

 臨界状態の砲からキーン…… と硬質な鐘を叩くような音がする。


 光の糸となり、弾が飛んでいく。

 盾など何の役にもたたず、前列から兵が粉砕をされていく。

 怖くなったのだろう、レギンとアドミナは俺の足にしがみついているが、前はしっかり見ている。


 二人の頭をなでている間に、戦闘は終了をする。


 それは、王に伝わったが、火種となる。

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