第36話 キジは鳴いて、自滅する。
「どうしてくれようか……」
隊長は、激おこプンプンだった。
家に突っ込むと、罠にはまる。
そこには、肉体的優位など存在しない。
「獣人が、人間に負けるなど、どんな形であれ許されん」
そんな事を言いながら、実際に戦ってないために、彼らの強さが分からず余計に被害を出している。
そう直接あたっていれば、確実に彼らは生きていないのだが、それは理解できないし、きっと想像できない。
「奴ら冒険者だったな」
「はい本職は傭兵のようですが、活動をしています」
「よし、町の外で、一人だけ生かして人質を取れ」
「はい。直接対決なら負けません」
部下達は怪しく笑う。
男どもは、今日も町の外へと獲物を獲りに行く。
その後を時間をおいて追いかける集団。
「これで男がいなくなりゃ、後は女ばかりだ。じっくりとやれば良い」
犬系の獣人が笑う。
彼らの物は特別で、入れると最後まで抜けなくなる。
本能的に、支配欲も強いようだ。
だがそれは、悪手だった。
「何時から、俺達が弱いと思っていたんだ?」
熊さんの、主戦場のような森の中。
腕組みをしながら、武神が奴らに向けて叫ぶ。
いつの間にか、彼らの方が囲まれていた。
「なっ、何時から気がついていやがった」
キョロキョロしながら、口々に同じようなことを叫び始める。
「とりあえず、あんたら盗賊だろ。その格好。実は名探偵でも…… じゃねえ。なんだっけ?」
「衛兵だよ」
竜司が、呆れた感じで武神に教える。
「そうそう、衛兵でもようしゃしねえ」
その宣言が、開始の合図だったのだが……
「こいつら弱え」
「ああ、委員長に負けるぞ」
あっという間だ。
武神が両刃の剣を振り回し、峰打ちだと言い訳をしながら切り飛ばす。
「間違いなく衛兵だと思うから、きっちり殺しとけよ。後が面倒になるぞ」
「ああ、最悪だな。人殺しばかり慣れちまった」
みんなも嫌そうな顔をする。
そうして、猪を仕留めて町へ帰る。
肉は熟成したり、加工したり。
骨は豚骨。
最近は、メニューにラーメンも出来るようになった。
どうやっても、臭みが取れなかったのだが、どうしてもラーメンを食べたい皆の意地が勝った。
「さあてと、周りも騒がしいし、帰るか?」
「えー、精霊国にも行きたい」
無論言いだしたのは、八重だ。
みんな、面倒だったのに、八重が行きたいと言った瞬間、それも良いなと思い始める。
「じゃあ、近々行く事にしよう」
そう言っていたのに、奴らは諦めてくれなかったようだ。
「全員殺されていました」
「なに、また罠か?」
「いえ、一刀のもとに鎧ごと切られていました」
「なに? 鎖帷子は?」
「それごとです。思ったよりも手練れのようです」
それを聞いて、馬鹿なことに利権ズブズブの辺境伯が私兵を貸す。総勢五百人。
三日目の夜。
「明日は出発だ、そう思うと名残惜しいな」
そんな事を言っていた矢先、庭のトラップが働く。
「久しぶりというか、もう今日来なければ生きていられたのにな」
いつもの様に、永礼が派手に魔法をばら撒く。
いやいつもよりも、三割増しくらいだろうか?
「おー、多いぞ敵さん。総力戦だな。金属鎧まで装備してやがる」
「ありゃ、あれって、兵隊だな。人間だぜ」
それを聞いて、皆が嫌そうな顔をする。
「この地方にも、人間がいたんだな」
「あーあれか、貴族がきっとズブズブなんだな、王都に手紙を書いとこう」
手紙を書くもの、剣の手入れをするもの、防護を装備するもの、空気を読まない、悠人がぽいっと魔法を投げる。
とっさに張ったシールド。
その外では、数千度の風が吹きすさぶ。
そういい加減苛ついていた。
こんな町無くなっちまえと、思った意識がもろに出た様だ……
撃った本人が、一番驚いているからそうなんだろう。
「明るーい。綺麗ね」
聖魔法でも混ざっているのか、青白い光はすべてを飲み込み消し飛ばす。
例の屋敷も消え、町長の屋敷も強風により崩れ落ちた。
まあ、阿鼻叫喚。
光が落ち着いた後、皆はとりあえず寝ることにした。
翌朝、全員が思ったのは、昨夜出発すれば良かったと言う事。
まあそのまま、出発をしたが、上級市民の住むエリア三分の一が消えていた。
その後、ギルド経由で王国に俺達の事が手配されようとしたが、証拠がないとか色々言われて、どうやっても起訴できなかったようだ。
その結果を聞いて、奴らは手を出してはいけないところに手を出した事を知る。
まあ、組織で生き残ったのは辺境伯のみだったが、なぜか辺境伯は密告だけで罪が確定をして捕縛されたとか。
俺達は、たらたらと歩き、精霊国との国境を越える。
その瞬間に囲まれ、矢が一本飛んでくる。
「危ねえなあ」
「貴様ら、何用で我が国へと入る?」
そう聞かれて皆が悩み始める。
「何用? だと…… なぜそんな事を聞く」
なんとなく、聞いてみた。
すると向こうが、今度は悩み始める。
「なぜ聞くんだ?」
「バカ余所から来て、うちの国でナニをするって言うんだ? 何もないんだぞ……」
「ああ、何もないな……」
「じゃあ、聞かなくてもいいんじゃないか?」
「しかし長老が……」
もめだしたので、中へと入っていく。
「良いのかな?」
「良いんじゃない、聞く意味もないらしいし……」
そうして俺達は、精霊国へと入り込んだ。
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