第21話 鈴木達の憂鬱

「また人殺し、やっていられるか」


 戦場の報告から、王が君らを頼ることになるだろうと兵が言っていた。

 鈴木、岩崎、太田、松井が顔を突き合わせて相談をする。


「また戦争だ、やってられるか」

「そうだな、もうあの匂い、今でも思い出す」

 そう言いながら、彼らはあの時戦っていない。


 だけど、盗賊や、狩猟。生き物を殺すのは大分慣れてきた。

「どうする?」

「どうするって? 何がだ……」

「もう良いだろう、皆から、特に霧霞から離れようぜ、アイツといるとすぐに人殺しが必要になる」

 鈴木がそう言うと、岩崎がにやつく。


「そうかあ? おまえも言われたんじゃ無いか?」

「何をだ?」

「霧霞様の子種を頂いてはいけませんか? 旦那様とあの方は別格です。ってな」

「おまえも言われたのか?」

「ああ、アイツを見ていたら別格は分かるが、この世界の子、良い種をを求めるのに貪欲すぎ」

「そうだよな」

 落ち込む彼ら。


 松井は、膝の中に抱えていたマルタにそっと聞く。

「お前も、霧霞に抱かれたいのか?」

 うつらうつらしていた、マルタの目がカッと開く。


「よろしいのですか? 行って参ります」

 膝を出て、駆け出そうとする。

 あわてて手を引き、引き留める。


「コラ行くな、分かった出ようぜ。何時俺らの目をぬすんで会いに行くか分からんな。アイツ体からなんか出ているのか?」

 出ていた。


 悠人とのエッチ。

 満足はしているが、ふと見てしまった。

 冒険者のチームが、野営中に、男二人と女一人でやっているところを。

 悠人に男との事を振ってみたが、彼は今一そう。

 だから、女を一人ふやせば、もう少しおもしろいかも……

 などとまあ、彼女の欲望は、少し暴走状態へと進んでいた。


 順当に、エロインとしての才能が今、開花しようとしていた。

 実は、もう一人増えれば、あんな事をしてそんな事をしてと、ずっと思案中。


 彼女は、濡れ濡れのむれむれだった。


 そんなおかげで、鈴木達はあてもなく、町を出て行った。


 だが、すぐに出会う盗賊。

 モンスター。

 彼らも特典のおかげで、負けはしない。


 だが、どんどんと心は消耗をする。


 悠人達が、王都へ向けて出発をした頃。

 彼らはまだ元気だった。


 だが、爵位を貰い、町へ帰り部隊を使い家を造り出した頃。


「おい魚を獲ったぞ」

「サンキュウ。雷はどうやって出すんだ? どうやっても使えん」

「それはな、空気中の水分子を…… あれ? ノヴァー達は?」

「さっき木の実を採りに行ったぞ」

「そうか、でも遅くないか?」

 そう此処は日本じゃない。

 だけどすぐに忘れてしまう。

 そして彼女達は普通の人間だという事も。


 マルタは留守番。


「この植生しょくせいならきっと今の時期、瓜があるはず」

 自分たちの村とは違うが、生えている木などの感じで成る物が想像できる。


 取りやすく、分かりやすい肉や魚だけでは、お通じも悪くなる。

 特に女の子だし、彼女達の主食は、ずっと野菜だった。


 フキとかも集めて、その中に集めたキイチゴやヤマモモをまとめていく。

 結構、いい山らしく木の実などが豊富で喜んでいた。


 だがそれは、採る者達がいないため。

 それに思い至らず、彼らのテリトリーへ踏み込む。


 そう盗賊の集落。

 彼らが、動物を捕り鳥を獲るため、木の実が獲られていなかった。


 彼女らの知らぬ間に、背後へと回り込まれる。


 いきなり突き飛ばされ、四つん這いになる。

「若い女三人だ。おい周り見張れ。どれ」

 体重を掛けて潰され、腹ばい状態の背中にどっかりと腰を下ろすと、そいつは指を濡らし、おもむろに突っ込んで来た。


「おおう。初めてじゃ無さそうだ、楽で良い。初めてだと騒ぐからな」

 そいつが指笛を吹き鳴らせば、足音が集まってくる。


 当然、彼女達は、反抗する気が無くなるほどもてあそばれる。

 そんな頃になって、やっと、太田が彼らと出くわす。

 だが、そこにはドロドロにされたノヴァー。

 怒りにまかせて、彼は突入をする。


 だが、当然見張っていたし、ノヴァーの状態を見て止まった瞬間に、頭を射貫かれた。

「がっ」

 残念ながら悠人とは違い、太田は立ち上げることはなかった……

「んんんっ」

 ノヴァーは、口の中の物をかみ切り、太田に向けて走り出すが、しっかり刺さっているし、腰は捕まえられている。


 盗賊の奴らも、噛まれた仲間が呻くのを笑うだけ。

 ただまあ、ノヴァーは怒りにまかせて蹴りあげられた。


 鈴木と岩崎も、太田を発見。血の跡と、引き摺られた後を見つけて追いかける。


 その頃、松井はマルタを連れて留守番。

 いい加減遅いから、どうしようかと思案中。


 だが、マルタはきっと駄目だろうと考える。

 絶対に日が暮れる前には帰ってくるのが鉄則。

 もう暗くなってきた。

 探しに行った、岩崎達は強くて平気でもミリー達は普通の人間。


「盗賊にでも会ったのかもしれない、それかモンスターか……」

 マルタがぼそっと言う。

 それは自身での答え合わせと、納得をするため。


 村でも良くある。

 人が居なくなる。

 探しても見つからず、夜が明けてから、ボロボロの遺体が見つかるだけ。

 小さくともこの世界を生きて来た。

 岩崎達よりも判断力は正しい。


「そうか? 探しに行った方が良いか?」

 膝の中で首が横に振られる。

「駄目なの。行くなら夜が明けてから」

「そうか、ありがとうな」

 マルタの頭をなでる。


 警戒をしながら、夜明けを待つが誰も帰ってこなかった。

 明るくなり、注意をしながら、松井は山へ入ったが、昨日のことで警戒範囲を拡げていた盗賊の矢が頭を貫く。

「がっ…… マルタ…… 逃げろっ……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る