盆の夏に、空を見る

たての おさむ

盆の夏に、空を見る

「ねぇ、メロン食べたくない?」


「いらないよ」  


「つれないなぁ、もう」


 バルコニーには、美香が椅子に座っていた。私も、椅子を持って行って座る。


「食べたくなったら、いつでも言ってね」


「それ言ってばっかりじゃん」


「あはは、バレた?」


 美香のそのセリフに、笑って返す。


「だって、美香と一緒に食べたいんだもん」


 そう言うと、美香は驚いたようで目を見開いた。


「そ」


 それから、それだけ言って空に目を向ける。


「夏だねぇ」


 美香の視線を追って、私も空を見た。


「お盆休みだけど、どこか行かないの?」


「うん」


「どうして?」


 そう聞くと、少し静かになった。それから、ポツリと呟いた。


「だって、理祐が遊びに来てくれるから」


「アッハハハ!」


 なんだ。私のこと、好意的に思ってくれてるんじゃん。


「もう! 笑わないでよ!」


「だって、嬉しいんだもん」


 照れながら言っていたのだろう。顔が赤くなっている。


 もう、本当にかわいいなぁ。


 プイ、と美香は首を振った。だが、すぐに優しい声で言う。


「ね、ずっと一緒にいようね」


「うん。ずっと一緒」


 それから、二人で手を握り合った。



  ◆



「ねぇ、メロン食べたくない?」


 声をかけるが、返事はない。


「つれないなぁ、もう」


 空を見上げる。夏真っ盛りの空。眩しいから、手でひさしを作る。


「理祐と一緒に、食べたかったなぁ」


 今日はお盆。友人の墓にメロンを添え、犬のリードを握り直す。


「行こっか」


 歩いていると、犬の首輪につけているベルが鳴った。 

 

 自転車が、それに気付いて私を避けてくれた。

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