第14話「天国での憂いと喜び」エリオット視点
エリオット視点
アメリー様が当家に来てから一週間が過ぎた。
それはつまり彼女と俺が結婚してから一週間が経過したということだ。
初恋の人を手に入れるためとはいえ、我ながら強引なことをしたと思っている。
それでも俺は彼女を手放すことはできない。
朝は彼女と食卓を囲み、
彼女に頭を撫でてもらってから「いってらっしゃい」と笑顔で送り出してもらう。
なんだかもう新婚みたいだ。
ああそうだ、俺達は新婚だったんだ!
学校に行ってもつい、アメリー様のことを思い出すと顔がやけてしまう。
友人から「頭でも打ったか?」と心配されてしまった。
アメリー様に心配させたくないから、勉強はちゃんとやった。
結婚したことで成績が落ちたら、きっと彼女は責任を感じてしまうから。
帰宅したあとアメリー様に「おかえりなさい」と言って出迎えてもらって、頭を撫で撫でしてもらった。
彼女と一緒に公爵家の領地経営の仕事をこなし、夕飯を一緒に食べる。
寝る前にアメリー様に絵本の読み聞かせをしてもらう。
幸福だ。
幸福すぎる。
一つ不満があるとすれば、俺が彼女に男として認識されていないことだ。
俺がどうしてそう思うのかと言うと。
アメリー様が俺に絵本を読み聞かせてくれる時、彼女が俺の部屋に来てくれるのだが、その時彼女は寝巻きなのだ。
そして当然俺も寝巻きだ。
書類上とはいえ俺とアメリー様は結婚している。
お互いの部屋は別々だが、アメリー様の部屋は、夫婦共同の寝室を挟んで内扉で繋がっている。
契約結婚ということになってるから、俺はアメリー様の部屋に続く鍵を持っていない。
だけど俺の部屋の鍵はアメリー様に渡してある。
それは何を意味するのか、彼女は考えたことがないのだろうか?
そんな状態なのに、彼女は俺を全く警戒することなく、パジャマで俺の部屋を訪れ、ソファーに座り絵本を読んでいく。
俺が彼女の体に触れるほど近い距離に座っても、彼女は俺と距離を取ろうとしない。
信頼されているというよりは、男として見られていない。
彼女が俺の頭をなでる時も、 愛玩動物を可愛がるような感じだし。
夫婦というよりは、主人とペット、姉と弟といった感じだ。
人間というのは欲深い生き物で、長年思い続けてきた初恋の人と結婚できただけでも幸せなのに、慣れてしまうとそれでも足りないと感じてしまう。
彼女に男として意識されたい。
ペットや弟としてじゃなく、男として愛されたい。
そんな時、帰宅した俺を出迎えてくれた彼女は、俺の手を掴み庭に連れ出した。
彼女のしなやかな手から、彼女の体温が伝わってきて、心臓がドキドキして仕方なかった。
俺の顔が真っ赤になってるのを、彼女に気づかれてしまっただろうか?
彼女に案内された場所はカゼボで、そこにはテーブルがセッティングされ美しい花と、ケーキスタンドと、紅茶が用意されていた。
彼女はケーキスタンドに乗っているお菓子を、全部自分で作ったという。
俺のために彼女が手作りしてくれたことが、とても嬉しくて、俺は泣いてしまった。
こういうところが子供っぽいと思われて、異性として意識されないのかもしれない。
もっと男らしくなりたい。
彼女に異性として意識されたい。
そう思っていたら体が勝手に動いて、彼女を抱きしめていた。
彼女の体は華奢で、髪の毛からは良い匂いがした。
ずっと彼女を抱きしめていたかった。
そう思っていたせいか、腕に思っているよりも力が入っていたようだ。
彼女に苦しいと言われ、彼女から手を離した。
俺から離れて行くとき、彼女の頬は赤く染まっていた。
もしかして、彼女に少しは男として意識されたんだろうか?
そうだったら嬉しい。
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