モンスター名:し行

第132話 姉須戸・トンプソン・伝奇と鍾乳洞モドキ


「皆さんおはようございます、本日もモンスター解説始めたいと思います」


『始まったー』

『出席~』

『起立、きをつけ、礼、着水!』

『着水!? 着陸とかボケるの聞いたことあるけど、着水は初耳だわ』


 いつもの時間、いつもの会議室、いつものスリーピース姿の姉須戸がモンスター解説動画を開始する。


 視聴者達も徐々に固定されていき、時折おふざけして場をなごませる。


「さて、本日最初に解説するモンスターはこちらになります」


『どこ?』

『擬態系?』

『洞窟のどこにいるんだ?』

『先生、ギブアップ。何処にいるか教えてください』


 姉須戸がリモコンを操作してモニター画面に表示したのは洞窟タイプのダンジョンの風景。


 視聴者達は必死にモンスターの姿を探すが、見つけられず、あきらめて聞いてくる。


「モンスターは最初から映っていますよ。ここにいます」


『は?』

『いや、こんなのわからんて』

『マジかぁ………』

『いやこれ、事前情報なかったら無理』


 姉須戸はリモコンを操作して、洞窟内にある鍾乳石のつららの一つをズームアップする。


 すると、鍾乳石の一つから目が浮かんだかと思うと、ギョロリとカメラを睨む。


「鍾乳洞モドキと呼ばれる擬態モンスターで、正体はキノコなど菌類タイプのモンスターです。主な出没場所は鍾乳石があるダンジョンですね」


『こんなのいるんだ』

『まじ擬態系は前情報ないと見つけられない』

『先人はこういうのにやられていったんだろうなあ』

『配信様々だわ』


 姉須戸が鍾乳洞モドキについて解説を始めると、視聴者達からあれこれコメントが書き込まれていく。


「攻撃方法は獲物が自分の元まで来た瞬間に落下して、先端の固くなってる部分を突き刺して栄養を吸いとり、死体を媒体にして移動します」


『協会で口酸っぱくヘルムの着用を連呼する理由がわかる』

『ヘルムにもよるけど、視界や音が遮られていやがる奴多いもんな』

『それで本人が怪我するだけならいいけど、こういう寄生タイプに操られたりするから迷惑』


 姉須戸が鍾乳洞モドキの攻撃方法を解説すると、あれこれコメントが流れていく。


「鍾乳洞モドキは下を通らない限りは無害なので脅威ランクはFになります。落下攻撃も協会が推奨するヘルムなら防げます」


『ケチって一般のやっすいやつはダメだぞ』

『たまにいるよな、自転車用のヘルメットや革ジャンでダンジョンアタックするやつ』

『なまじそれでもFランクは通用するときあるからなあ』


「対策としては鍾乳石には近づかない、頑丈なヘルムを着用する。あとは遠くから無差別に攻撃するか、ある程度の大きさのあるものを鍾乳洞モドキの下にくぐらせて反応させるかです」


『意外と対策考えられてるな』

『そこら辺も踏まえてFランクモンスターなんだろうな』


 姉須戸が鍾乳洞モドキの対策方法を伝え、実証する映像を流す。


「ドロップ品は鍾乳洞モドキの胴体です。食べれる茸の一種で焼いて食べるのがお勧めです」

『食べれるんだ』

『モンスター肉とか売ってる店や飲食店で検索したら普通にメニューにあった』

『珍味扱いか』

『Fランクモンスターだからか買い取り価格は低いな』


 姉須戸が鍾乳洞モドキのドロップ品について解説すると、視聴者達はネットで検索したのか販売してる店舗や飲食店の話でコメント欄が盛り上がる。


「さて、鍾乳洞モドキについてはこれくらいで、次のモンスター解説に移りたいと思います」


 姉須戸はそう言うと次のモンスター解説の準備に入った。


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