第64話 姉須戸・トンプソン・伝奇と壁猿とガードンとガウスドレイク
「新手のモンスターのようですね」
Dランクダンジョンを探索していた姉須戸は、壁に張り付いたモンスターを見つける。
「あれは壁猿と言われるモンスターです。異様に長い手足と六本の指で壁を掴んで走り回って襲いかかってきます」
『なんだあれ?』
『足というよりは四本手が生えてね?』
『というか、頭何処だ?』
『腹部に顔みたいなのが見えなくないか?』
壁猿は姉須戸の存在を認識したのか、四本の手にしか見えない異様に長い手足を駆使して壁を走って迫ってくる。
視聴者の指摘があったように、本来頭部がある部分には何もなく、体毛に隠れるように腹部に猿の顔があった。
「攻撃方法は六本の指から生えた爪によるヒット&アウェイ攻撃です。壁をしっかり掴めるので、組つかれると厄介ですよ」
壁猿はパルクールアクションのように座右の壁を飛びわたり、縦横無尽に走り回って姉須戸を翻弄しようとする。
「こうやって壁を走って死角や後列を狙ってきます。対策としては密集陣形で四方を警戒するか、
「キッ!?」
姉須戸は魔法を唱えて杖で地面を叩くと、通路を塞ぐように巨大な蜘蛛の巣が現れる。
壁を走り回っていた壁猿は突如現れた蜘蛛の巣に絡まり拘束される。
「このように通路を塞ぐような罠を仕掛けることです。
「ギャッ!?」
姉須戸は解説しながら魔法を唱えて、火の矢を生成すると、壁猿に向かって射出する。
火の矢は壁猿に命中して引火すると、蜘蛛の巣にまで火が広がり火ダルマとなる。
「ドロップ品は壁猿の手足で、加工すると便利なロッククライミング道具になりますし、格闘系の爪武器にも使えます」
火が収まると壁猿は死んで霧散化しており、ドロップ品だけが残る。
「さて、もう少し探索を………おや?」
姉須戸は壁猿のドロップ品の解説を終えて、先に進もうとすると、進行方向からこちらに向かって必死の形相で走ってくる探索者集団がいた。
「逃げろっ! ガウスドレイクが出やがった!!」
必死に走っていた探索者集団は行きも絶え絶えになりながら、姉須戸に向かって注意喚起して走り去る。
『うげ、探索者の死亡率をあげてるモンスターじゃないか>ガウスドレイク』
『そんなに強いの?』
『攻撃が洒落にならない』
「ガウスドレイクというのはグレートテンなど大型犬サイズの蜥蜴で、体内に電気を帯電させて、口に含んだ石などをガウスガンのように発射します」
『なにその近未来生物兵器!?』
『事前に討伐目的でチームとか組んでないと、ちと倒すのしんどい』
『タンカーだけど、できれば遭遇したくない』
『でもドロップ品は美味しい』
姉須戸がガウスドレイクについて解説すると、視聴者達が捕捉するようにコメントを書き込んでいく。
「何度か倒した経験もありますし、姿を拝見しましょうか」
姉須戸はそう言うと、ガウスドレイクがいると言われている場所に向かう。
「いましたね。騎乗モンスターとして使われていますね」
そこにはアルビノのような白い鱗に赤い瞳の巨大な蜥蜴がいた。
その背中には鞍が装着されており、灰色の醜悪な老人の顔をした小人が跨がっていた。
「乗っているのはガードンと呼ばれる邪悪な小人で、他のモンスターを調教して使役します」
姉須戸が解説していると、ガードンと呼ばれた小人は手綱を引っ張り、姉須戸を指差す。
それがガウスドレイクへの命令だったのか、白い鱗に発光する青白い紋様が浮かび上がる。
そして口を開くと、舌の上に石が乗っており、ガウスドレイクの口内はパチパチと放電しているのが見える。
「
姉須戸が魔法を唱えるのとほぼ同時に、ガウスドレイクの口から石が射出される。
だが、射出された石は姉須戸に命中することなく、途中で反転して、ガウスドレイクの頭を粉砕し、騎乗していたガードンも上半身を吹き飛ばされる。
『うわぁ………』
『俺達苦労して倒すガウスドレイクをあんな簡単に………』
『反転と言う魔法強いな』
『強いけど一般的な魔法使いは一度使うと疲労困憊だぞ』
配信のコメント欄ではほぼ一撃で倒したことに驚くコメントや姉須戸が使った魔法についてのコメントが書き込まれていく。
「さて、ガウスドレイクのドロップ品は荷電器官ですね。一種の生体発電機として高く売れますし、電気系の知識があればダンジョン内でこれを発電機代わりに出きるそうですよ」
『出きるけど、お勧めはしない』
『付け焼き刃だと感電してり、過電圧で機械が壊れたりする』
『素直に売っとけ』
『下手に使うと価値が下がったり、買取不可になる』
姉須戸がガウスドレイクのドロップ品を解説すると、視聴者から注意喚起のコメントが書き込まれていく。
「今回は出ませんでしたがガードンからは小人の靴と呼ばれるドロップ品がごく稀出ます。もってると幸運が訪れますが………小人や妖精系のモンスターから絶許、絶殺対象にされる都市伝説があります」
『滅多にでないけど、手に入れた人は小人か妖精に殺されたような死因で発見される』
『こわっ!?』
『昔SNSで自慢してた奴いたな。後半気が狂ったように小人がーとか、妖精が囁いてくるとか支離滅裂なこと書き込んでた。今は削除されたけど』
姉須戸がガードンのレアドロップについて解説すると、配信視聴者達から自分が見聞きしたオカルトの話を書き込んでいく。
「真偽は不明ですが、そんなアイテムがあってもおかしくないですからね。さて、探索を続けましょうか」
姉須戸は話を切り上げると、ダンジョン探索を再開した。
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