第32話 姉須戸・トンプソン・伝奇とアタジアとアルグール
「次の階層への階段ですね」
Fランク森ダンジョンを探索していた姉須戸は次の階層に繋がる階段を発見し、降りていく。
「次の階層も森のようですね。ただ、この階層は少々陰鬱とした印象と肌寒さを感じます」
『ホラー映画に出てきそうな鬱蒼とした森のイメージ』
『おとぎ話に出てくる悪い魔女とかいそう』
『一階はモンスターがいなければ森林浴ができそうなハイキングコースの森、二階の森はダークファンタジー系だな』
姉須戸や配信視聴者達が言うように、第二階層エリアの森は全体的に暗く、ドローンカメラがライトで周囲を照らす。
「地面もぬかるんでいてしっかりあるかないと滑って足をとられそうです。気をつけて進んでいきたいと思います」
姉須戸は配信視聴者達に向けて発言すると、探索を開始する。
「全体的に湿気や水が濁ったような匂いが漂う階層ですね、あまり長居はしたくありません」
姉須戸は第二階層の雰囲気や感想を配信視聴者達に伝える。
「オオオォォォ………」
「この階層のモンスターが現れましたね」
姉須戸が陰鬱な森のダンジョンを探索していると、地面が盛り上がって二体のモンスターが現れる。
片方は体から水分が全て抜かれたような乾燥した肌の人型モンスター、もう片方は水死体のように青白く風船のように水膨れ上がった肉体の人型モンスターだった。
「乾燥した方はアタジアと呼ばれるアンデッドですね。同じ乾燥したアンデッドモンスターであるミイラと同一視されますが、モンスター学的には別種です。一般的なアンデッドと違って頑丈で素早いです」
姉須戸はまず乾燥した死体のモンスターについて解説する。
「もう片方はアルグールと呼ばれるグールの一種で、水死体がグール化したモンスターです。グールと同じく触れた対象から生命力を奪い、グールに殺されるとグールになってしまう呪い持ちです」
『アンデッド系はグロいから嫌なんだよな』
『モンスターにモザイクかかんないかな? ちとムリ』
『Fクラスダンジョンでグールはクソゲー!』
『このダンジョン、下手したらランク認定変わるぞ!!』
『俺探索者じゃないからわからないけど、ヤバい雰囲気?』
配信視聴者達はアンデッドモンスターの姿に悲鳴を上げたり、一部のアカウントがアンデッドが現れたことを騒いだりとコメント欄は滅茶苦茶になる。
「アンデッドモンスターはFランクなど初心者には討伐が難しかったりします。理由としてはっ!」
姉須戸は杖を構えたかと思うと、槍のようにアタジアの胸を貫くように刺すが、アタジアは平気な顔で姉須戸を攻撃しようと腕を伸ばす。
「このように一般的な生物なら即死してもおかしくない急所への攻撃が通用しません。また───」
姉須戸は解説の途中、アタジアの攻撃を避けながら杖で叩いて反撃する。
「元々死んでる死体がなにかによって動いてるだけなので、痛みによる怯みもなければ、失血を狙った阻害も意味がありませんし、手足を切断しても平然と攻撃を続けます」
今度はアルグールが跳躍してフライングボディアタックで姉須戸を攻撃しようとするのを跳躍して回避する。
「スタミナとかも関係ないので、逃げてもしつこく追いかけてきますし、スタミナ切れを狙った戦法も意味がありません。そして、アンデッドモンスターと戦う上で一番気をつけないといけないのは、傷を負わないことです」
姉須戸は左手を腰の後ろに添えて半身を傾けると、杖をフェンシングのレイピアに見立ててアタジアとアルグールの攻撃を捌く。
「アルグールの触れた対象から生命力を奪うドレインタッチ、雑菌だらけで下手に傷を負うと破傷風確定です」
『それなっ!』
『ダンジョン内での高熱は死ねる』
『アンデッドは細菌感染による病気とか二次被害がえぐいんだよ』
『アンデッドの種類にもよるけど、Fランクでアンデッドが登場したらEに格上げされる』
姉須戸がアンデッドとの戦闘においての注意喚起などを促すと、配信視聴者から同意するコメントが書き込まれる。
「アルグールに関してはもう一つ注意事項があります。
姉須戸がアルグールから距離をとって魔法を唱える。
すると、地面から石の礫が生成されてアルグールに飛んでいく。
石の礫がアルグールに命中すると、ブクブクに膨らんだ皮膚が破裂して、膿を含んだ汚れた体液が撒き散らされる。
「あのように強い衝撃を受けると皮膚が破裂して、汚泥じみた体液が撒き散らされます。かなり臭いですよ」
『うわぁ………』
『この動画見てて本当によかった』
『吐きそう』
『はいた』
「アンデッド系のモンスターはだいたい浄化魔法か火に弱いです。
姉須戸が両手を前につき出すように向けて魔法を唱えると、両手から火炎放射器のように炎が吹き出し、アタジアとアルグールを包み込む。
二体のアンデッドモンスターはもがき苦しみ、最後は燃え尽きてドロップ品だけになる。
「アタジアとアルグールのドロップ品は魔石と灰です。どちらもそこまで高い値段はつかないので、荷物と相談して回収してください」
姉須戸はドロップ品を回収して解説すると、探索を再開した。
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