姉須戸・トンプソン・伝奇のモンスター見聞録

パクリ田盗作

モンスター名:あ行

第1話 姉須戸・トンプソン・伝奇と言う男とアイアンスネーク


「ダンジョン探索者登録はここであってるかね?」

「はい、こちらで………あの保護者の方でしょうか? ダンジョン探索者登録は本人がいないとできないのですが」


 ダンジョン探索者組合の受付員は声を書けてきた人物を見て困惑した表情で問い返す。


 受付に登録に関する書類を出してきたのは山高帽にインバネスコートを着た体格のいい中年男性だった。


 顔立ちは白人系とのハーフで、口髭と顎髭で囲むようなサークルと呼ばれる髭をしており、同姓である受付員ですら格好いいと思えるイケオジだった。


「いや、私が探索者として登録に来た」

「えっと………ご年齢的にお止めになった方がよろしいかと………」


 イケオジは付き添いてはなく、自分自身が探索者になると伝えると、受付員はやんわりと止めようとする。


 ダンジョン探索者に年齢制限はないが、イケオジは見た目四十代前後。

 体格はいいが、今から駆け出しとして始めるにはいささか歳を取りすぎてる。


「ふむ? 一応海外のダンジョン探索者なんだがね?」

「あ、これは失礼しました。アメリカでご活躍されていたのですか」


 イケオジはポケットから免許証を取り出して提示する。

 受付員が免許を確認すると、目の前のイケオジはアメリカ合衆国のダンジョン探索者で、日本でも活動するために登録に来たようだ。


「えーっと、お名前は………なんと読むのでしょう?」

「姉須戸・トンプソン・伝奇(あねすと・トンプソン・ただくす)と申します。父が日本人で、母がアメリカ人、国籍はアメリカになります」


 受付員は免許の名前を確認し、読み方を問う。


「日本のダンジョン探索者としての登録ですが、規約でランクは最低のFランクから始まります。御了承頂けますか?」

「ええ、事前に調べましたので大丈夫です」


 ダンジョン組合の受付員はダンジョン探索者登録に関する注意事項をパンフと口頭で説明して確認を取る。


「ダンジョン探索者は、ダンジョンアタック中ドローンによる配信義務があります。これはダンジョン資源の密売や、ダンジョン内での犯罪防止を兼ねています。同意しますか?」 

「同意します」


 受付員は日本でのダンジョン探索者に関する注意事項や法律に関して説明し、登録手続きを行う。


「前職は城南大学の非常勤講師ですか? そちらの方が危険がないと思われますが」

「はっはっはっ、契約が完了して更新しなかったのでね。それに私はモンスター学を教えていてね、日本のダンジョンモンスターに関するサンプルデータを集めたかったんだよ」


 受付員が登録に必要な書類を確認していると、姉須戸の前職が目にはいる。


 受付員からすると、怪我など命の危険があるダンジョン探索者よりましなのではと思い口にする。


 姉須戸は笑いながらなぜダンジョン探索者になるのか語る。

 受付員も本人が納得してるならと粛々と手続きを済ましていく。


「手続きは以上です」

「この近くに、私のランクで入れるダンジョンはないかね?」

「今からですか? 少々お待ちください………こちらのダンジョンが一番近いですね」


 手続きを終えると、姉須戸は早速ダンジョン探索に向かおうと質問すると、受付員は手元の端末を操作して今から探索できるダンジョンの一覧をモニターに表示する。


「ではここに行くよ」

「はい、手続きさせていただきます。トイレとかでない限りは配信は切らないでくださいね」


 ダンジョンアタックの登録を終えた姉須戸は車で目的地のダンジョンに向かう。


「現在タンカー役募集中! 報酬は頭割り」

「アタッカーです! 何処かいれてくれませんか?」


 ダンジョン前では武装した探索者達がダンジョンに突入したり、仲間を集めようとアピールしたり、マッチングアプリで待ち人を探していたりする。


「えーっと、これで配信が始まるのかな?」

『お、新しい配信者だ』

『なんだ、おっさんかよ。見て損した』

『ハーフのイケオジ様っ! チャンネル登録しました!!』


 姉須戸が組合から支給された配信用のドローンを起動すると、早速配信が始まったのか、ホログラムウィンドウが表示されて視聴者のメッセージが表示される。


「視聴者の皆様初めまして。本日から日本の探索者になった姉須戸と申します」

『よろー』

『え、その歳でダンジョン探索者? 他に仕事あるだろ?』

『外人っぽいけど日本語上手やな』

『イケオジでイケボっ! 推せる!!』


 配信が始まったことを確認した姉須戸は山高帽を脱いで挨拶をする。


「本日は東京都内にあるFランクダンジョン前にいます。日本でのダンジョンは始めてですが、頑張っていきたいと思います」

『え、その格好でいくの?』

『Fランクダンジョンでも嘗めすぎじゃね?』

『おっさん、自殺配信とかやめてくれよな』


 視聴者が指摘するように、姉須戸は山高帽にインバネスコートにスリーピーススーツ、先端の尖った金属製のステッキとイギリスの紳士スタイルでダンジョンに入ろうとする。


 視聴者達は姉須戸が自殺者ではないかと騒いで止めようとコメントを書き込んでいく。


「自殺する気はまだありませんよ、まだまだ調べてみたいモンスターは沢山いますからね」


 姉須戸はコメントに返事しながらダンジョンゲートをくぐる。

 すると、姉須戸の視界には都心部街中だった風景が一転して、岩洞窟の中と思われる風景に変わっていた。


「少し暗いですね………明かりライト

『おっさん魔法使いかよ!』

『Fランクとか嘘だろ』


 ダンジョン内は壁の苔が発光しているが薄暗く、姉須戸は呪文を唱えると、左手から光の玉が産み出されてダンジョン内を照らす。


「いえいえFランクですよ。ついさっき登録を終えたばかりですし」

『まじでFランクだ』

『なんで魔法が使えるんだよ』

『昔あったラノベみたいなランク詐欺か?』

『漢字なんて読むの?』

『おっさんに見えるけど、年齢は?』


 姉須戸は発行されたばかりの探索者ライセンスをドローンに近づけて見せてFランクであることを伝える。


「あねすと・トンプソン・ただくすと申します。日本人の父とアメリカ人の母のハーフです。今年で45です」

『ハーフとかかっけー』

『ハーフは年取っても格好いいのか』

『姉須戸様ー!』

『45って………なんでその年齢でダンジョン探索者に? だいたい20代くらいだぞ、ダンジョン探索者始めるの』


 姉須戸はダンジョンを進みながらホログラムウィンドウに表示されるコメントに返事していく。

 最初は視聴者は五人前後だったが、姉須戸が魔法を使ってから三十人まで増えていた。


「非常勤講師として勤めていた大学との契約が満了しましてね。日本のダンジョンモンスターのサンプルデータを集めたくて探索者を始めました」

『非常勤講師? なに教えてたの?』

「ダンジョンモンスター学です。様々なモンスターの生態や討伐方法などを教えていました」


『おっさんは教授?』

「になりたいんですけど、なかなかチャンスが巡って来なくて………おっと、モンスターが現れたようですね。すみませんが、返事できなくなります」

『おけ』

『頑張れ』


 姉須戸が視聴者と会話しながら進んでいくと、通路のど真ん中にトグロを巻いて威嚇する鉄板が折り重なった金属の全長1mの蛇がいた。その眼は赤い発光ダイオードでも埋め込まれてるのか、通路を赤く照らしている。


「あれはアイアンスネークですね。機械系モンスターに分類されます。一定の距離まで近づくか、こちらから攻撃を仕掛けない限りは安全です」

『おー、本当に講師っぽい』

『それぐらいならWinkにも書いてる』


 姉須戸がモンスターの正体を解説すると、賛否のコメントが書き込まれていく。


「アイアンスネークは主な攻撃方法は噛みつきと巻き付いての締め付け。また毒を持っており、噛みついて注入、もしくは吐き飛ばしてきます。ダンジョンや階層によって毒の種類が変わりますので気をつけてくださいね」


 姉須戸は解説しながら石を拾うと、アイアンスネークに向けて投げる。


 石はアイアンスネークに命中するが、カンと金属音がダンジョンに響くだけでダメージはない。


「アイアンスネークは見た目通り金属でできてるので固いです。生半可な攻撃はヘイトを買うだけです」


 逆に攻撃を受けたことに怒りを覚えたのか、アイアンスネークは姉須戸に襲いかかってくる。


「対処法は本物の蛇と同じで、頭を踏めばほぼ封殺できますが………このように尻尾を鞭のように足に打ち付けて来るので、脛をガードできる防具をつけてないと危険です」


 姉須戸は向かってくるアイアンスネークの頭を踏んで無力化させる。

 アイアンスネークは踏まれた足に向けて、尻尾を左右に振って何度も姉須戸の脛に打ち付けてくるが、姉須戸はズボンの裾を上げて、金属製のレガースを装着しているのを視聴者達に見せる。


『慣れた感じで頭踏んでたな』

『モンスター学のせんせいだけあって準備がいいな』

『俺、似たことして防具つけてなくて脛叩かれて内出血した』


「アイアンスネークには刃物よりも鈍器が効果的です。こうやって頭を踏んで体重をかけて潰す方法もありです」


 姉須戸はそう言ってアイアンスネークの頭を潰す。

 するとアイアンスネークの死骸が霧散化して、魔石と呼ばれる黒い宝石の原石のような塊と、肝臓みたいな物が残る。


「アイアンスネークからドロップする素材は発光する瞳、内蔵された歯車や金属の皮膚など。この毒袋も良い値段で売れますが、破れやすいので取り扱いに注意してくださいね」

『へー』

『破けて弁当がおじゃんになった』

『ドンマイ』


「あ、毒袋を売却する際には毒物を取り扱う免許が必要ですよ。これがないと買取不可なうえに、その場で廃棄するように言われます。それから無免許で売却すると日本の法律に抵触するので絶対にやらないように」

『はーい』

『そこまで解説してくれる人はレアだな』

『俺知らないまま持って帰って、廃棄することになったなあ』


 姉須戸は毒袋の取り扱いについて注意喚起すると、ダンジョン探索を再開していく。



 

 

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