スライムを倒したら最強の剣をドロップしたので無双したら運営と戦うことになった。
ラッセルリッツ・リツ
第1話 だって俺は最強のロリ。
細かい話は省略しよう。とりあえず今の状況を伝える。
ゲームを買ってプレイし始めて十分、ダンジョンの一階層で適当にスライムを倒していたら”ロニョの剣”がドロップした――――ようだ?
「いや、どうせ偽物だ」
と言ったのは俺、黒咲綾乃。ゲーム内での名前はあーやん――――ネカマだ。絶賛ロリ戦士だ、ぷにぷに肌の。
「まぁそれはどうでもいいよね!(ぷにっ)」
なんか一人でやってて寂しくなってきた。
「さて」
ロニョの剣というのはこのゲーム、”チェインエルドラード”の世界での大英雄ロニョ・ウンタークライトの聖剣らしい。一言でいえば滅茶苦茶強い――――はずだ。
いや、シナリオ上は魔王だかを倒した剣って持ち上げられてただけだから、そもそもクソ弱かったスライムから落ちるわけないし、実際に装備してみても――――
「攻撃力……1」
なんだやっぱり弱いじゃん。テキストのバグ?ってやつなのかな。他のパラメータ見ても殆ど――――
「聖属性倍率……一恒河沙? 10の53乗?」
確かこのゲームの敵、魔物には魔属性ってのが入ってて、つまりは聖属性が弱点だったような?――――つぶらな瞳のスライムたちがこちらをじっと見ている。やりますか?
「はい」
俺は適当に一振り……しただけなのだが、スライムたちは一瞬で塵となり、風となり、嵐となり、周りにいたプレイヤーの皆さんも巻き込まれて虚空の彼方へ吹っ飛ばされてしまったようだ。しまいにはなぜか――――見えてはいけない謎空間が、切り裂かれたダンジョンから垣間見えていた。
「なるほど、これは間違いない。ロニョの剣だ」
でもなければゲームを崩壊させるほどの攻撃力を持っているわけがない。聖属性だけのはずなのにプレイヤーもダンジョンもぶっ壊すとか、もう意味わからない。
こんなものはあってはならないものだ。ここはVRMMO、他のプレイヤーもいる。迷惑をかけるのはナンセンスだ。
「運営に連絡、連絡っと……」
加えてここでのお金が現実世界でのお金として十分な価値で換算でき、それで食っている人もいる。下手したらインフレとかデフレとか、ダイエットとかリバウンドとかが起こって大変になるかもしれない。
「こういうのはちゃんと誠意をもって、やっぱり真面目に謙虚に生きないと!」
――――そう気がついてみると、俺はダンジョンの57層。前人未到のエリアの大ボス、暗黒堕天使ルシファーをボコボコにしていた。
「わ、私はルシファー! 負けるはずがない! 負けるはずがないけど、その剣は止めろぉ! 止めろぉ!!!」
「うっせぇ、全ては金なんだよ――――!!」
トドメを刺した。
ダンジョンをクリアするごとにお金がもらえ、さらに初クリア者には運営からボーナスが支給される。さらにさらに注目プレイヤーには動画配信の契約がされ、ファンからお金が貰える――――つまりは魔族を殺すほどお金持ちになれる。そして俺は――――!
「うおおおおおおおおおお! ネカマロリすげええええええ!」
「ネカマロリ最高!!」
「あのルシファーを撃破かよ。しかも三十秒で!! しかも一人で!!」
「おおおおおおおおおおおおおお!!」
ファンからのロリコールに包まれ俺は、剣を掲げる。さらにロリコールは過熱、そこに通知が。運営からの初クリアボーナスだろう。
「一体いくら貰えるんだ?」
「お?」
コールは止み、静寂。チェインエルドラードの全プレイヤー、動画を見るリスナー、あるいは一階層のスライムまでもが一体、どれほどの報酬が与えられるのか。好奇心と期待を込めて見守っていた。
「よし、じゃあ見ます。えっと――――『害悪プレイヤー認定。運営騎士団ドミナシオンによって処分します』……え?」
俺は何度も見返した。いくら貰えるのか。宝石とか、土地とか、株なのかなとも思ってその一文を何度も確認した。
空からサンダーバードがやってきたときも、その上に運営騎士の人が乗っているとわかった時も、手錠を付けられ足を縛られたときも――――でも何度も見てもお金、ゴールドのゴ文字もルの文字もドの文字も、なんなら棒線すらなかった。
「もしかして処分って好待遇って意味ですか?」
しまいに俺はサンダーバードを運転する、厳しい面持ちの運営騎士の女性に聞いた。でも帰ってきた返答は。
「なわけねえだろ、禿げてんのか」
禿げては……いない。
ああ、つまり俺はやってはいけないことをしたのか。一日にして57層まで上がり、大金を手にして、人気者にもなって。ああ、うまく行きすぎだと思ったよ――――と、牢獄の豚飯をつぶつぶと食べてます。
――あとがき――
適当に始めたのに設定が難しくなってきそうなので甘く見ていただけると助かります。
あとゲーム内の名前変えました。(編集、2024/9/5)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます